●瀬戸内海の丸山島でカヌー 

その2から続く

四国の旅の4日目は、香川県の西の端に位置する燧灘(ひうちなだ)の海で、初めてカヌーを浮かべることになっている。

燧灘は、瀬戸内海のほぼ中央の凹の形をした海域で、その右端にナメクジの角のように突き出た半島がある。それが荘内半島で、その付け根あたりに「丸山島」という無人の小島がある。

島と言っても、干潮の時は陸地と地続きになるので、離島というわけでもない。

 

今回のカヌーツアーの目的のひとつは、ほんのわずかな距離だが、この島をカヌーで一周することにある。

実は昨年も、試みようと海辺まで来たのだが、風が強く諦めた経緯がある。

 

今朝の天気予報では、燧灘付近の風速は5メートルと、カヌーを出すにはちょっと強いと師匠は言うのだが、果たして今年はカヌーを出せるのだろうか。

 

カヌーのスタート地点は、大浜海水浴場の近くにある遠浅の海辺で、白砂が美しい景勝地。

この辺りの浜を”鴨ノ腰”といい、「日本の夕陽百選」に選ばれるほど夕陽がきれいだという。

 

燧灘の潮流は0.1~0.3mと、瀬戸内でもっとも緩やかな流れらしい。まさにカヌーを漕ぐには、もってこいのロケーションにある。

 

釣り好きのT氏が、かつてこの辺りでカヌーで釣りをしているときに、スナメリを見たという。

スナメリは、イルカの仲間で、生息域は海岸に近い水深50m以内の浅い海域という。

浜辺に11時頃着くと、風はピタリと止んで、願ってもない”なぎ”状態。

早速、出発の準備をして、30分後にはもう浜を出た。

                      T氏のシーカヤック

水平線の彼方にかすかに見える島影は、昨日渡った伊吹島に違いない。

海でカヌーを漕ぐのは、師匠とT氏以外初めての経験だが、真っ青に澄んだ海原に漕ぎ出す気分は爽快そのもの。川や湖では到底味わえない開放感がある。

しかも水は、清流と言われる河川より遥かに透明度が高く、船のそばを泳ぐ、黒い小さな魚影が手に取るように分かる。

岸辺を離れ、燧灘の海に漕ぎ出すと、海はさらにその藍色を増し、やがて空と海の境が判然としなくなる。
目指すは右手に、こんもりと盛り上がった丸山島だが、近づくにしたがって、岸辺が鋭く切り立っているのが見て取れる。

急峻な岸壁に細いロープが垂れさがっているのは、釣り人の非常用なのだろうか?

漕ぎ進むのがもったいないほど、周囲の景色が身体に沁みわるようで気持ちが良い。

釣り人が撒くコマセが、カヌーのそばまで漂ってくる。

Tさんが大声で「釣れますか?」と声をかけると、左右に大きく手を振ってくる。

狙うはチヌ(黒鯛)だろうか。

 

のんびり40分ほど漕いで、島の反対側の岸辺に下り、昼食をとることにした。

島を3/4周ほどすると、今まで隠れていた荘内半島の全貌が見渡せるようになる。

ひときわは高い半島の山並は、桜や瀬戸内の展望の景勝地として有名な紫雲出(しうんで)山だろうか。

 

この浜に松林はないが、島から見る光景はまさに”白砂青松”の世界。

この美しい海の色は、白砂ゆえの色彩だろう。

これだけの景色を眺めていると、この島が、浦島太郎伝説のある島だと頷けてくる。

この伝説が一体いつ頃から生まれたのかは不明だが、島の入口には実際「浦島神社」が祀られている。
浦島神社

こんにち伝えられている浦島太郎伝説が初めて書面で登場するのは、 8世紀初めに成立した日本書記に遡るらしい。しかも日本書記の中では、478年の記述の中にこの話が登場するというから、途方もなく古い民話になる。

それによると、舞台は丹波の国(京都の丹波郡)で、8世紀に書かれた丹後風土記にも詳しくこの民話が紹介されているという。

その真偽はともかく、浦島太郎の舞台は、京都やこの丸山島以外にも、全国数箇所あるとされるが、いずれもおとぎ話の世界だから、基本的に何処が名乗りを上げようと、勝手次第ということになる。

 

観光客目当てか、島の入口の堰堤に、浦島像が建っているのは、いかにも取っ手つけたようなで、何ともいただけない


しかし海の碧さといい、竜宮城へ誘ってくれそうな透き通るほどの海底といい、風光明媚なこの景観が、浦島太郎伝説を彷彿とさせる舞台環境であることは間違いない。

 

島の浜辺に潮干狩りをする家族がいる。

今日は中潮に当たるため、いつもより潮位が下がって、潮干狩りができるらしい。

われわれが島に上がったのは、昼食を摂る目的以外にも、「汐待ちの意味もある」と、師匠が言う。

 

瀬戸内の海が太平洋と大きく違うのは、潮の満ち引き(干潮)の差が大きいことにある。

 

とくに干潮差がもっとも大きのが、われわれがいるこの燧灘で、例えば四国のはずれの豊後水道や紀伊水道の平均干潮差が1m程度であるのに対し、燧灘では2倍の2mを超えるという。さらに大潮の時にはその倍の4m近くにも達することがあるそうだ。


われわれが船を下りたころは、まるで”十戒”の映画に出て来る回廊のシーンのように、陸と島が一筋の細い道で繋がっていたのだが、次第に潮が満ちて水位が上がって来た。

まるで海にできた回廊のような道筋

そこにバイクで来たらしい若者が島に近づいて来たので、潮が満ちて来たことを教えると、早々に引き上げて行った。

小一時間も島でのんびりしたので、カヌーで漕ぎ渡れるほど潮も満ちて来た。

再び乗艇して、スタート地点へのほんのひと漕ぎで着いた。

ほんのつかぬ間のカヌー体験だが、海ならでは醍醐味を十分堪能した。

ちょっと病みつきになりそうだ。

 

本日は浜辺でカヌーを天日乾かしてから、帰路、日帰り温泉で汗を流し、庭でBBQの予定。

その日も、家の裏庭から、昨日に増して、備讃の海に沈むすさまじい夕景を見た。



その4に続く
 

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