死神のシンフォニー 「プロローグ」
-プロローグ-
プロローグ
―――僕はもう、この世界がイヤになっていた。それが、僕、つまり紅照火(くれないしょうか)のこの世界に対する感想だった。
学校には僕の居場所などない。家に帰っても誰もいない。友達はだれ一人としていない。・・・、いや一人はいた。名前は光見雷人(こうみらいと)。
僕と同じように、どこにも居場所のなかった、しかも、僕と同じような境遇の一人。お互いをよく理解していたし、とても仲がよかった。
だけど、その唯一の親友が自殺したのは、三ヶ月前のことだった。
僕と雷人は、中学に入ってからずっとイジメにあっていた。高校に入ってからも。
それに耐え切れなくなり、雷人は、自殺した。遺書として、僕の携帯に送られてきたメールにはこう書いてあった。
『もう、この世界にいるのが疲れたよ。
ごめんね照火。
もう耐えられないよ。
照火、僕の望み知ってる?』
『この世界にいるのが疲れた』、『もう耐えられない』。僕もそう思う。
メールの最後に書かれた言葉が気になった。
『僕の望み知ってる?』。お互いに、どんなことでも理解しているつもりだった。知ってるつもりだった。でも、三ヵ月経った今でも僕には分からない。
この三ヵ月、僕は学校にも行かず、無気力に過ごした。もう、信じてくれる人も、信じられる人もどこにもいない。
僕は家を出ると、ふらふらと街を歩き出した。
どこかに行こうというわけじゃない。ただてきとうに・・・。何かにひかれるように。
車のクラクションの音、そして、ブレーキの音が聞こえた。どうやら僕はいつのまにか、交差点の真中に突っ立っていたらしい。
―――照火は過去に自己に遭い、足が少し不自由だ。ゆえにすぐよけることができない。
キキーーーーッッッ!!ドッ!
一瞬の出来事だった。
「おい、大丈夫か!?しっかりしろ!」
薄れ行く意識の中で、運転手の声が聞こえてきた。
もうすぐ、僕は死んでしまうのだろう。からだの感覚が、もう無い。
もうすぐ会える・・・。
「ラ・・・イ・・・・・・ト――――――――
◆
ほぼ同時刻。照火の通う学校のクラスメイト達は、夏季課外研修の帰りのバスの中だった。このバスには、雷人や照火をいじめていた、不知火飛鳥もいた。彼は、本当は違うクラスなのだが、なぜかこのバスの中にいた。彼への恐怖からか、バスの中は異常なほど、静かだった。
バスの運転手、大木亮太郎はいつものように運転をしていた。大木はこの道三十年のベテランバス運転手だ。今日もいつもと変わらない運転風景・・・・・・。
「あれ・・・?なんだ、これは・・・」
視界に霧が現れる。薄いものだがいきなり。ここは普通の街中の公道。山とかを走っているというわけではない。天気、気温、湿度、そして時間帯からしても、霧が現れることはまず、ありえない。しかし、この霧は現れた。なんの前触れも無く。
次の瞬間、大木は突然頭がくらっとするような感覚に襲われた。意識がほんの少しの間、飛ぶ。
霧が晴れた。意識が戻る。はっとなり、素早く前を向く。交差点。信号は赤。今のバスの速度は・・・時速七五キロ。止まれない。交差点の右からは、大型トラック。左からは、小型車。間に合わない。大木は顔を引きつらせながらも、必死にブレーキを踏んだ。
キキーーーーーッッッッ!
「!?」
突然の大きなブレーキ音。車体の揺れ。異変に気がついた生徒は、閉じていたバスのカーテンを開け、窓の外を見る。前方の信号は赤。なぜかバスはいまだ走っている。ブレーキをかけているようだが間に合いそうも無い。バスは大きな音を振りまきながら、直進している。車内のほかの生徒も異変に気がつき、車内の静寂は打ち破られ、一瞬にして悲鳴へと変わる。
「おい、どうしたっていうんだ!!」
いまいち状況を把握できていなかった飛鳥は立ち上がり、そして叫んだ。しかし、叫んだところで、パニック状態の車内からは返事が返ってくることは無い。
車体は横断歩道をゆうゆうと超え、交差点につっこんでいく
―――ドグァ!!
―――――――――――――――――――。
◆
救急車のサイレンの音が、うるさく響き渡る。
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プロローグ
―――僕はもう、この世界がイヤになっていた。それが、僕、つまり紅照火(くれないしょうか)のこの世界に対する感想だった。
学校には僕の居場所などない。家に帰っても誰もいない。友達はだれ一人としていない。・・・、いや一人はいた。名前は光見雷人(こうみらいと)。
僕と同じように、どこにも居場所のなかった、しかも、僕と同じような境遇の一人。お互いをよく理解していたし、とても仲がよかった。
だけど、その唯一の親友が自殺したのは、三ヶ月前のことだった。
僕と雷人は、中学に入ってからずっとイジメにあっていた。高校に入ってからも。
それに耐え切れなくなり、雷人は、自殺した。遺書として、僕の携帯に送られてきたメールにはこう書いてあった。
『もう、この世界にいるのが疲れたよ。
ごめんね照火。
もう耐えられないよ。
照火、僕の望み知ってる?』
『この世界にいるのが疲れた』、『もう耐えられない』。僕もそう思う。
メールの最後に書かれた言葉が気になった。
『僕の望み知ってる?』。お互いに、どんなことでも理解しているつもりだった。知ってるつもりだった。でも、三ヵ月経った今でも僕には分からない。
この三ヵ月、僕は学校にも行かず、無気力に過ごした。もう、信じてくれる人も、信じられる人もどこにもいない。
僕は家を出ると、ふらふらと街を歩き出した。
どこかに行こうというわけじゃない。ただてきとうに・・・。何かにひかれるように。
車のクラクションの音、そして、ブレーキの音が聞こえた。どうやら僕はいつのまにか、交差点の真中に突っ立っていたらしい。
―――照火は過去に自己に遭い、足が少し不自由だ。ゆえにすぐよけることができない。
キキーーーーッッッ!!ドッ!
一瞬の出来事だった。
「おい、大丈夫か!?しっかりしろ!」
薄れ行く意識の中で、運転手の声が聞こえてきた。
もうすぐ、僕は死んでしまうのだろう。からだの感覚が、もう無い。
もうすぐ会える・・・。
「ラ・・・イ・・・・・・ト――――――――
◆
ほぼ同時刻。照火の通う学校のクラスメイト達は、夏季課外研修の帰りのバスの中だった。このバスには、雷人や照火をいじめていた、不知火飛鳥もいた。彼は、本当は違うクラスなのだが、なぜかこのバスの中にいた。彼への恐怖からか、バスの中は異常なほど、静かだった。
バスの運転手、大木亮太郎はいつものように運転をしていた。大木はこの道三十年のベテランバス運転手だ。今日もいつもと変わらない運転風景・・・・・・。
「あれ・・・?なんだ、これは・・・」
視界に霧が現れる。薄いものだがいきなり。ここは普通の街中の公道。山とかを走っているというわけではない。天気、気温、湿度、そして時間帯からしても、霧が現れることはまず、ありえない。しかし、この霧は現れた。なんの前触れも無く。
次の瞬間、大木は突然頭がくらっとするような感覚に襲われた。意識がほんの少しの間、飛ぶ。
霧が晴れた。意識が戻る。はっとなり、素早く前を向く。交差点。信号は赤。今のバスの速度は・・・時速七五キロ。止まれない。交差点の右からは、大型トラック。左からは、小型車。間に合わない。大木は顔を引きつらせながらも、必死にブレーキを踏んだ。
キキーーーーーッッッッ!
「!?」
突然の大きなブレーキ音。車体の揺れ。異変に気がついた生徒は、閉じていたバスのカーテンを開け、窓の外を見る。前方の信号は赤。なぜかバスはいまだ走っている。ブレーキをかけているようだが間に合いそうも無い。バスは大きな音を振りまきながら、直進している。車内のほかの生徒も異変に気がつき、車内の静寂は打ち破られ、一瞬にして悲鳴へと変わる。
「おい、どうしたっていうんだ!!」
いまいち状況を把握できていなかった飛鳥は立ち上がり、そして叫んだ。しかし、叫んだところで、パニック状態の車内からは返事が返ってくることは無い。
車体は横断歩道をゆうゆうと超え、交差点につっこんでいく
―――ドグァ!!
―――――――――――――――――――。
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救急車のサイレンの音が、うるさく響き渡る。
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