「広瀬先生 ミスは宝物なのだから、怖がらなくていいのよ。一緒に気づいていきましょう。さて。」そう言って工藤先生が、わたしのファイルと業務日誌を取り出す。
バディというのは職務上困ったら、専属で相談に当たってくださる、同僚の先輩のことだ。工藤先生は経験がわたしより5年長い。
バディの仕事は、共感しつつ、問題解決をしていくことだから、あなたより、ベテラン過ぎてはいけないの。工藤先生の口癖。
「さて、仕事上であなたに認められてることって、なんだったかしら。言ってごらんなさい。」
・休暇をとる
・必要であればバディと一緒に授業ができる。
・指導に困ったときは、チームで対処することを要請できる。
・医療的なメンタルケアを受けられる。
「工藤先生、わたし、何にもしていませんでした‥.。」
「よく、ご自分で気づいてくださったわ。広瀬先生。具体的に言葉にしてごらんなさい。大丈夫。」
母が病中であるのに休暇を申請しなかったこと。くみさんのIT支援について、生活支援の藤井先生とチームを組むべきだったこと。
くみさん本人と、話し合うことは、生活支援の時間にできたことで、本来は国語の授業をするべきだったこと。
「よく気づいてくださったわ。でも、ひとつ忘れていませんか?くみさんは、どんなお子さんですか。」
工藤先生がアイマスクを出された。
「はい、つけてごらんなさい。」
いきなり、ドン!と机を叩く音がした。
くみさん!工藤先生が大声で怒鳴った。
「これが、あなたのしようとしたことね?間違いはないわね。」
とんでもない、ことをした。
「気がついた?」工藤先生の声はおだやかながら、厳しい。
「感情的になって...言葉を出す前に音でおどそうとしてしまいました。何が起こったのか、くみさんはわかりません。」
そうね、いいわ。では、広瀬先生が、これからすべきことを、言葉でおっしゃい。大事なのは繰り返さないこと。
つたえる の授業を組むこと。くみさんの話をよく聞いて、ロールプレイで くみさんの役をやってみること、くみさんには、わたしの役をしてもらうこと。この授業は、公開授業形式にすること。
忘れないで、これは、あなたにとっても、くみさんにとっても、良きチャンスのときよ。
授業で会いましょう。そう言って、わたしの肩を工藤先生は、たたいて出ていかれた。
共育 ともみの場合【3】へ続く
