死神のシンフォニー 「第一章」①
第一章 hell's test
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「うっ、うう・・・・・・。ここ・・・は・・・」
僕は目を開け、まわりを見たが、視界に入ってきたのは全て、黒。漆黒に包まれていた。ここはどこなのだろう・・・。僕は、その漆黒の闇の中に、横になっていた。おかしい。ついさっきまでは病院にいたはずだ。意識が無かったから、分からなかったとはいえ、さすがに事故に遭ったら病院に運ばれるだろう。
僕はふと、自分の体を見た。あれほどの事故であったにも関わらず、どこも怪我はしていないようだった。服も破れているような感じはせず、事故前そのままだ。それと、身体がいつもより軽い気がした。
僕はここがどこなのか少し考えた後、こういう結果に達した。ここは死後の世界なのかもしれないと。
「やっぱり、僕、死んじゃったのかな・・・。まぁ、あの事故なら仕方ない・・・よね。・・・・・・・・・だとするとここは天国!?んー・・・だとすると、イメージと少し違うな・・・」
そんなことを呟いていると、カツンとすぐ後ろで足音がした。
ぼくはびくっとなりながらも、後ろを振り向く。
「だっ、誰?」
振り向くと、そこにいたのは一人の少女。背は小さかったが、歳は自分と同じくらいだろうか。服装はセーラー服なのだが、普通のそれとは違い、色が黒を基調とした配色だった。背景の黒と同化して、境目がわかりにくい。
「あ、おどこかしちゃったかな?ごめんね。それはそうと、ようこそ!『地獄』へ♪」
少女は流暢に言った。
僕は、その少女のいった言葉、『地獄』で、やはり自分が死んだという考えが確固なものとなってきた。まぁ、すでに、自分でそうは思いかけていたので、『地獄』という言葉を聞いても驚くことはなかった。
「君は誰?何者?ここは本当に地獄なの?もしそうだとしたら僕は何で地獄行きなの?」
僕は、少女に向かって、質問攻めをしていた。自分でも驚くほど、すらすらと言葉が出てきた。どうやら、気付いてはいなかったが、意外と怖かったのかも知れない。この漆黒が。
少女は、僕の大量の質問に困惑の表情を浮かべ、頭を抱えながら、
「あぁー。一度にそんなにたくさん質問しないでよ。わたし、バカだから無理」
(バカって・・・)
まぁ確かに、誰でも一度にこんなに質問されたら頭が痛くなるだろう。
「ご、ごめん。じゃあ、一つずつ。一つ目。君は誰?何者?」
ん?結局、二つ一気に訊いた。
「え、えーっと。わたしの名前は唯。黒羽唯(くろばねゆい)っていうの。よろしくね。何者かって言われてもね・・・まぁ、『死神』っていう表現が一番いいかも」
「死神っ!?」
正直ビックリした。誰でもだろうが、死神という言葉は、聞いて、気持ちのいい言葉ではないと思う。僕の中では・・・、というか、たいていの人も、「死神=死を招く神」というようなイメージがあると思う。僕は、頭の中で、イメージしていた死神の姿を思い浮かべ、目の前にいる唯と、見比べる。
「死神・・・には見えないけど、もし、君が本当に死神なら、僕に死を招いたのも、もしかして君なの?」
死の原因を探るかのように、静かに訊いた。
唯はしばらく黙って僕のほうを見ていたが、はぁとため息をついて、
「やっぱりみんなそういう質問をするなぁ。なんでだろ。やっぱり『未練』があるからかな。どうやら、現世では死神は、『死を招く』みたいに思われてるけど、それは違うんだよ?」
なんだか、思考を読まれた。
「人が死ぬのは、運命なんだよ。わたしたち、死神の役目は、死んだ人に『テスト』を受けてもらうように案内することなんだよ」と、だるそうに言った。
「テスト?」
「そう、テスト」
「テストってなにの?」
僕はテストと聞いて、まず、学校であるようなテストを思い浮かべたのだが・・・、
「君が生き返ることができるかのテストだよ。生き返りをかけたテスト」
「そんなものがあるの!?」
「うん、あるよ」
死後の世界のことなど、もちろん知らなかったが、そんなものがあるとは驚きだ。でも・・・。
(僕が生き返っても何もいいことはない。また、あの最悪な日々が始まるだけ・・・・・・)
「あ、それとなんか、まだ質問あったよね。なんだったっけ・・・。えっと・・・。あっそう、そう。ここが本当に地獄か、だったっけ?」
「あ、うん」
「さっきも言ったけど本当に地獄だよ?ここは」
やっぱり、と心の中で呟く。ここが天国、といわれたら少し違和感を感じるが、地獄というなら、イメージ通りだ。
それにしても、なぜ僕は地獄行きなのだろう。
「・・・で僕は何で地獄行きなの?」
「それのことなんだけどねー・・・。どうやら現世では、善いことをした人が天国行きで、悪いことをした人が地獄行き、なんて言われてるみたいだけど、これも違うんだよ?」
「え?」
「基本的に、老いて死んだり、未練が無い状態で死んだら、天国行き。それ以外は、全員地獄行きってわけ」
「へぇ・・・」
「そして、地獄行きの人はさっき言ったように、テストを受けるの。まぁ、受けなくてもいいんだけど、その場合は天国行き。テスト不合格でも天国行きになるよ。ようは、地獄っていうのは、天国への通り道ってわけだね」
(・・・・・・あれ?)
「ねぇ、唯。未練が無かったら天国行きなんだよね」
「うん、そうだよ」
おかしい。なぜ僕はここにいるのだろう。未練があるはずも無いのに。あんな世界にはもう、二度と戻りたくないのに。
そんなことを考えていたのだが、いまさらになってふと、思い出した。
僕は死んだ。ということは。すでに死んでいる雷人に会えるかも!
「ライト・・・・・・光見雷人って知らない?三ヶ月前に死んだんだけど」
「ライト?あぁ、知ってるよ。わたしが、君の担当する前、雷人の担当だったから」
「ラ、雷人を知ってるの?今どこにいる!?」
僕は、いつになく明るい表情になり、すごい勢いで唯に訊き迫った。唯は、迫力に押されそうになりながらも、冷静に、
「雷人は・・・。テストを受けなかったの。だから、多分今は天国に・・・」
「えっ!?」
生き返れるかどうかのテストを拒否するとは・・・。でも、僕はそれ以上は驚かなかった。なにせ、雷人は自殺した。生き返ってもしょうがないと思ったのだろう。
しかし、天国にいるってことは・・・。まだ会える望みはあるかもしれない。
「ねぇ、唯。僕もテストを受けなくてもいい?それで、天国に行って雷人に会えるのなら、生き返らなくてもいいからさ」
しかし、唯は首を横に振った。
「いや、それは別にかまわないんだけど、会える可能性は無いよ?一口に天国って言ったって、いくつもあるの。その数は無数といってもいいかも・・・。だから、天国にいっても特定の人と会うことはまず無理。しかも、天国にその人が居れるのはほんの少しの間。時間が経つと、人格が消えて、新しい魂となって消えてしまうから」
「そ、そんな・・・・・・」
(じゃあ、もう、雷人には会えないのかな・・・)
雷人に会えないんだったら、天国に行っても意味が無い。かといって、生き返っても・・・・・・・・・。僕は考え込んでしまった。
そんな様子をじっと見ていた唯は、ハァとため息をついて、
「ホラホラ、そんなに暗くならない!一応だめもとで受けといたら?何もしないでだめになるより、何かしてからだめになるほうがいいと思わない?」
そう言って、背中をドン、と押してきた。
たしかにそうだ。現実から逃げていたほうが楽ではあるが、逃げていちゃ何も始まらない。やるだけやったほうがいい。
「わかった。テストを受けるよ。頑張れるだけ、頑張ってみる」
そういうと、唯はにこっと笑った。僕は、その笑顔を見て、何かを思い出しかけた。誰かを思い出しかけた。しかし、それは出てこなかった。唯の笑みが、誰かの笑みに似ていたような気がした。
「照火。テスト会場に案内するよ?結構近いからすぐつくと思う」
唯はそういうと、僕の手をもって、引っ張った。唯の手の感触が伝わってくる。なんだか、冷たい感じがした。
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「うっ、うう・・・・・・。ここ・・・は・・・」
僕は目を開け、まわりを見たが、視界に入ってきたのは全て、黒。漆黒に包まれていた。ここはどこなのだろう・・・。僕は、その漆黒の闇の中に、横になっていた。おかしい。ついさっきまでは病院にいたはずだ。意識が無かったから、分からなかったとはいえ、さすがに事故に遭ったら病院に運ばれるだろう。
僕はふと、自分の体を見た。あれほどの事故であったにも関わらず、どこも怪我はしていないようだった。服も破れているような感じはせず、事故前そのままだ。それと、身体がいつもより軽い気がした。
僕はここがどこなのか少し考えた後、こういう結果に達した。ここは死後の世界なのかもしれないと。
「やっぱり、僕、死んじゃったのかな・・・。まぁ、あの事故なら仕方ない・・・よね。・・・・・・・・・だとするとここは天国!?んー・・・だとすると、イメージと少し違うな・・・」
そんなことを呟いていると、カツンとすぐ後ろで足音がした。
ぼくはびくっとなりながらも、後ろを振り向く。
「だっ、誰?」
振り向くと、そこにいたのは一人の少女。背は小さかったが、歳は自分と同じくらいだろうか。服装はセーラー服なのだが、普通のそれとは違い、色が黒を基調とした配色だった。背景の黒と同化して、境目がわかりにくい。
「あ、おどこかしちゃったかな?ごめんね。それはそうと、ようこそ!『地獄』へ♪」
少女は流暢に言った。
僕は、その少女のいった言葉、『地獄』で、やはり自分が死んだという考えが確固なものとなってきた。まぁ、すでに、自分でそうは思いかけていたので、『地獄』という言葉を聞いても驚くことはなかった。
「君は誰?何者?ここは本当に地獄なの?もしそうだとしたら僕は何で地獄行きなの?」
僕は、少女に向かって、質問攻めをしていた。自分でも驚くほど、すらすらと言葉が出てきた。どうやら、気付いてはいなかったが、意外と怖かったのかも知れない。この漆黒が。
少女は、僕の大量の質問に困惑の表情を浮かべ、頭を抱えながら、
「あぁー。一度にそんなにたくさん質問しないでよ。わたし、バカだから無理」
(バカって・・・)
まぁ確かに、誰でも一度にこんなに質問されたら頭が痛くなるだろう。
「ご、ごめん。じゃあ、一つずつ。一つ目。君は誰?何者?」
ん?結局、二つ一気に訊いた。
「え、えーっと。わたしの名前は唯。黒羽唯(くろばねゆい)っていうの。よろしくね。何者かって言われてもね・・・まぁ、『死神』っていう表現が一番いいかも」
「死神っ!?」
正直ビックリした。誰でもだろうが、死神という言葉は、聞いて、気持ちのいい言葉ではないと思う。僕の中では・・・、というか、たいていの人も、「死神=死を招く神」というようなイメージがあると思う。僕は、頭の中で、イメージしていた死神の姿を思い浮かべ、目の前にいる唯と、見比べる。
「死神・・・には見えないけど、もし、君が本当に死神なら、僕に死を招いたのも、もしかして君なの?」
死の原因を探るかのように、静かに訊いた。
唯はしばらく黙って僕のほうを見ていたが、はぁとため息をついて、
「やっぱりみんなそういう質問をするなぁ。なんでだろ。やっぱり『未練』があるからかな。どうやら、現世では死神は、『死を招く』みたいに思われてるけど、それは違うんだよ?」
なんだか、思考を読まれた。
「人が死ぬのは、運命なんだよ。わたしたち、死神の役目は、死んだ人に『テスト』を受けてもらうように案内することなんだよ」と、だるそうに言った。
「テスト?」
「そう、テスト」
「テストってなにの?」
僕はテストと聞いて、まず、学校であるようなテストを思い浮かべたのだが・・・、
「君が生き返ることができるかのテストだよ。生き返りをかけたテスト」
「そんなものがあるの!?」
「うん、あるよ」
死後の世界のことなど、もちろん知らなかったが、そんなものがあるとは驚きだ。でも・・・。
(僕が生き返っても何もいいことはない。また、あの最悪な日々が始まるだけ・・・・・・)
「あ、それとなんか、まだ質問あったよね。なんだったっけ・・・。えっと・・・。あっそう、そう。ここが本当に地獄か、だったっけ?」
「あ、うん」
「さっきも言ったけど本当に地獄だよ?ここは」
やっぱり、と心の中で呟く。ここが天国、といわれたら少し違和感を感じるが、地獄というなら、イメージ通りだ。
それにしても、なぜ僕は地獄行きなのだろう。
「・・・で僕は何で地獄行きなの?」
「それのことなんだけどねー・・・。どうやら現世では、善いことをした人が天国行きで、悪いことをした人が地獄行き、なんて言われてるみたいだけど、これも違うんだよ?」
「え?」
「基本的に、老いて死んだり、未練が無い状態で死んだら、天国行き。それ以外は、全員地獄行きってわけ」
「へぇ・・・」
「そして、地獄行きの人はさっき言ったように、テストを受けるの。まぁ、受けなくてもいいんだけど、その場合は天国行き。テスト不合格でも天国行きになるよ。ようは、地獄っていうのは、天国への通り道ってわけだね」
(・・・・・・あれ?)
「ねぇ、唯。未練が無かったら天国行きなんだよね」
「うん、そうだよ」
おかしい。なぜ僕はここにいるのだろう。未練があるはずも無いのに。あんな世界にはもう、二度と戻りたくないのに。
そんなことを考えていたのだが、いまさらになってふと、思い出した。
僕は死んだ。ということは。すでに死んでいる雷人に会えるかも!
「ライト・・・・・・光見雷人って知らない?三ヶ月前に死んだんだけど」
「ライト?あぁ、知ってるよ。わたしが、君の担当する前、雷人の担当だったから」
「ラ、雷人を知ってるの?今どこにいる!?」
僕は、いつになく明るい表情になり、すごい勢いで唯に訊き迫った。唯は、迫力に押されそうになりながらも、冷静に、
「雷人は・・・。テストを受けなかったの。だから、多分今は天国に・・・」
「えっ!?」
生き返れるかどうかのテストを拒否するとは・・・。でも、僕はそれ以上は驚かなかった。なにせ、雷人は自殺した。生き返ってもしょうがないと思ったのだろう。
しかし、天国にいるってことは・・・。まだ会える望みはあるかもしれない。
「ねぇ、唯。僕もテストを受けなくてもいい?それで、天国に行って雷人に会えるのなら、生き返らなくてもいいからさ」
しかし、唯は首を横に振った。
「いや、それは別にかまわないんだけど、会える可能性は無いよ?一口に天国って言ったって、いくつもあるの。その数は無数といってもいいかも・・・。だから、天国にいっても特定の人と会うことはまず無理。しかも、天国にその人が居れるのはほんの少しの間。時間が経つと、人格が消えて、新しい魂となって消えてしまうから」
「そ、そんな・・・・・・」
(じゃあ、もう、雷人には会えないのかな・・・)
雷人に会えないんだったら、天国に行っても意味が無い。かといって、生き返っても・・・・・・・・・。僕は考え込んでしまった。
そんな様子をじっと見ていた唯は、ハァとため息をついて、
「ホラホラ、そんなに暗くならない!一応だめもとで受けといたら?何もしないでだめになるより、何かしてからだめになるほうがいいと思わない?」
そう言って、背中をドン、と押してきた。
たしかにそうだ。現実から逃げていたほうが楽ではあるが、逃げていちゃ何も始まらない。やるだけやったほうがいい。
「わかった。テストを受けるよ。頑張れるだけ、頑張ってみる」
そういうと、唯はにこっと笑った。僕は、その笑顔を見て、何かを思い出しかけた。誰かを思い出しかけた。しかし、それは出てこなかった。唯の笑みが、誰かの笑みに似ていたような気がした。
「照火。テスト会場に案内するよ?結構近いからすぐつくと思う」
唯はそういうと、僕の手をもって、引っ張った。唯の手の感触が伝わってくる。なんだか、冷たい感じがした。
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