【26カ月目の福島はいま】警戒区域だけが汚染地ではない~桑折町 | 民の声新聞

【26カ月目の福島はいま】警戒区域だけが汚染地ではない~桑折町

福島第一原発から60km超。伊達市と国見町に挟まれた桑折町も、原発事故による汚染が続いている。かつて養蚕が盛んだった県北の町を歩いた。原発事故から2年以上経っても続く汚染と、そこで生活する人々の怒りに直面した。大手メディアが報じない福島の現実。人口1万2000人余の町も被害を受けた。警戒区域だけが汚染地でないことを知って欲しい


【「逃がせられるだけまだマシ」】

「警戒区域だけじゃありません。桑折町も含めた、福島全体が被害者なんです。桑折の人たちだって、別に被曝や汚染に無関心なわけじゃない。腹の中にはいろいろありますよ」

老舗醸造会社の関係者は力を込めた。桑折駅近くには浪江町から避難してきた人たちの仮設住宅があるが、補償の差を思うに複雑な気持ちになる。原発事故を機に、妻と3歳になる娘は宮城県仙台市内に母子避難している。寂しいが、子どもを守るためだ仕方ない、と自らに言い聞かせる日々。「だって、避難させられるだけマシですから。町内には子どもたちがまだ、多く生活している。幼い子どもがいるのに避難できないのは本当に気の毒だと思います。だからといって何もしてあげられないから、あまり避難のことも口にしないようにしています。原発事故さえなければ不要な気遣いですよ」。

味噌や醤油の醸造に使う大豆や米はすべて、独自に検査機関に依頼して放射性物質の有無を調べている。自信を持って販売しているが、県外からの注文は4割減と大幅に落ち込んだ。自社製品を口にしても問題ないか、問い合わせの電話もなくならない。自ら栽培した大豆を持ち込んで味噌にする「仕込み味噌」は、ほとんどゼロになってしまった。桑折町内の大豆が基準値(100ベクレル)を超したこともある。「お宅の味噌からセシウムが出たよ、と言われたらそれで商売は終わり」と緊張が絶えない。検査費用は東電に請求しているものの、いつまで支払ってもらえるのか、先が見えない。

事務所で流している地元ラジオ局が日々、空間線量を伝える。こんなことがもう、2年以上も続く。「毎日毎日これを聞いていると、人間って慣れてしまう。慣れが怖いね。20年後、30年後のことは誰にも分からない。だからこそ、子どもたちのためにできることはしてあげないとね」
民の声新聞-桑折町①
民の声新聞-桑折町②
(上)桑折駅前の植え込みは0.6μSVを超える。

モニタリングポストの表示は0.49μSVだった

(下)醸芳小学校近くの公園では0.4μSVを上回

った=桑折町北町


【仮置き場は0.3μSV超】

ちょうど体育の授業中だった醸芳中学校。学校敷地内は町による除染が完了しているが、通学路は依然として0.4μSVを超した。校庭に隣接してNTTドコモやKDDIの基地局が設置されており、そこでは0.5μSVを上回った。単純換算で年間4mSVを超す被曝線量になるほどだ。

子どもたちの生活空間は学校敷地内にとどまらない。仙台高裁が指摘するように現状の除染作業は不十分だ。子どもたちの被曝回避には汚染された土地を離れるしかない。しかし、実際には学び舎は汚染地に囲まれていると言える。
同校近くには、プールを利用した汚染物の仮置き場がある。フレコンバッグに入れられた汚染物は黒いシートで覆われ、フェンスで近づけないようになっている。しかし、掲示された放射線量は0.3μSV超。本来であれば、周辺の通行も制限するべき値だ。

民の声新聞-高線量
民の声新聞-仮置き場
民の声新聞-仮置き場②
(上)町民体育館周辺は、依然として高線量

=上郡弁慶

(中)(下)旧プールを利用した仮置き場。きちんと

覆われているが、それでも0.3μSVを超す。子ども

は近づいてはならない


【「影響あるか分からない以上、リスク軽減を」】

愛犬を散歩させていた50代の女性。「桑折駅前はまだまだ放射線量が高いですね。知人のなかには、小さい子どもを連れて県外に避難した人もいます。でも、動けず仕方なく住んでいる人もいる。私もそうだけど、放射線量を気にしていたらここでは生きていかれない。地元産の食べ物を子どもに与えないくらいのことはできるけれど…」と話した。
現状が危険だと考える人はとっくに避難している、残っている人は問題ないと考えているか動くに動けない人。愛犬が促すのも気にせず、女性の言葉は止まらなかった。「現在の放射線量が将来、子どもたちの身体に悪影響を及ぼすのかどうかは分かりません。でも、分からないのであれば、リスクを低くする手段をとるべきですよね。安全だなんて言いきれないと思います」
桑折駅から国道4号を越え、町民体育館に向かった。手元の線量計が激しく反応する。1.0μSVを超す〝ホットスポット〟が点在する。千葉県柏市や松戸市は、1.0μSVを超す個所は立ち入り禁止にしている。だが福島では、そのような措置はとられない。今日も、子どもたちは被曝を強いられている。

民の声新聞-体育館①
民の声新聞-体育館②
高線量の桑折町民体育館周辺。高さ1㍍で1.4

μSV超の個所も


(了)