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●大室山・加入道山 2011年6月18日(土) 曇りのち雨

  神奈川県山北町

 大室山(1,588m)・加入道山(1,418m)

 <参考コースタイム>

 新松田駅→(バス1時間10分)西丹沢教室→(20分)用沢出合→(1時間10分)犬越路→(1時間25分)大室山山頂→(45分)加入道山山頂→(1時間15分)用沢出合→(20分)西丹沢教室

  参考歩行時間:5時間15分

  参考歩数:約30,000歩

 日帰り温泉:「弘法の湯」(鶴巻温泉)
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毎年、梅雨時期の山選びには頭を悩ませるところだが、今回も前日までスッタモンダした挙句、結局、第一候補の丹沢山系「大室山」と「加入道山(かにゅうどうざん)」に登ることにした。

天気予報では、午前中曇り、午後3時過ぎ頃から雨。

小雨はこの時期だから、もちろん織り込み済み。むしろ小雨程度なら、緑林に霧がかかって幻想的な山行が楽しめると”強気”だが、歩行時間が、ガイドブックによると6時間半弱の長丁場。しかもシロヤシオツツジの花期は終わり、行程のほとんどが視界がきかないという。

期待するのは、満開のウツギの花と、霧に霞んだ新緑のブナ林、バイケイソウの群生、あわよくば、霧の中から鹿が現われてくれれば、言うことはないのだが・・。


どんよりとした曇り空にもかかわらず、新松田駅7時20分発の西丹沢行きのバスは満員御礼の状態。高校生の登山部員らしき若者が、吊革につかまって器用に居眠りをしている。

終点でドッと登山客が降車したが、大室山に向かうのは相棒と二人だけのさびしいスタート。



歩き始めてすぐ小雨が降りだして来た。

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日本には、雨の名前が200以上(『雨の名前』高橋順子著)あるそうだが、本日の雨は、「糸雨」とか、「毛雨」の名にふさわしい。糸雨の読み方として、”いとあめ”より、”いとさめ”、”しう”の方が風情がある。

細かな雨を指す、沙雨(さう)という言葉もあり、漢詩で”水煙沙雨”と使うらしい。山中に煙る様は確かに、水煙と呼ぶにふさわしい。

この本によると、梅雨時期の雨の降り方に、「女梅雨」があるという。しとしとと長く降り続く型の梅雨で、“一時代前のしとやかな女性のイメージ”と、但し書きがある。”一時代前”と、わざわざ断っているいうのが可笑しい。
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道路や山道のわきに、期待通り、白いウツギの花が咲き誇っている。

漢字で「空木」と書くのは、幹や枝が中空なので名付けられたとか。

ウツギは、小学生唱歌に出てくる「夏は来ぬ」に出てくる”卯の花”のことだが、最近では垣根がなくなったせいか、都会ではめっきり見かけなくなった。

歌詞の中に”ホトトギス、はやも来、鳴きて”とあるから、平地では、春もまだ浅いj時期から咲き始めるのだろう。

そういえば、「雨の名前」の本に、「卯の花腐(くた)し)という言葉が出てくる。

陰暦4月は卯月。春雨と梅雨の中間頃で、その頃降り続ける長雨を指す。卯の花を散らす雨でもあるので、「卯の花降(くだ)し」とも呼び、季語にもなっているという。

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満開のウツギの花

用木沢出合までは舗装された林道で、登山道入口に5~6台の駐車スペースがある。バス停から20分ほどの距離を歩かず、ここまでマイカーで来る人が多いようだ。

ここからが本格的な登山道。

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用木沢から1時間10分ほどで、犬越路(いぬこえじ)の分岐に着。

ここで、丹沢主稜線の檜洞丸からの道に合流する。

その名は、武田信玄が小田原攻めのときに、犬に先導させてこの峠を越えたのが由来とか。大室山を越えればもう山梨県になる。



犬越路までの道は、東海道自然歩道とは名ばかりの“歩道”で、どうしてなかなか手ごわい急坂。雨具の内側は汗でびっしょり濡れている。

ここに避難小屋があり、雨脚が早くなったので小屋内で休憩することにした。

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犬越路の峠                          避難小屋
避難小屋は、清潔で明るい。

背中からモウモウと湯気が立上って、身体が冷えてきたので、乾いた下着に着替えることにした。 室内の温度計を見ると16℃、寒いわけである。

来る途中、今日初めて単独行の女性に行き会ったが、どうやらこの雨で避難小屋から引き返したようだ。小屋に入る前、もう一人の単独行の登山者とすれ違ったので、本日の登山者はほんの数えるばかり。



20分ほど小屋で休憩し、大室山目指して出発。

小屋前から急な登り坂だが、1,168mの無名の山頂に着くと、あとはしばらく、なだらかな稜線歩きになる。
今日初めて、山ツツジをを見る。
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依然、糸雨は降り続いているが、樹木に覆われているのでほとんど気にならない。

むしろ紅葉やカヤ、ブナの疎林が淡く煙り、西側斜面もひらけて明るいので、歩いていても気分が良い。

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山頂へは、なだらかな稜線やアップダウンを繰り返すので、登り一途に比べれば、変化があって楽しめる。
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山頂への途中、本日の山行で、まったく予期せぬ花木を何本も見ることになった。

それも色鮮やかな満開の花で、花弁が地面に散っている様が、まるで絵に書いたような風情がある。

その花とは、トウゴクミツバツツジで、ミツバツツジより、やや標高のある山地に自生し、花と葉がほぼ同時に開くという。トウゴクとは、漢字で東国と書き、本州中部以北で見られる。

山   写真 温泉  地面に散った花弁を見ると、いま落ちたばかりのように、色鮮やかで瑞々しい。

霧に包まれた樹木と、この鮮やかな花弁の取り合わせは、天の配在と言うしかない。

こんな幽玄な景色の中に、ふいに鹿が現われてくれないものか!

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いつまでも写真を撮っているわけにもゆかず、山頂への道を辿ったが、その後、何本ものトウゴクミツバツツジを見ることになる。
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ツツジの花木が途切れるころ、今度はバイケイソウの群落になる。

花期にはまだ早いが、大きな青葉が美しい。
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ずいぶん写真を撮るのに時間を費やしてしまったが、ガイドブックのほぼ時間通り、犬越路避難小屋から1時間20分ほどで大室山直下のベンチに着いた。

ベンチのある場所は、次に向かう加入道山への道筋にあるので、ここにザックを置き、大室山(1,588m)の山頂まで空身で往復することにした。山頂まではわずか5分ほどで、山頂からの景観も得られない。 
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                             大室山山頂

大室山は、もともと大群山と言った。ちょっと古い山の本には、大群山と書いてある。

山頂はちょうど神奈川県と山梨県の県境にあり、この山は山梨百名山のひとつにも挙げられている。
山   写真 温泉 相棒撮影

山頂直下のベンチに戻り、時計を見るとちょうど12時。ここまで休憩時間を入れても、バス停から3時間10分だから、良いペースで登ってきたことになる。


ベンチに座り、のんびり昼食を摂るのは、この上ない贅沢。

霧の中から、ホトトギスののどかな鳴き声が聞こえてくる。

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本日は、アップダウンのきつい健脚コースということもあって、バーナーも、果物も重いものはすべてザックから出してしまったので、駅前で買った弁当で簡単な昼食。

こんなロケーションならせめて、コーヒでも淹れたいところ・・。

結局、50分ほどで昼食を切り上げ、次なる加入道山へ向かうことにした。
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山頂の直下に、バイケイソウの群落があるので、丁寧に木道が敷かれている。

加入道山への道は、なだらかな鞍部もあるが、ところどころきついアップダウンがあるので、徐々にふくらはぎや太ももにダメージを与えることになる。

しかしブナの大木や楓の木々の広葉樹に覆われ、この山が紅葉の時期に適しているのが良くわかる。

しかも大室山から加入道山へは、ガイドブックには1時間10分程度とあるが、実際には50分弱しかかからなかったのは意外でもある。

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加入道山(1,418m)山頂も、やはり展望は効かないが、疎林の中なので、それなりの明るさがある。

山   写真 温泉 加入道山山頂
この山頂に立てば、あとはもう下り一方だが、この先は長くて、鎖を使う急な下り坂が待っているので侮れない。

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下山途中、大理石の白石ノ大滝がある。木々が邪魔をして全貌は見えないが、垂直に落下する滝は壮観で、迫力がある。

山   写真 温泉 白石ノ大滝
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大滝から、ザレ沢に沿い、白石沢に合流して、ようやく朝通った用沢の出合いに着いた。加入道山の山頂から、1時間15分。

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西丹沢教室のバスに戻って、小屋でたまらず缶ビールを買ってひとまず乾杯。

高低差のある山道を、久しぶりに30,000歩歩くのはやはりキツイのは確か。


本日は、小田急線の鶴巻温泉に寄って、冷えたからだを温めることになる。

日帰り温泉:弘法の里