●三頭山 快晴

  東京都 三頭(みとう)山(1531m) 2009年11月15日(日)

 

<参考コースタイム>

  JR武蔵五日市駅→(バス約1時間10分)→(20分)三頭大滝→(1時間25分)東峰→(5分)中央峰→(10分)西峰→(50分)ヌカザス山頂→(40分)→イヨ山→(30分)道路出会い→(25分)小河内神社バス停→奥多摩駅

 参考歩行時間:4時間15分
         山   写真 温泉

今年は、夏の名残がいつまでも尾を引き、台風が通り過ると、山はいつの間にか紅葉の季節が終わり、すでに晩秋を迎えていた。

 

三頭山は、奥多摩湖のほぼ真南に位置し、大岳山、御前山を結ぶ奥多摩三山主脈の最高峰。

武蔵五日市からバスの終着点都民の森から山頂までは、標高1500mの山にしては、山頂までほぼ1時間半ほどで登れる手軽さもあって、老若男女に人気の山という。

 

東京の山では珍しいブナの自然林が保護されているこの山は、ブナの葉が生い茂る新緑や紅葉の季節が登山の適期。

しかし11月中旬ともなれば、すでに広葉樹の葉は落ち、山は枯れ野の様相だが、三頭山から北側の奥多摩湖畔に下れば、「紅葉はいまが見ごろ」、に期待することにした。

 

登山者のほとんどが、スタート地点から山頂を周遊するコースを選ぶのだが、わざわざ反対側の奥多摩湖畔に下るのは、紅葉を見るのもひとつの理由だが、実は湖畔にかかる浮橋を渡ってみたいという、ささやかな願望もある。

おまけに今日は、年に数度という折り紙つきの快晴。浮き橋から見渡す湖畔の紅葉はさぞ絶景だろう。

山   写真 温泉 山   写真 温泉
相棒とJR武蔵五日市駅で待ち合わせバス停に並ぶ頃には、すでに登山客で大賑わい。都民の森行きの8時20分発のバスは、さすがに1台では足りず、臨時バスを用意したが、それでもあぶれる人がいるようだ。
予想通り、終着点の乗降広場は、登山客で溢れ、トイレは長蛇の列。仮設テントでは、地元の野菜や櫛だんごを売っているのは、他の登山拠点とは異なる光景。

幼児の頭ほどの大きな聖護院大根は、さすがに山頂まで運ぶ気力はないが、柚子2つくらいならと思って金110円也で購入。

山   写真 温泉

本日の登りコースは、三頭大滝を経て、野鳥観察小屋を通って山頂を目指す。この山は色々な登り口があるが、多くは鞘口峠を経て、見晴らしの良い尾根筋から山頂を目指すのだが、われわれは少し距離は長いがブナの林を通るコースを選択した。
山   写真 温泉 山   写真 温泉

大滝までは、ふかふかのチップを敷き詰めた歩くやすい歩道が続き、紅葉の名残を愉しみながら、平坦な山道をノンビリと歩く。

どこから来るのか、唐松の黄色く染まった糸のような細かな葉が頭上に舞ってきた。

三頭大滝までは、わずか20分の距離。
山   写真 温泉
山   写真 温泉山   写真 温泉
見晴小屋

大滝から見晴らし小屋までは本格的な登りで、予想以上に大汗をかいた。途中の尾根筋からは、御前山、大岳山、御岳山の山頂と稜線がくっきりと見渡せる。一箇所だけだが、樹木の間から本日初めて富士山が垣間見えた。

われわれは当初、この小屋が頂上直下の展望台と勘違いをして、そのあまりに短い山行に半ば気落ちしたが、それは早計で、山頂まではまだ40分あまりの距離を残している。そうそう楽なコースでもない。
山   写真 温泉

山   写真 温泉
山   写真 温泉 山   写真 温泉
                    御前山、大岳山、御岳山
展望台からはブナに囲まれた緩急のある尾根道なので、さほど苦労することなく三頭山の一角の東峰の山頂にたどり着いた。

東峰の山頂は、一休みするには狭いので、休まず5分ほどの距離にある中央峰に向かうことにした。

ここでハッと気がついたのだが、三頭山の謂れは三つの山頂からなることをウッカリ忘れていた。「東峰」、「中央峰」、そして「西峰」の3つの山頂が三頭山を形成しているのだが、その間はわずか5~10分ほどの距離しかない。

その中で「中央峰」が、3山で一番の標高を持つ。山頂も東峰より広く、大きな木のベンチとテーブルが備えてある。

東の方角を見ると、新宿辺りのビル群も遠望することができる(ということは、晴れた日なら高層ビルの高所からもこの三頭山も見えることになる)。

時計をみると12時少し前。バス停からここまで1時間40分が経っている。見晴らしはさほど良くないが、ここで昼食を摂ることにした。
山   写真 温泉 中央峰の山頂
三頭山は、3つの山頂(頭)から名づけられたと、これほど分かりやすい由来はないと思っていたのだが、後で調べてみるとこれは大きな間違いで、意外にも「御堂」がこの山の由来であるという。

山の神を祭った御堂(みどう)が3つあり、「御堂山」がいつのまにか「三頭山(みとう)」に変化していたという。

確かに、中央峰の真下に、今でも御堂峠の名が残されている。

中央峰で40分ほど休み、御堂峠に下ると、西峰への道標がある。

このまま奥多摩湖に下っても良いが、どうせなら西峰にも寄って行こうと、軽い気持ちで登ってみて驚いた。
山   写真 温泉 西峰の山頂
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西峰の山頂は広く、大勢の登山客で溢れている。それにこの山頂の眺望が素晴しい。富士山はもちろんのこと、丹沢山系から御前山、御岳山など奥多摩の主峰がすべて見渡せる。

東峰や中央峰より遥かに三頭山の山頂にふさわしいロケーションだ。危うく西峰をやり過ごす愚をおかすところだった。
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山   写真 温泉
さて、下りである。今日のゴール地点である小河内神社バス停の標高は500mちょっとだから、その落差は1000m近くもある。相当な急坂を覚悟しなければならない。

そのせいか、このコースを下る人も、登る人の数も極端に少なくなる。

ガイドブックによると、山頂からヌカザス山まで50分、さらにイヨ山まで50分、そして小河内神社バス停までは50分で、併せて2時間30分の所要時間。下りもきついが、登りの急途はさぞ辛いだろう。

山頂からすぐに急坂となり、やがて前方右側の方角の樹間から、奥多摩湖畔の一端が見えてきた。

予想通り、湖畔に沿ってわずかな範囲だが紅葉の森がみえる。山   写真 温泉
山   写真 温泉

この辺りから、ブナ林の大木が目につくようになった。

ブナの木は木材に適さないため、多くが伐採され、杉や檜の植林化が進んでしまったが、この辺りにはまだ相当なブナの自然林が残されているという。

樹齢200年のブナ1本で、約8万トンの保水力があるというから、ブナ林はちょっとした貯水湖に匹敵する道理。
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山   写真 温泉
つま先が痛くなるような急坂が続き、場所によってはロープにつかまらなくてはならない箇所もある。

下りは、のぼりと違ってちょっとした油断が大怪我の原因になるので、ヌカザス尾根の下りは、精神的な緊張が強いられる。

山   写真 温泉

ガイドブックの時間表示どおり、ヌカザス山頂までは50分。

徐々に湖畔が近づくに従って紅葉が目に付くようになったが、周囲の景色を眺める余裕はあまりない。
山   写真 温泉
山   写真 温泉

山頂から1時間半ほど下った頃、いよいよ奥多摩湖畔が眼前に迫ってきた。この辺りにはまだ真っ赤に染まった紅葉がある。
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山   写真 温泉
山頂から2時間ほどでようやく、奥多摩周遊道路に出た。目の前に待望の浮き橋が見えるが、随分と迂回しないと降り口に出られないのは、なんとももどかしい。

予想通り、湖から切り立つような山の裾野は、みごとな紅葉に染まっている。ゆっくり写真を撮りたいのだが、残念ながらバスの時刻が迫っている。

山   写真 温泉
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山   写真 温泉

この麦山の浮き橋は、人工の奥多摩湖が出き、南北の村が分断されたために架けられたもの。昔はドラム缶を繫いでいたので、ドラム缶橋ともいわれていたが、今は樹脂製のタンクに変わっているという。
山   写真 温泉

遠く山裾に、ひときわ目を惹く黄色の深山橋の姿が美しい。

奥多摩の秋の長閑な山里風景は、胸に染みるよう。
山   写真 温泉
山   写真 温泉
山   写真 温泉
バス停に着いたのは、バスの発車時刻の15分ほど前。近くの小河内神社は、国指定文化財の「鹿島踊り」が有名。奥多摩には全国でも数少ない古来からの芸能が保存されているので、いつか訪れてみたいところ。

 

湖畔に影を落とすクヌギの大木から、黄色く染まった大きな葉が、秋風に乗って湖に舞っている。
山   写真 温泉
あちこちから登山者や観光客が集まってきたが、到底バス1台では乗り切れない。

それを見越して、臨時バスが何本か出たようだが、それでも道々のバス停に止まるたびに、これでもかというほど乗客を押し詰める。1時間ほどで満員のバスに揺られ(といってもわれわれは座れたが)ようやく奥多摩駅に着。

奥多摩では、いつもはさわらびの湯に浸かるのだが、今日はあまりに人出が多いので、温泉も大混雑だろうと今回はやむなく断念。

湯上りとはいかないが、もちろん登山後のビールは、駅前食堂で一杯が恒例の行事?

この店は、時に満員札止め?か、時間切れ閉店?になる危険性があるので、バスの中からはや気がせいてしかたがない。

温泉もダメ、食堂で一杯もダメともなれば、登山の楽しみも半減。

バスの中から見ると、店頭に何か紙が置いてあり不吉な予感だが、先客が店に入っていったのでひと安心。

まずは良く冷えたビールで乾杯。舞茸のから揚げを注文し、続いてビールと澤乃井のお燗をもう1本。

ゆっくり腰を落ち着けて飲みたいのは山々だが、電車の時刻も迫っている。

店先の売店で、やはり澤乃井のワンカップと、柚子コンニャクなどいくつか土産ものを買って、奥多摩駅にぶらぶらと。

秋の奥多摩の夕暮れが、駅のホームに迫ってきた。

山   写真 温泉
本日の登山歩数は20000歩弱といったところか。