【これでいいのか郡山市議会】猛暑対策ならOK、被曝回避だとNO~遅きに失したエアコン賛成
郡山市議会が、教室へのエアコン設置を求めた請願を全会一致で採択した。これまでかたくなに反対してきた市議たちがあっさり賛成に回った背景には、4月の市長交代に加え、請願から「放射能」や「被曝」「空間線量」などの文言が外された〝裏事情〟があった。猛暑対策には反対せず、被曝回避には抵抗する議員たち。根性論まで持ち出してエアコン設置を拒み続けてきた市議会は結局、2年9カ月もの間、子どもたちに教室の窓を開けさせて被曝を強いてきた。遅きに失した請願採択を抗議を込めて紹介する。
【「放射能の文言無くありがたい」】
結果は「全会一致」だった。
郡山市議会12月定例会に提出された「郡山市立小中学校に対し、エアコン設置を求める請願書」。「福島県中小企業家同友会郡山支部女性部」と「公益社団法人郡山法人会女性部会」が5人の紹介議員を立てて提出。「二本松市内小中学校の各教室にエアコンが導入され、福島市、須賀川市でも各教室へのエアコン導入が検討されている」「郡山市内の子どもたちは猛暑の中、40℃近い教室で勉強している」として、公立小中学校へのエアコン設置を求めた。請願書には、1万6234人分の署名も添えられた。
請願書には「放射能」はもちろん、「被曝」「空間線量」「除染」の文字は無い。「請願趣旨」は、わずか8行。シンプルに「猛暑」での学習環境の改善という観点からエアコンの設置を求めている。
討論を傍聴した市民によれば、「放射能という文言がないのはありがたい」と露骨に賛意を示す市議もいたという。「熱中症の報告は無い」との意見も出たが、結局、請願は採択された。高濃度汚染をもたらした原発事故から実に2年9カ月目での悲願成就だった。
「子どもたちにとって、請願が採択されたことは本当に良かった。でも、悔しいという思いもある。方法論というか、正攻法では駄目なんですね。これが政治…」
そう語るのは、郡山市の市民団体「3a!郡山(安全・安心アクション! in 郡山)」代表の野口時子さんだ。
2012年6月、郡山市議会に提出された請願。「子
どもに我慢させることも教育」という鬼畜のような
意見の前に不採択となった
【「我慢させるのも教育」と一蹴された昨夏】
公立学校へのエアコン設置を求める請願は原発事故以降、様々な団体が郡山市議会に提出してきた。被曝を避けるために教室の窓を閉めたいが、それでは真夏の教室内は40℃どころか50℃近い温度になってしまう。そういった非常事態下で湧き上がった声だった。
野口さん達も2012年6月19日、3人の市議を紹介議員として「小学校そして中学校へのエアコン設置を求める請願書」を提出。「一部の学校では昨年(2011年)冬頃から再び(空間線量が)上昇する傾向にある」「教室の窓を開放しての学校生活は、外部・内部被ばくを防止する見地から回避すべき」「昨年の夏は扇風機や葭簀(よしず)などを用いて暑さ対策を行ってたが、そもそも教室の窓を開放出来ない限り、その効果は限定的」として、郡山市内の小中学校の教室にエアコンを設置し、その費用弁償を東京電力に要求するよう求めた。
しかし、市議らの反応は冷ややかだった。
ある男性市議は「中心市街地の4校、いずれも300人以上の大規模校で現在、いずれの学校も暑くなればすべての戸をあけて授業を行っている。このことに対して、保護者からの苦情や申し立ての件数はゼロ」「保護者からエアコン設置を求めるという話は1件も上がってきていない」「エアコンを設置して欲しいという需要が私には感じられません」と請願を退けた。
別の男性市議も「扇風機とよしずで暑さ対策を図っていて、教室内の温度も2、3℃下げることができている」と請願に反対。さらに別の男性市議に至っては「要求だけに答えるのが愛情ではない、我慢をさせるのも教育の一環だ」「郡山の子どもたちの将来を考えた場合に、与えるだけ与えてはいけない。しっかりとした環境を整えれば、エアコンの設置はしなくてもいいのではないか」と否定的な意見を展開。結局、請願は賛成少数で不採択となった。
「3a!」代表の野口さん。「放射能」の文言が消え
た途端に請願が採択されたことに対し「悔しい。こ
れが政治か」と語った
【市議会は被曝回避より思惑】
野口さん自身が振り返るように、これまでの手法に対する批判もある。ある母親は「『放射能』や『被曝』の文言を外せばすんなり通ることは分かっていた。それならばなぜ、早い段階で今回のような請願を出せなかったのか。結局、そこにこだわるあまりに時間だけが過ぎてしまったではないか。それで子どもを守っていると言えるのか」と厳しく話す。
「早い段階で文言を変えたとしても否決されていた可能性は高いです」
請願に賛成してきた滝田春奈市議は、そう語る。
「当時の最大会派は、原正夫市長とベッタリ。市の方針が『扇風機と葭簀(よしず)』で固まっていたので、それに反するものには賛成しないのです。郡山市議会はそうやって動いています。党議拘束がきつい」
反対議員の翻意を促すのは議員の仕事、と自身も「再び大きな災害が起きて、夏場に学校が避難所になることもある」などと別の角度から賛成意見を述べたこともある。しかし、結果として変化をもたらしたのは市長の交代と地域の支持者らの声だったという。
「孫に怒られた、という議員もいます。『じいちゃん、あの教室で勉強してみな。議場には冷房は入っていないのかい?』と。そう言われてハッとしたそうです」
駒崎ゆき子市議も、被曝回避のためのエアコン設置を求めてきた1人。「本来は、どのような団体が提出したかではなく、請願の内容で賛否は話し合われるべきです。しかし、これまで請願を出してきたのは、いわば野党側の団体。しかし今回は地元経済界の婦人部という、与党側の人たちです。郡山市議会は、請願に対してはそういう意識が強い」と明かす。
「そもそも、被曝回避のためのエアコン設置が反対されると想定していなかった。非常事態なんですから」。蛇石郁子市議はこれまでの議論を振り返る。
「この街で子どもたちが根本的に守られているかと言えば疑問です。今回の請願には署名が添えられた。署名には少なからず各議員の支持者も加わっているわけで、再び反対すると支持者から『何で反対なんだ』と非難されてしまう。それが市議会の現実です。市民の常識が市議会の非常識であることもあるんです」
3人とも、異口同音に「あまりに遅い」と語った。子どもの被曝回避など念頭にない市議会での議論。今回の請願採択を「出来レース」と指摘する声もある。既に郡山市は国からの数十億の予算が確保できていて、市議らも反対する理由がないというのだ。
思惑で動くばかりの議員たちに、母親の言葉を突き付けたい。
「エアコン設置にこれだけ年月がかかったせいで、子どもたちの被曝は防げなかった」
(了)