根拠があいまいな『節電15%』 | 民の声新聞

根拠があいまいな『節電15%』

「我々はお客さんですよ。市も市民も電気代を払っているんだ。そんな弱腰では…。地域主権の気概を見せなきゃ」
「東電にはそのようなデータが無く、物理的に出せないと聞いております」
「だから、出せないなら出しなさいと言ったらどうですか。ハイそうですか、ではなくて」
「そもそも存在しないデータでありまして…」

8日に開かれた横須賀市議会第二回定例会の本会議での一幕。
一柳洋議員の質問に、吉田雄人市長や環境政策部長はたじたじになった。

同市議がこだわったのは、福島原発の事故に端を発した節電の根拠だ。
横須賀市は経済産業省の要請に応じ、市全体で大口需要家を中心に昨年比15%減を目標に掲げている。
しかし、本当に節電しなければならないほど、真夏の電力は足りないのか。
同議員は市に迫った。
「震災の影響で経済が冷えきっている中いたずらに節電を求める必要はないし、夜のイベントも中止しないよう呼びかけるべきだ。そもそも、今夏の横須賀市のピーク時の必要電力量や供給可能な電力量について、東電にすぐ資料を出させてほしい」

「そういうデータが存在しないと東電は言っていた」

それが市側の答弁だった。
環境政策部長によると、東電には都道府県単位のデータしかなく、神奈川県のピーク時使用量は昨年度約990万kw。東電管内のデータから推計すると今夏の電力供給量は890万kwと考えられ、約100万kwの電力不足が想定されるという。
吉田市長も「過度な節電は経済を冷やす懸念がある」としながらも、市内の大口需要13施設を主に、昨年比15.2%削減を目指すことを示した。節電の成果は、毎月経産省に報告するという。

この答弁に、一柳議員がキレた。
「そもそも電力供給は独占体制で、東電が嫌だから他の会社から買います、というわけにはいかない。原発の問題でも、今まで散々嘘をついてきた。このデータだって信用できない」
「市長は過度の節電はいけないと言ったが、基礎データがなければ、節電が過度か否か判断ができないではないか」

「15%の節電を着実に実施したい」という吉田市長に畳み掛けるが、市側は冒頭の答弁を繰り返すばかり。

「データを出させよ」
「データは存在しない」
結局は、市が主体的、積極的に東電に働きかけるかどうかの問題だ。
全国の原発を全て止めても電力不足は生じないとも言われる中、
経産省や東電の言葉を鵜呑みにしたような姿勢では、市民も納得して節電できまい。
この日の答弁では、米軍基地や原子力空母に関しても「米側が安全と言っている」「防衛省はそう言っていた」などの発言が目立った吉田市長。
軍事機密ならともかく、節電の根拠となる資料すら電力会社に求められないようでは、
《官僚市長》を批判して当選した自身の政治姿勢が問われることになろう。