【福島市長選】「子どもたちを守るため通学路を率先して除染する市長になる」~大内雄太市議が出馬表明
11月17日投開票の福島市長選挙に、30歳の福島市議・大内雄太(ゆうだい)さんが立候補を決意。15日の記者会見で正式発表した。原発事故後から通学路の除染ボランティアを続けてきた経験から「通学路は除染すれば必ず放射線量が下がる」と明言。自ら市長として汗をかきたいと語る。市民に寄り添い対話をしたいと学校給食の米についてもアンケートの実施を公約に掲げるが、一方で避難の支援には消極的。放射性廃棄物の焼却炉にも「排気はバグフィルターで安全なレベルに抑えられる」。子育て世代はどう判断するのか。
【「除染しても下がらない」は間違い】
福島県庁2階の記者クラブ。集まった報道陣を前に、大内市議は「3児の父が考える7つのビジョン」と題した公約を発表した。
①放射線と再生可能エネルギーの教育と観光都市をめざす
②様々な対話の機会を創出し、市民へ近く、聞く耳を持った福島市
③除染問題に率先して取り組む
④子どもから大人まで、みんなの健康を守る
⑤市民生活を元気に~「ママ手当て」
⑥安全・安心・攻めの農業を実現
⑦行政部門の構造改革を行い、市民の負担を減らすべき
公約の中心となるのは③の除染だ。大内市議は原発事故後、通学路の除染ボランティアを続けてきた。その経験も交え「福島市は県内で最も除染が進んでいるが、市民は『除染がなかなか進まない』と考えている。現・瀬戸孝則市長が取り組んでいる除染はあながち間違っていないと思うが、説明不足。市民の疑問に答えを示せていない。専門家の考え方と市民の不安は必ずしも一致しません」と語った。
さらに「通学路は除染すれば必ず放射線量が下がる。『除染をしても放射線量は下がらない』というのは、根拠のない間違い。実際に除染作業をしているのは福島県外の人が多く、市民は当事者意識が低いのはないか。自分たちで通学路除染をやってみて結果が出れば考え方も変わってくるだろう。まずは大人が率先して汗をかくべきです」と厳しい言葉も。
除染で生じた汚染物の仮置き場に関しても「住民とのリスクコミュニケーションができていない。放射線は遮へいできる、適正に保管できるという説明が市民になされていない」、「『除染の日』を制定したい。自分たちのできるところで除染のスピードを上げていきましょう」と有権者に呼びかけた。
福島市長選挙への立候補を正式表明した大内雄
太福島市議(右)。左は、後援会長の常圓寺・阿
部光裕住職=福島県庁
【門前払いされた「ここは危険」との訴え】
1983年1月、北海道小樽市出身の30歳。2009年から福島市で生活をしている。震災直後の2011年7月に行われた市議会議員選挙で初当選(1483票)。元は医療機器メーカーの放射線技術者だった。
市長選出馬の裏には、原発事故直後の悔しさがあった。当時、妻は2人目の子どもを妊娠中だったが、自宅周辺の放射線量は7μSVもあった。福島市役所を訪れ、職員に「ここは危険だ」と訴えたが、相手にされなかった。そこで一念発起して市議選に立候補した。「市議会でも、いくら政策提言をしても行政の長との根本的な考え方の違いの壁にぶち当たってきた」。
瀬戸市長については「汚染も被曝の危険も無いもの、過去のものにしようとしている」と批判。「福島県外から福島市に来て『普通に生活してるじゃん』と帰っていく人々が多い。皆さんは福島市の現状をどのように伝えますか?子どもたちにどのように説明しますか?説明できる土壌すらないではないですか。県都である福島市こそ、原発事故は収束していないと力強く言わなければいけないんです」と語った。原爆ドームのような施設の建設も提唱している。
除染と並んで重視しているのが市民との対話だ。現在、福島市は「地産地消」の名の下、学校給食に福島市産の米を使っているが、まずは保護者へのアンケートを実施したいという。「私は福島市産の米を使うな、とは言っていない。ただ、県の全袋検査では駄目。市民からの使わないで欲しいという陳情が市議会で否決されているが、まずはアンケートで保護者の意見を聴きたい」
子どもたちの保養は「すぐにでも実現可能。授業の一環として市が取り組むべき。県は十分な予算を確保しているのに使われていない」と積極的に取り組む姿勢を示した。一方で、自主避難者への支援に関しては「行政の長としては、出て行く人へのフォローは難しい」とも。定期的に山形県や新潟県を訪れて自主避難者の声を聴いているが、避難を後押しする政策は頭には無さそうだ。むしろ「ママ手当て(仮称)を地域振興券で支給し、ママと地域商店街を元気にするべきだ」と話す。
福島市中心部の宅地除染。大内市議は「少なく
とも通学路は、除染をすれば必ず放射線量は下
がる。大人が率先して汗をかくべきだ」と訴える
【子育て世代の投票を促したい】
今回の出馬には、若者の政治参加を促す狙いもある。
「若い人が立候補しているわけでなく、投票に行きたいと思えるような公約もない。子育て世代の保護者の目線で製作を訴えて、市民に諮ってもらいたい」。後援会長として会見に同席した住職の阿部光裕さんも「周囲からは『大内さんのような若い人が出てくれたことに意味がある』と喜ばれている」と話した。
自身も三児の父親。自分の子どもを守るだけなら今のまま、市議のままで良い。しかし、それでは他の市内の子どもたちを守れない。「私がなぜ出なきゃいけないのか、ということです」。議会改革の一環として定数削減を訴えていることから議員辞職はせず、欠員を生じさせることを選んだ。辞職に伴う補欠選挙の費用も考慮して自動失職の道を選んだという。
現時点で、現職も含め立候補予定者は4人。4年前の投票率は38.18%(8年前は53.86%)。瀬戸市長は7万2000票余を得て当選した。陣営は「3万票はとれるのではないか」と見込んでいる。
(了)