●高松山

 神奈川県 高松山(801m)  曇り

 2010年4月4日(日)

<参考コースタイム>

山北駅(御殿場線)・・・(20分)高松山入口→(60分)分校分岐→(20分)分校往復→(30分)尺里峠→(30分)高松山山頂→(20分)ビリ堂→(30分)農道終点→(30分)高松山入口→(20分)山北駅

 参考歩行時間:4時間20分(駅から往復歩いた場合) 

 立ち寄り湯:さくらの湯
山   写真 温泉

4月は、やはり満開の桜を眺めながらの山登り、帰りに花冷えする身体をゆっくり温泉に浸かって温めたい。


 

丹沢山地の最南端に位置する高松山は、標高わずか800mの低山。しかも登山道の半分は舗装道路のコースだが、道々、桜並木や季節の花々の咲く、懐かしい里山の風情をとどめているという。

出発地点の御殿場線山北駅付近は、知る人ぞ知る桜の名所。

登るなら、4月の初旬をおいて他にない。・・というわけで、前回の登山から2週間の間隔だが、4月4日に花見登山を決行することになった。

予定ではまだひと気のない早朝7:30分に山北駅に集合し、高松山入口まで歩く予定だったのだが、当日は不覚(寝坊)にも大遅刻。相棒は予定通り徒歩で、こちらは新松田駅からバスで高松山入口に向かうことにした。

山   写真 温泉
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登山口からのスタートは8時30分。車やひとの往来のない尺里川沿いの道を、菜の花や桜、スミレの花を眺めながらのんびりと歩き始める。

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歩き始めて間もないころ、菜の花の咲く道ばたに、関東では珍しい双体道祖神がある。視界の中にはひときわ目立つ、鮮やかなしだれ桜が今が盛りと咲き誇っている。山北にはこのほか沢山の道祖神があり、1月には道祖神祭りも開かれるという。

すぐ脇には東名高速が走っている場所とは思えない里の風景に、心浮き立つ気分。この先一体何が待ち受けているのだろうか?
山   写真 温泉
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20分ほど歩くと徐々に人家が絶え、緩やかな登りに差し掛かる頃になって、ボチボチと桜の木が目につくようになった。

この辺りの桜は、枝ぶり豊かな桜と違って、高々とやせ細った幹に淡い花が咲いている。決して見事な桜並木とは言えないが、素朴な山道の風情と相まって、それはそれで好ましい風景。

何といっても、ウグイスのさえずり以外物音の聞こえない、のどかな春の山間の景色が心に染みわたるよう。
山   写真 温泉  
山   写真 温泉

ほとんど登山者も車も通らないこの道を、突然3台のタクシーが走り抜けて行った。乗客はおそらく登山者だろうが、薄くもやのかかった箱根の山なみを背に、桜咲くこの道を散策気分で歩かないのは何とももったいない。
山   写真 温泉
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                   4段20mの「やまゆりノ滝」

山   写真 温泉  
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今日は晴れのち曇りの予報だが、朝からはっきりしない曇り空。だが、これがこの季節特有の花曇りの日和ということだろうか。山   写真 温泉 

長く、緩やかなつづら折りの山道を、汗をかくこともなく1時間ほど歩いて、高松分校への分岐に着。登山道は、ここを左折するのだが、我々はこの分校に立ち寄ることにした。
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分校へ分岐

途中、ほとんど人家らしいものはなかったのだが、急に人家が増えてきたので、高松集落に来たようだ。ここの標高は500mはあろうか、バスの行き来もない、下界と隔絶したような山間の集落。

分校までは、わずかの10分の距離。

予想通り分校は、校庭の隅に桜が咲く、懐かしい木造平屋建ての校舎。あまりに小さく、こじんまりしているのでちょっと驚いたが、生徒数が数人の分校ならそれもうなづける。

山   写真 温泉  
山   写真 温泉  
登山口からちょうど1時間ほど歩いているので、校舎前を借りて小休止することにした。

校舎の前には、水仙やムスカリ、チューリップなどが咲く、ささやかな花壇がある。満開の白モクレンの木に、生徒の名前を記した巣箱が掛けられている。子供のいない校庭は、少し寂しくて、のどかな風景そのもの。

山   写真 温泉
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何気なく校舎の裏を覗いてみると、小さな小屋があり、その中に何と黒ウサギ2羽いるではないか? よく見ると下駄箱あたりもよく手入れされている。

相棒も校舎に懸っている時計をみて、「時間が正確なので現役の校舎」だと、まるで探偵のような推理をする。
先入観として、この分校はすでにずいぶん前に廃校になったとばかり思い込んでいたのだが、それはどうやら間違いのようだ。

今でも小学生が通っている、現役の分校とはなんと感動的!


 

道々、鶯やキビタス、ルリビタキなど鳥の絵のポスターがあり、それを楽しんできたのだが、どうやらここの小学生が描いたようだ。


 

帰ってからこの分校のことが気になったので、調べるてみると、なんと、今年創立50周年を迎えたこの分校は、今年ついに廃校になったばかりというニュース。閉校式はわずか数週間前の出来事。

神奈川県では唯一の山の分校が消えることになる。50年前には15人いた在校生が、最後は小学3年生が2人になり、今年は新入生も迎えられなかったそうだ。

せめて、この昭和の文化遺産ともいうべき校舎だけでも保存できないものか。
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昔懐かしい木造の校舎を見たせいで、感傷にふけって長居をしたようだ。校庭を出ると、突然、拡声器から大きなチャイムが鳴って10時を告げている。

来た道を引き返し、分岐から少し歩くとさらに見晴らしが良くなった。これから初夏にかけて周囲の山々は新緑に染まり、ヤマツツジが咲く頃には、また違った景観を見せてくれるのだろう。

山   写真 温泉  
山   写真 温泉

山   写真 温泉  
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高度を少しずつ稼いでしばらく歩くと、今度は洒落たカナディアン風ロッジの家がある。庭に大きな桜があり、反対側の窓辺からは、遠く春霞のかかった山々が見渡せるのだろう。

山   写真 温泉

山   写真 温泉 

 分校のある集落
分岐から30分で尺里(ひさり)峠に着。

ここで舗装道路が終わり、ようやく本格的な山道になる。急坂を登りつめると、やがて緩やかな尾根道の出て、仕上げは階段状の急坂をひと踏ん張り。ガイドブックでは山頂までは45分とあるが、ペースよく歩いたせいで、わずか30分で高松山に着いた。

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かなり広い山頂には、50人近くの登山者が3つくらいの大きなグループに分かれて昼食を摂っている。時計を見るとちょうど11時。少し早いが、今朝は遅刻したとはいえ6時には家を出ているので、ここで昼食を摂ることにした。
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残念ながら、霞がかかって視界はほとんどきかないが、高松山は晴れていれば富士山や金時山、先月登った明神ケ岳などの箱根外輪山、小田原の市街も見渡せるという。

本日は、握り飯にお湯を沸かし、熱いみそ汁。相棒はパンに牛乳と熱いコーヒー、それにワインを持ってきたので、ピクニック気分でちょいと乾杯。

しかし今日はここまで、ほとんど登山者と行き会うこともなかったのだが、山頂のこの賑わいはどうだろう。すべて山北駅から我々の下山コースであるビリ堂から登ったのか、あるいは、桜並木のある竜王寺からの登山道を使ったのだろうか?そちらのコースが登りのスタンダードな道なのか?
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山頂で50分ほどのんびりして、一路、桜の名所、山北の駅に向かって下山を開始。いきなり急坂が続き、この道の登りの辛さが痛感させられる。

20分ほど下ると、傾斜が緩くなり、ビリ堂という石仏のある地点に着いた。傍らにその名前の由来が書いてある。それによるとビリ堂とは、一番最後の観音堂に由来するとのこと。今では寂しげに石仏が2つ取り残されたように佇んでいるが、昔はここにお堂が建てられていたのだろう。石仏の建立は文化10年(1813年)とある。歌碑には「朝日はや ビリ堂の観世音 庭の千草も 花となるらん」と刻まれているという。

興味あるのは、観音様の頭上に狛犬かキツネか判然としない動物(ムーミンに似ている)が彫られていること。珍しい形の石仏だが、これは狛犬かキツネ信仰の由縁か?

山   写真 温泉  
山頂からビリ堂まで20分、さらに30分ほど緩やかな道を下ると、収穫の終わったミカン畑の向こうに、うっすらと相模湾が見えてきた。天気が良ければ伊豆半島も見渡せるという。東名高速は目障りだが、それさえなければ、のどかな景色といってもよい。

山   写真 温泉  
山   写真 温泉

山頂から一気に下ってきたので、わずか50分ほどで、今朝の登山コースとの分岐に着いた。

山   写真 温泉  

帰りはバスには乗らず、そのまま山北駅まで歩き通すのだが、途中、菜の花が咲き乱れる川沿いに、大きなしだれ桜が遠望できる場所に出た。間近に、菜の花とのコントラストが美しい、満開の桜を見てみることにした。
山   写真 温泉
山   写真 温泉
山   写真 温泉  
いよいよゴールの山北駅に近づいてきたが、今回の山旅には山北駅の線路沿いの桜並木を鑑賞する目的もある。

それに山北町を訪れるのはこれで3度目になるが、なぜか心ひかれる町で、この町並みをゆっくり歩いてみたいという思いもある。


 

帰りはもちろん、駅裏の「さくらの湯 」に浸かることになっている。

湯上がりは、駅横のそば屋で生ビールと日本酒1合で、本日はおつもり。珍しく本日は夕方4時前には、はや帰宅の途に着いた。

 

番外編山北の町へ続く