伝統野菜の「薬味大根」のタネを取り寄せて、畑に植えて以来40日目、まだ未成熟だが、ものは試しと抜いてみた。

本来は根部の直径が3-5cmが収穫時期らしいが、まだ2cmしか育っていない。

そしてもう1本、畑にタネが落ちて自然に根付いた普通の大根も未成熟だが、味を比較するため抜いてみた。

薬味大根は、京都の伝統野菜「辛味大根」と同じものだろう。

成熟すると、カブと間違うくらい丸くなるようだが、まだ未成熟のため、今は楕円形。

 

300年ほど歴史のある伝統野菜で、水分が極端に少ないため、だし汁の味が薄まらず、ワサビのように薬味として使われてきたらしい。

そば以外に、天ぷらはもちろん、赤身のトロとの相性も良いという。

1個の値段が、大根1本と変わらないほど高いので、もっぱら高級料理屋でしかお目にかかれないようだ。

 

・・で、さっそく皮をむいておろしてみると、やはり普通の大根と違って、硬く、水分がほとんどなくパサパサしている。

上の写真のように、未成熟だが普通の大根もすべておろしてみたが、分量はさほど変わらないのは不思議。

左がふつうの大根、 右が薬味大根

 

はじめに汁に付けず、そばにのせて食べてみたが、確かに辛い。

普通の大根に比べて2倍ほどの辛さはあるだろうか?

 

舌がヒリヒリするので、汁に付けて食べた方が良い。

一方普通の大根は、薬味大根を食べたあとのせいか、ほのかな辛味のほかに、何か雑味のようなものを感じてしまうのは気のせいだろうか?

 

「味覚極楽」という本の中に、ある信州出身の陸軍大佐の「そば食い」の話が出て来る。

当然お国自慢の信州そばの話だが、そのこだわりの一つに薬味に用いる大根についてこんなことを書いている。

「・・・大根をおろすときは『頭をぶん殴れ』ということわざがあるくらいで、腹を立てて、うんうん言っておろす位の堅いのがいいので、柔らかいものは甘くて、そばの味とはぴたりと来ない」とある。

そして「この大根、このネギでこしらえた汁の辛いというのは目の玉が飛び出るほどで、したがって、汁をたっぷりつけたくも付けられない」と、陸軍大佐にしては弱気なことを言っている。

 

大根の堅さといい、辛さといい、まるで薬味大根のことを言っているようだ。

この話は昭和の初めころだから、昔は?あるいは信州?では、蕎麦はワサビでなく、大根、それも辛い大根が薬味に使われていたことがよく分かる。

確かにいつの頃からか、辛い大根から青首の水気のたっぷり含んだ大根が好まれるようになったのは確かだろう。

 

ところで本来、そばの薬味は、大根だったのだろうか、それともワサビだったのだろうか?

 

調べてみると江戸時代は辛味大根汁を使っていたらしいが、入手が困難になってその代用にワサビが使われるようになったらしい。

 

蕎麦の先祖返りを試すか、辛党には、ぜひこの薬味大根をお試しを・・。