BABYシステム。
晩婚化、それに伴う出産率の低下。
少子化。
これに対し政府が対策として打ち出したのがこのシステム。
伴侶となるべき相手はいらない。
子供だけ欲しい。
そんな社会によって生まれたシステム。
進んだ医学と科学は人工授精という枠を超える。
男性は自身の精細胞を、女性は自身の卵細胞を提供すれば良い。そこにその人物の人格は一切問われない。
子供が欲しい。
そう思えば子供が作れるシステム。
………
……
…
まつな「の、はずなんだけど。どうしてこんなんなってしまったんやろ」
13「なにが?」
まつな「いや、BABYシステムって子供を産みやすくするためのものやろ? なのに今はどうやって能力を上げるかに固執しとる」
ここのような能力を上げるための施設があることもそうだし、能力の数値化をするようになったのもそう。
ここ数世紀の流れはどうもおかしい。
13「変な1番さん。そんなこと考えるのおかしいよ」
まつな「そうかな」
13「そうだよ」
まつな「うーん」
天井を見ながら唸る。
13「だってそうじゃない。子供は簡単に作れるようになった。それこそ性行為そのものが古いとさえ言われてる」
13「子供の将来は親の将来にも大きく関係するでしょ? 子供が優秀であれと願い、それに技術が伴った。この流れは当然だと言えない?」
まつな「……」
13「納得してない顔だね?」
まつな「そうやな」
13「なんで?」
まつな「その考えはうちはどうも好きになれへん」
13「……」
13「好きになれない、か。感情的な考えだね。知ってる? 1番さん。そういうのをね、矛盾っていうんだよ?」
13「そんな考えがあるのにさ、どうして大阪研究所に戻ってきたの? あなたはBABYシステムには能力はいならいと考えてるの?」
13「そもそもあなたは施設を出られた数少ない人間。なのにまた戻ってくるなんて。おかしいのは1番さんだと思うけどな」
矛盾
自分でもよく分らなくなる。
まつな「……」
13「それはいつもの退屈しのぎなのかな? それとも……」
13「あの人に心奪われた、とか?」
……
まつな「あははっ、心奪われる? おかしなこと言うんやな」
思わず笑ってしまう。変わっているといえばこの子も相当変わっている。
まつな「心奪われるって。うちら女同士やで?」
13「……」
13「そんなの関係ないと思うな」
真剣な表情。冗談ではないらしい。
まつな「……」
13「女同士とか異性とか同性とか。関係ないよ」
まつな「13番、あんた……」
13「……」
13「私は好きだよ、あの人。すごく真っすぐで、すごく優しくて」
13「すごく分らなくて」
13「だけどそんな感じにね、すごい惹かれるの」
まつな「惹かれる、か。あの人は……火傷じゃすまないで?」
13「うふふ? へんな1番さん。平気だよ? 私。だってあの人は前の施設長のようなことはしないもん」
13「私知ってるんだ。あの人は誰かを殺して実験するようなことはしていない」
13「純粋にBABYシステムを研究してる。そういう純粋な人なんだって」
まつな「……」
13「だから1番さんには感謝してる。ここを出て言った時はずるいなとも思ったし、妬みもした。だけど今はそういうのはないんだ」
13「あなたが連れてきてくれたあの人……」
13「あの人がここの全てを、世界を変えてくれそうな気がするから」
13「私は毎日が幸せだよ」
まつな「……」
まつな「だとええな」
聞こえないように
私は小さく呟いた。
………
……
…
13「なんで?」
13「なんでなんでなんで?」
13「なんで私はまたここにいるの? どうして? ねぇ? なんで?」
13番が大きな声で叫ぶ。
13「ねぇ、1番さん。なんで? なんでまたこんなことしなきゃいけないの? ねぇ? ねぇ?」
13番は怯えたように私の胸倉を掴む。全身からは汗が吹き出し、顔色も悪い。
13「ううっ、うううっ。最低。こんなのほんとに最低。ありえないよ」
泣き叫ぶ13番。
連れてこられたは1つの島。
渡されたのは1枚の紙。
始まるのはまたあの殺し合い。
まつな「ほんまに……退屈しないな、あの人は」
私は空をぼんやり見る。
あの人は空を見るのが好きだった。雲の流れ、空気、色。いろんなものを肌で感じていた。私も同じことをする。
ゆっくりと雲は流れて、時折雲は1つの集まりになる。
小さな雲は流れが早く、大きな雲な流れが遅い。
そんな雲と空を見ながら時間が流れをただただ感じる。
ぼんやりと眺めて、ただただ時間に身を任せる。
まつな「さぁ、始めようか」
まつな「第2回 BABYシステム能力向上実験」