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●気田川 春

  浜松市天竜区 2011年5月3日~5日(2泊3日)
山   写真 温泉 気田(けた)川は、赤石山脈の黒法師岳を源流とする一級河川で、天竜区の小川で天竜川に合流して一気に大河になる。

水が驚くほど透き通り、幾重にも川が蛇行して変化に富んだコースが楽しめるので、いまやカヌーイストのメッカ。野田知佑も、「本州では5本の指に入る銘川」と太鼓判を押す。

6月からこの川にアユ釣り師が入るので、新緑と藤の花が美しいGWが最もふさわしい、と師匠のご託宣。

だがGWとあって、東名高速の大渋滞にはまって、秦野ICから袋井ICまでの所要時間は通常の2倍近い4時間半。途中、昼食を摂り、食糧の買い出しを済ませて秋葉キャンプ場(春野 )に着いたのは、すでに4時近い。

さぞカヌーイストのテントで混雑していると思いきや、閑散としているのは意外でもある。
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早速、師匠が川の流れを偵察に行くと、これも予想以上に水量があるという。この川を何度も下っている師匠いわく、「一番水量があって、流れが速い」、と何やら嬉しそう。

どうやら雪解けの冷たい水に”、沈”は免れそうにない。

今回の参加メンバーは、いつもの男性3名、女性2名の計5名だが、過去、師匠を除いたほぼ全員(3年前に参加の小生は奇跡的セーフ)が、“沈”の憂き目にあっているので仕方がない。

テントを設営後、近場の温泉(なんと入浴料100円)に浸かって、夕暮れから前途を祝して、焼き肉と焚火の宴会。

予想通り深夜、運転手を務めた師匠とTさんの轟音に悶々として、早朝5時前には起床して、一人朝の散歩に・・。

まずは、キャンプ場から歩いて10分ほどの秋葉神社下社に参詣することにした。

下社の上にある秋葉大社は、「あきは」と呼び、火防の神社として全国に400社ある、正一位の格式ある総本社。神田の「秋葉原」の地名は、この秋葉の神社の原っぱから転じたという。

江戸末期から明治時代にかけて、この山深い神社に大勢の参詣人が絶えなかったそうだ。

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秋葉神社下社の道を西方に向かうと、浜松から南北にのびる152号線にぶつかる。この152号線は、秋葉街道もしくは信州街道とも言われ、途中、静岡と岐阜の県境辺りで道が分かれ、飯田と諏訪方面に通じている。縄文時代から人煙が絶えず、古くから塩を運んでいたので「塩の道」とも呼ばれている。ちょうど中央構造線に沿った道のせいか、崩落した個所がいくつもある。

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30分ほど歩いていると、空が明るくなって、山や畑や畦道の新緑が眩いばかり。

野田知佑が、川の生活は日の出から2時間から3時間が一番良く、次が10時頃までと言っている。身の引き締まる朝の冷気と、鳥のさえずり以外に音のない、静まりかえった佇まいが、たまらなく良い。ましてやこの辺りには、人家がほとんどない過疎の集落。
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キャンプ場に帰って、朝食を済ませてから、コーヒーを淹れ、川を眺めながら一服するのがこの上ない至福のとき。

それからフネを組立て、ゴール地点に車を置かなければならないので、同乗することにした。
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師匠は、途中、車を降りて、本日下るコースの危険個所をチェック。流れも速いが、水量が多いせいか、ところどころ従来とは違うコースを選ばなければならないようだ。


気田川は、大きく湾曲している瀬が多いので、コースを間違うと、傍流に巻き込まれて岩に張り付き脱け出せなくなる。

遠目にも、波立つ白い瀬がハッキリと分る。山   写真 温泉

それにしてもエメラルドグリーンの静流と、濃緑に染まった木々の景観が美しい。

川岸まで山が迫って、谷が深い。

この地方では、「崖」のことを「ケタ」といい、気多村や気田川の名がその由来という。

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まだ朝が早いせいか、フネを漕ぐ人もいない。

ひと気のない、この新緑に囲まれた川を下るのかと思うと、童心に帰ったように嬉しくなってくる。

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キャンプ地で出発の準備をしていると、目の前を数艇のカヌーが持ち良さそうに通り過ぎて行く。皆、手を挙げて挨拶して行くので、見ている方も気分が良い。
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予定よりだいぶ遅くなったが、11時15分、キャンプ地の前から乗艇し、いよいよ約20キロ近くのツアー開始。


やはり流れが早いので、カメラを出す余裕がない。

やっと10分ほど下ったところの瀞場で、カメラを出す。
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スタート地点からの5~6キロは、さして大きな瀬もなく快適なフネ漕ぎ。

家族連れのダッキー艇やロデオ艇が行き交い、「気持ちいいっすね」と喚声をあげながら、下流にどんどんと流されて行く。みな満足そう。

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「行く春の うしろを見せる 藤の花」(一茶)。

春の名残を象徴する満開のフジが、切り立つ岸にぶら下がって見ものだが、徐々に川が蛇行しはじめて、のんびり景色を眺める余裕がない。

30分ほど下って、やっとひと休み。
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本日のコースには4つほど注意するポイントがある。

ひとつ目は、右に大きくカーブを切る瀬で、左に寄りすぎると流れに押されて大きな岩に激突する。

案の定、このカーブを切るタイミングが遅くて左肩が岩に当ったが、辛うじてこらえて無事通過。
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一時間近く漕いで、昼食のためフネを岸に上げた。

川底が見えるが、やはり少し濁っているようで透明度はいつもより低いようだ。

昼食は、朝炊いたご飯で作った大きな握り飯と缶詰、味噌汁の予定だったが、湯を沸かす肝心のコッフェルを忘れてしまった。

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30分ほど休憩して、次のポイントに・・。

二つ目のポイントは、左側の流れに竹が覆いかぶさっているので、右側の流れに乗らなければならないが、どうしても流れが早く、左側の瀬の方に流されてしまう。

必死に漕ぎ出していたら、後ろにいたKさんの頭にパドルが当たって、その拍子に川に落ちたそうだが、全く自覚がない。
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途中、今日一番の大波を食らって、したたか水をかぶったが、スリルがあってむしろ爽快な気分。カヌーは、横波には弱いが、縦波はほとんど問題なく上滑りしてくれるので安定感がある。

山   写真 温泉 竹やぶ山   写真 温泉 向こうの瀬が危険

ここまで”沈”をしないのは不思議だが、三つ目のポイントは流れが速い上に、左にほぼ直角に曲がらなければならないので油断は禁物。

師匠に続いてKさんが無事通過するのを見届けて流れに乗ったが、やはり左に切るタイミングが遅すぎて、岸壁目がけて突進。右肩が岸壁に当たってバランスを崩したが、なぜかここも奇跡的に通過してしまった。
この瀬で、しんがりを務めるTさんが珍しく岸壁に突っ込んで、あえなく“沈”。はじめて水に浮かぶ姿を見た。

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ここで皆、岸に上がってひと休み。

あと一つ関門を越えればゴールも間近だ。

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最後の関門は、右にカーブを描きながら、連続する荒波を超えて行く。

かなり流れが速いが、ここもなんとかクリアして、スタートから4時間後に全員無事ゴールに到着した。
いままでで一番緊張したコースだが、その分充実感もある。
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山   写真 温泉 ゴール地点

ゴール地点の到着時間は3時半ころか?

搬送用の車を待って、一路キャンプ場へ。

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テントで乾いた衣類に着替えて、昨日浸かった温泉でひと風呂浴び、今晩の食糧とアルコール類の買い出しにスーパーへ。スーパーと言っても、コンビニほどの小さな店で、野菜や肉類、酒や日用品が供えてある。

夕食は、身体を温めようと豚汁の予定が、豚肉がないので、急きょ「鳥汁」に変更。加えてしょうが汁のうどん、etc・・・・。

この日は、最後のキャンプなので、テント前で盛大に焚火。メンバーは、縄文時代の遺伝子が濃厚に残っているせいか、あちこちから枯れ枝や倒木を拾い集めて、焚火に際限がない。駐車場の杭まで持ち込む始末。

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翌朝も5時頃起き出して、春野の小さな集落を散歩。集落の出口に秋葉神社ゆかりの常夜灯がある。
山   写真 温泉  山   写真 温泉
朝食は、七輪でパンを焼き、サラダ、茹で卵、昨日の残りの鳥汁、etc。

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山   写真 温泉
本日は、犬居の集落に寄り、奥深い山中を東進して、お茶どころ「川根」に寄ってから、まっすぐ南下して東名高速に入る予定。

途中、犬居集落でも古い、明治10年創業の割烹旅館「松本屋」に寄ってみた(見ただけ)。

この集落は、以前秋葉神社の参詣客で賑わったそうだが、30年前に秋葉本社への車道が開通したため、30軒あった旅館がいまや2軒しか残っていないそうだ。

山   写真 温泉  昔の旅館模型?
犬居から362号線で、遠州森の石松の出身地「森町」を経て、川根本町へ。362号線を北上すると、寸又峡に出る。
 

山   写真 温泉  山   写真 温泉

川根の山中に差し掛かると、淡い緑に彩られた茶畑が一面に広がる、五月にふさわしい景観。

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このあと、大混雑する「川根の道の駅」付近で昼食を摂り、渋滞の東名高速に乗って、帰路に着いた。

師匠、Tさん運転お疲れさまでした。