復興のアピールに利用されるプール授業~教師、保護者の懸念 | 民の声新聞

復興のアピールに利用されるプール授業~教師、保護者の懸念

原発事故からわずか一年余で、福島県内の小中学校で屋外プールを使った水泳の授業が再開されようとしている。除染が進み放射線量が下がったとする行政・教育委員会に対し、現場の教師や保護者らからは「時期尚早」「被曝が心配」との声があがっている。屋内プールの使用など代替策はあるはずなのに、行政側が屋外プール使用に拘泥する背景には、復興が進んだことのシンボルとして屋外プール解禁を利用したい意図が透けて見える



【〝実施は最大公約数の意見〟と市教委】

郡山市役所からほど近いマンションの一室で、小中学生を持つ母親らが憤っていた。

「なぜ屋外プールにここまでこだわるのか。屋内プールで代替できるように努力するべきではないか」

母親らのグループ「安全安心アクション in 郡山」(野口時子代表)は、原発事故以降に実施されてきた屋外活動の「3時間ルール」の解除を郡山市が打ち出したことを受け、市教委に解除撤回を要請。屋外プールを使った水泳授業の実施についても反対している。しかし、面会に応じた市教育長は「自分も子を持つ親として悩んだが、屋外プールの使用は最大公約数の意見を採用した。プール使用決定は揺るがない」としていずれも拒否。市教委側は「保護者の8割がプールでの水泳授業を望んでいる」と説明したが、これはPTA役員や校長会での聞き取り結果だったと判明。この日の会合に参加した母親らは「賛否を尋ねられた覚えはない」「全ての学校で保護者にアンケート調査をするべきだ」として、実際に複数の質問項目も用意しているが、市教委がアンケート調査を実施するかは不透明だ。

ある母親は言った。

「仮にプール授業に賛成するとしても、悩みながら、わが子がプールに入れないのはかわいそうだから賛成に丸をつけるんです。二者択一で決められるものではない」

母親たちのため息が室内を包む。

郡山市教委は、プールサイドの放射線量が高い場合には、ベンチを置いたりマットを敷いたりして、子どもたちが直接、線量の高いコンクリートに触れないよう対策をとることを約束したという。しかし、母親らは「どうして、そこまでして屋外のプールを使って水泳授業を行いたいのか理解に苦しむ」と一様に首をかしげた。市側は「子どもたちの体力の低下を懸念している」「屋外プールに入ることでストレス解消になる」と説明しているが「この一年間、子どもを見てきて体力の低下など感じない」「屋内プールでもストレス解消はできる。要はやり方を工夫するか否かだ」などの意見が出た。
「将来、子どもの健康にどのような影響を及ぼすかまったく予測がつかないのだから、母親は堂々と怖がって良いと思う」と話す野口代表(47)。屋外プール使用に賛成できるはずもないが、市教委が方針を撤回しない以上、今後は、子どもたちへの悪影響を最小限に食い止めるような交渉にシフトしていく。たとえば被曝回避のために水泳授業を休んだ場合の対応。プールサイドで見学していては何の意味も無いため、保健室や図書室での自習を求めていく。

自身も、小学生の息子と中学生の娘の母親である野口代表。

「結局、今年も屋外プールを中止することによって『ああ、郡山はまだ危ないんだ』と行政は思われたくないんでしょう。一年で事故前の生活を取り戻したように印象付けたいのではないか。そんなことに子どもたちをダシに使わないで欲しい」と怒りを露わにした。
民の声新聞-3a in 郡山
屋外プールを使った水泳の授業に不安が募る

母親たち。保護者の意思を確認するアンケート

調査の実施を市教委に求めていく

=郡山市桑野


【教育委員会も原子力村と同じ】

「時期尚早ですよ」

福島市内の公立中学校教師(49)は、毅然と言った。

所属する学校は、学校敷地自体が0.1-0.3μSVと市内の学校としては比較的放射線量が低め。それでも「ただ歩くのと、コンクリートのプールサイドに座るのとは違う」として、同僚の体育教師が線労をこまめに計測。独自の除染も考えているという。「空間線量が1.0μSV以下だったら大丈夫、なんて考え方は馬鹿げている。アバウトではなく、数値は全部公表するべきだ。それも、一番厳しい数値を出さなければ意味がない」。この学校では現在でも、屋外の清掃は子どもたちにやらせていないという。

この教師によると、同市の教育長は原発事故以降「子どもたちを逆境に強い子に育てたい」と繰り返しているという。

これには、「何を寝ぼけたことを言っているのか。われわれ教師は、ある意味、一日のうちで保護者よりも長く子どもたちと一緒に生活をしている。子どもたちのリスク回避を優先するべきという考え方が身体にしみついている。第一、被曝に関しては、子どもたちは単なる被害者なのですから。大人が守るのは当然です」と批判。「被曝回避のために設けられた屋内の遊び場を多くの親子連れが利用していることを見ても、子どもたちの目線で考えればまだまだ被曝の不安は小さくない」として、水泳の授業は屋内プールで行うべきと主張している。「もし保護者にアンケートを実施したら、屋外プール使用に賛成する人は、半分にも達しないのではないか」。

街が平常時に戻っているかのように装うのに子どもたちを利用するな─。

原発事故からわずか一年余で僕外プールの一斉使用に突き進む市教委への怒りと共に、現場を預かる教師として歯がゆさも募る。

「教育委員会も、原子力村と同じです」
民の声新聞-福島市の学校プール
被曝の懸念が消えない中でのプール再開には

教師も「時期尚早」と指摘する

=福島市内の小学校


(了)