【被災ペット】警戒区域の犬や猫を救え~「にゃんだーガード」
福島第一原発の爆発事故の被害者は人間だけではない。警戒区域内に残されたペットを救おうと活動を続けているのが「にゃんだーガード」。飼い主と離れ離れになった犬や猫たちは100匹以上。仮設住宅では飼えないと持ち込まれたペットもいる。福島県三春町のシェルターには、原発事故に巻き込まれた犬や猫たちの戸惑いや哀しみが広がっているようだった。
【HIVキャリアの猫は別室に隔離】
逃げ出さないよう、二重にされた扉を開ける。閉めたら必ず施錠。そして、一部屋ごとに手を消毒。かつて、宿泊客をもてなした客室で、猫たちが思い思いに生活している。
何匹かの猫が、女性スタッフにすり寄ってくる。「普段は忙しくてあまり構ってあげられないからでしょうか。甘えてますね」。
屋外に設けられた馬房のような大きな特製のケージでは、犬たちが暑さに辟易した様子でくつろいでいた。吠える犬、こちらを伺う犬。人懐っこい「マリ」が私に近づいてきて甘える。名札には「富岡町で保護」「浪江町で保護」と書かれている。シェルター近くで保護された犬もいる。首輪がついており、明らかに飼い犬だったはずだが、飼い主が探している様子もないという。
保護するだけでなく、警戒区域内に餌を置きに行くことも。「誰かが餌を与えなければ死んでしまう」とスタッフ。また「TNR」(トラップ、ニューター、リリース)と言って、捕獲して不妊手術を施したうえで再び、生活圏に戻す取り組みも行っている。HIV(エイズウイルス)を持つ猫も少なくなく、保護された後の検査で18匹がキャリアだと分かった。うち、白血病も患っている猫は5匹。徐々に増えてきているため近々、部屋を増やす予定だ。
警戒区域内から保護された犬や猫。検査でHIV
(エイズウイルス)を持っていることが判明した猫は、
別室に隔離されている
【ペット禁止の仮設住宅からの持ち込みも】
「にゃんだーガード」が被災ペットの保護を始めたのは、原発事故直後の2011年4月。当初は田村市内に拠点を設けていたが、現在の三春町山田に移転したのが昨年5月。三春街道沿いの旅館だった古い建物を購入し、犬や猫を保護している。スタッフ4人は全員女性。1人が常駐し、3人は自宅から通っている。4人には、運営する社団法人から月給が支払われているという。
現在、犬は9匹、猫は約100匹が飼い主や里親を待っている。仮設住宅の入居者が、ペットの持ち込みを禁じられているためにやむを得ず手放すケースもあるという。
里親が現れても再び捨てられてしまうことのないよう、面接をしたうえで自宅にも訪問。本当に飼い続ける意思があるのか、飼える環境にあるのかを念入りに確認する。その上でお試し期間を経て、問題がない場合にだけ引き渡される。新しい飼い主が見つかることはスタッフたちにとっては何よりの喜び。これまでかわいがってきた寂しさをぐっとこらえて、別れを告げる。残念ながら新しい飼い主が現れることなくこの世を去った犬猫たちもいた。
被災ペットの保護を続けている「にゃんだーガード」。
餌やトイレ用の砂などは、寄付で賄われている
=三春町山田字福内
【被災ペットの存在を風化させないで】
「福島原発は、高校の授業で教わりました。『あれが爆発したらヤバい』と。まさか、本当にそのような事態になるとは…」。郡山市富久山町のAさん(21)はツイッターで活動を知り、「動物たちのために役立ちたい」と今年1月からスタッフとして加わった。午前7時半の朝礼で一日が始まり、家路につくのは午後7時。犬の散歩は朝晩2回。約1.8kmの道のりを歩く。「大勢のボランティアの方々がお手伝いに来てくれると本当に助かります」。一匹一匹、体調を確認し、必要があれば日誌に記入する。
原発事故直後に比べ、送られてくる餌などが少なくなっているという。
「関心が低くなっているのがよく分かります。人間だけでなく、こういう子たちがいることを風化させないでほしいです」とAさんは話した。
※餌の送り先やボランティア登録などは「にゃんだーガード」のホームページ(http://nyanderguard.org/index.html )まで。
何よりの喜び。それでもやはり、胸中は複雑。引き
渡しを翌日に控えたジロを、スタッフが寂しそうに
抱きしめた
(了)
