【20カ月目の福島はいま】復興と伝統の陰で置き去りにされた被曝回避~須賀川・松明あかし | 民の声新聞

【20カ月目の福島はいま】復興と伝統の陰で置き去りにされた被曝回避~須賀川・松明あかし

400年の伝統を誇る須賀川市の奇祭「松明あかし」が10日、開催された。伊達正宗との合戦で討ち死にした須賀川城の兵を弔う「鎮魂の祭り」。重さ3㌧もの大松明をはじめ20本以上の松明が燃える火祭りに今年も多くの観光客が訪れたが、依然として放射線量が低くないうえに市内産のカヤを使っての開催。大人たちは子ともたちの被曝回避よりも復興や伝統を優先した格好だ。


【神経質になったらキリが無い】

天気予報が外れ冷たい雨が降り出した須賀川市の中心部に、女子高生たちの「ワッショイ、ワッショイ」という勇壮な掛け声が響いた。「姫松明」。須賀川産のカヤが市内を練り歩く。

担ぎ手として参加した女子高生は首を傾げた。「被曝ですか?全く心配ではないと言ったら嘘になるけど…。家でも学校でも話題になることはないですね」

「中止?そんなものハナからあるわけないじゃなですか?もういいですか?」。約1カ月かけて大松明を作ったボランティアグループ「松明をもりたてる会」のメンバーは、「被曝」という言葉を耳にすると、みるみる表情が変わった。別の関係者が改めて取材に応じた。

「この祭りは400年の伝統があります。地元では絶やさないのが当たり前なんです。いくら原発事故があったからと言っても、『なぜ中止にしないのか』という問いかけは愚問ですよ。昨年だって中止という言葉は一切出ませんでしたから」

松明に使われるカヤは昨年は県外から調達したが、今年は須賀川市内で採れたものを使った。東北本線沿線で空間線量が0.3μSV前後、西側の地区では1.0μSVを超すことも珍しくない中で、市内のカヤを使っても大丈夫なのか、子どもたちに被曝の危険性は無いのか。この男性は「うまく付き合っていくしかないんですよ」と答えた。

「我々ではどうすることもできないんですから。現に放射性物質は存在するわけですしね。だから、100ベクレル以下のカヤしか使わないという基準をもうけたんです。神経質になったらキリが無いですよ。じゃあね、自然放射線量ってどのくらい存在するのか答えられますか?原発事故が起きたから100とか500とか言うんでしょ?もともと存在しているものなんでしょ?」
民の声新聞-姫松明
女子高生らに担がれて須賀川市内を練り歩いた

「姫松明」。担ぎ手の女子高生は「被曝?ほとん

ど気になりません」と話した


【「復興」の掛け声に消される被曝への不安】

須賀川市滑川に自然食レストラン「銀河のほとり」を開く有馬克子さん(53)=郡山市出身=は「あまり大きな声では言えないんだけど」と前置きしながら、松明あかしの開催に否定的な考えを示した。市内でも開催には賛否両論あるが、「復興」の掛け声に押されて、反対意見を言いにくくなっているという。「開催したいという自由は奪えないし、あれも駄目、これも駄目ではねぇ…。でも、子どもたちのことを考えると、賛成はできないのよね。主催者側の人たちも、心の中では心配しているんじゃないかしら」

14歳から26歳までの5人の子どもの母親。自然食レストランを始めて15年になる。河川工事などで現在の場所に移転をし、再オープンの準備を進めていたのが昨年の3月11日だった。「3.11は運命の日ね」と有馬さん。以後半年間は開店もままならず、支援物資の拠点として情報発信にも努めてきた。県外避難をした人、須賀川に残った人、様々な選択を見守ってきた。

「私の中にもいろんなものが共存していますよ。なるべく早く地消地産にもどしたいという自分もいるし、福島県民がくたびれているところに『もう大丈夫だ』と唱える人を送り込んでくる政府にも腹が立つ。いろんな考えの人を否定し合ったって仕方ないし、愛をもって許し合わないとね。どちらが正しいかなんて論争したって平行線のままでしょ?皆、早く立ち直りたいという想いでは一致しているはずですから」

店内にはカタログハウスから寄贈された放射線測定器がある。敷地内で収穫された米や野菜を測定し、検出されたかったものだけを提供する。これまで自ら収穫した野菜から放射性物質が検出されたことはないという。「もちろん、ゼロではないでしょう。でも、食べてしまっても自然療法で体外に排出させることができます。それも、みけんにしわを寄せながらではなく、明るく楽しくね」。

中学生の娘の甲状腺に、小さいのう胞が見つかった。「検査技術の進歩で、昔なら見つからなかったものまで見つかってしまうということもるんでしょうけどね…。娘が病気にならないように、明るく楽しく取り組んでいきたい」。明るい口調の裏側にある不安。福島県立医大は増床を進め、小児科の体制を拡充させている。来るべき甲状腺疾患の増加を予見しているのではないか、と胸は痛む。新しい薬の実験台になるのではないか、親は子のためにふさわしい医療を選べるのか…。

「もしかしたら将来、ほとんど病気が出ないかもしれないし、その方が良いに決まっています。でもね、今の段階で『絶対に安全安心』を口にするなんておかしいですよ。論理的に無理がありますよね」

頭がおかしいと揶揄されたり、強く非難されることも少なくないという。

「病気にならないと自分のこととして考えられないのね。でも対立ばかりしても…。それは〝あちらの方々〟の思う壺ですから」

民の声新聞-銀河のほとり
自然食レストラン「銀河のほとり」の黒板には「じゃー

どうすれば良いんだ!」という有馬さんの言葉が綴ら

れている=須賀川市滑川


【「被曝は気にならない」と言い切る中学生】

須賀川商工会議所青年部の男性が明かした。「当初は、昨年同様に県外のカヤを使って開催する話で進んでいました。『燃やしても大丈夫なのか』という市民の声が少なくなかったようです。でも、最終的には市内産のカヤでやることになった。いろんな力が働いたのでしょう」。

伝統、復興の陰で置き去りにされる子どもたちの被曝回避。

祭りが中止されればタクシー、旅館、飲食店など、観光客相手の商売への打撃は計り知れない。

高校生との応援合戦に向けて気勢をあげていた須賀川第一中学校の男子生徒は、私の顔を睨み返すようにきっぱりと言った。

「被曝っスか?全然気にならないっス。初めは少し気にしていたんスけど、途中から全然気にならなくなったっス。家でも学校でも話題にならないっス。祭りに参加できてうれしいっス」

午後7時前、太鼓の音とともに大松明に御神火が点された。折からの雨で時間がかかったが、ようやく火柱のように燃え始めた。歓声があがる。須賀川のカヤが灰になった夜。

〝愚問〟を口にし続けた1日が終わった。会場で私の〝愚問〟に賛意を示した須賀川市民は、1人もいなかった。

民の声新聞-ろうそくあかし
キャンドル・ジュンさんプロデュースの「ろうそくあ

かし」。多くの人が「きれいな福島よ再び」と祈りを

込めて書き込んだ。中には「原発の無い社会を」

と書かれたキャンドルも


(了)