【仮設焼却炉】「区長会への説明で十分」~放射性廃棄物をこっそり燃やしたい環境省に怒りと失望 | 民の声新聞

【仮設焼却炉】「区長会への説明で十分」~放射性廃棄物をこっそり燃やしたい環境省に怒りと失望

仮設焼却炉を使った除染廃棄物の焼却が続く福島県の住民らでつくる「放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会」(和田央子代表)が29日午前、参議院会館で環境省との交渉に臨んだ。焼却炉の建設・解体にあたって丁寧な住民説明会を開くこと、焼却処理による周辺環境の二次汚染、処理や建設・解体費用について積極的な情報公開を求めたが、環境省側は事実上、拒否。地元自治体に責任転嫁するかのような発言に終始し、参加した住民からは「福島を汚す側の味方をする環境省なんかいらない」、「事業主体のくせに無責任だ」と怒りの声が飛んだ。



【説明会が騒然となるのがイヤ?】

 「必要があれば説明会を開く」、「住民の理解は得られていると考えている」─。わずか90分の交渉だったが、環境省側の消極さを知るには十分だった。

 福島県相馬市では、2013年2月から昨年11月まで仮設焼却炉が稼働。今年9月から撤去解体工事が進められている。〝最後は金目〟の石原伸晃環境大臣(当時)自ら視察に訪れ、「福島復興の1つのシンボル」と絶賛する存在だったが、焼却炉の建設時も解体工事着手時も、住民への十分な説明が行われていないとして、住民側が環境省の姿勢を質した。

 これに対し、環境省側は相馬市と協議をした上で市議会や区長会、焼却炉のある工業団地の企業関係者には説明会を開き「ご理解いただいている。説明不足というのは事実誤認だ」と反論した。しかし、説明会の出席者や質疑の内容などは「すべての議事録をインターネットで公開するわけではない」として情報公開しておらず、説明会に参加した区長たちがどのような形で住民に内容を伝えているのか、配布資料をどのように活用しているかなどのフォローもしていないという。

 和田代表が「焼却炉の風下に住む住民は、粉塵が舞うことで放射線量が上がると心配している。私も鮫川村の仮設焼却炉の至近距離に住んでおり、説明会も無しに焼却炉を解体されては困る」と住民説明会の開催を重ねて求めたが、環境省の若手職員は音声ガイダンスのように同じ言葉を繰り返すばかり。挙げ句は「地元自治体との関係もある。地元がどうしても必要ということであれば検討する」と自治体に責任を転嫁する始末。

 さらには「すべての住民に理解してもらうのは難しい」、「必要なところには説明する」と言い出し、参加した住民から「自治体が説明会など要らないと言ったら開かないのか」、「事業主体は国ではないのか」、「説明会が必要か否か誰が決めるのか」と怒りを買った。これには若手職員も「『必要な』という表現がアレなんですが…」と言葉を濁すのが精一杯だった。反対意見で会場が騒然となるのを恐れているのか、最後まで住民説明会には後ろ向きだった。
相馬市
相馬市HP
(上)2014年11月をもって焼却処理が終わり、解体

撤去工事が進む相馬市の仮設焼却炉

=環境省のホームページより

(下)2013年2月には、石原伸晃環境大臣(当時)らが

仮設焼却炉を視察。「仮設焼却炉は福島復興の1つ

のシンボル」と述べている

=相馬市のホームページより


【責任ある回答できぬ若手職員】

 福島瑞穂参院議員の仲介で実現した交渉には、環境省から「指定廃棄物対策チーム」の課長補佐や、指定廃棄物対策担当参事官室の職員計3人が出席した。しかし、ほとんどを若手の職員が回答し、「手持ちの資料がない」、「担当部署が違う」、「上司に相談しないと答えられない」ばかり。

 東京都環境局の元職員で、同連絡会のアドバイザーを務める藤原寿和さんも「責任ある立場じゃないじゃないか」と怒りを露わにした。環境省側の煮え切らない姿勢に、藤原さんは「住民への説明がすべからく不十分。『無知な住民に細かい説明をしても、どうせ理解できないだろう』と考えているのではないか」、「情報公開など、欧米で実践されているリスクコミュニケーションのやり方と全く違う。密室で進められ、議事録も簡単なものしかホームページ上にアップされていない」と憤慨。同省が相馬市の仮設焼却炉周辺の区長や企業に行ったという説明会の議事録や出席者リストの公開を求めたが、やはり「出せるかどうか上司に確認したい」との回答。藤原さんは「そんなことすらオープンに出来ないような秘密会なのか」と詰め寄ったが、役人側の姿勢は変わらなかった。

 藤原さんは「限られた検体数だが、鮫川村の仮設焼却炉周辺で明らかに焼却によるものと思われる土壌汚染が確認できた」と放射性廃棄物を燃やすことによる二次汚染について指摘。近く、発表するという。焼却炉周辺の放射能汚染に関しては、岩手県宮古市の岩見億丈医師による土壌調査でも明らかになっている。

 環境省側は一貫して現行の取り組みには問題ないとの姿勢。連絡会が、仮設焼却炉での焼却対象物の種類や量、放射性物質濃度、排ガス測定値などの「日報」を公表するよう求めたが「(現行の情報公開で)不備はないと考えている」と拒否。和田代表が「どれだけの量を燃やしているのか、さっぱり分からない」と反論しても「決してごまかしているわけではないが、周辺住民からの要望があったとしても、必ずしも数値を出すわけでは無い」と重ねて拒んだ。
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福島県塙町に暮らす和田央子さんの自宅は、

鮫川村の仮設焼却炉から数kmの距離。住民説明会

開催に消極的な環境省に「失望した」と肩を落とした

=参議院会館会議室


【「国は企業でなく住民守れ」】

 福島県田村市都路地区に暮らす70代の女性は「これまで焼却炉には全く無関心で分からなかったけれど、郡山市内での勉強会に参加するうちに大変なことだということが分かってきた」と、新幹線で交渉に駆け付けた。都路地区と川内村の境にある「東京電力南いわき開閉所」にも仮設焼却炉の建設計画があり、焼却による二次汚染は他人事ではない。女性は、「鮫川村には行ったことが無い」と話す若手職員に苦笑し、「環境省が福島を汚しているということはない」と断言する姿に憤った。席上、思わず「誰かに頭をつかまれて、何も言えないような感じね」とつぶやいた。そして、ひときわ大きな声でこう言った。

 「住民ではなく、汚す側の味方をする環境省なんかいりませんよ。無知な住民は役所に頼るしかないんですよ。国は大企業を守るのですね。福島の住民は守られない。がっかりしました」

 結局、連絡会の要求に対して環境省は何一つ前向きな回答をせず、時間切れで交渉は終わった。住民説明会の開催についても確約を得ることができず、和田代表は「失望している。再びこのような場を設けていただきたい」と厳しい表情で語った。

 「焼却炉周辺の方々の声が直接、環境省には届いて来ない」と言い放つ職員に、富岡町から会津若松市に避難している女性は「福島に直接、意見を聴きに行ったら良いじゃないか」と声をあげた。「次回はぜひ、福島にいらっしゃいませんか。地元の声が聞こえる場所でぜひ、話し合いましょう」と水を向けた。しかし、環境省の3人は何も答えなかった。そして、真っ先に会議室を後にしたのも3人だった。



(了)