●甲斐駒ヶ岳 晴れ 

  山梨県 甲斐駒ヶ岳(2967m) 2009年9月20日~21日

 

 

  <参考コースタイム>

 

  20日 甲府駅→(バス2時間)広河原→(バス25分)北沢峠→(10分)北沢駒仙小屋(伯)

  21日  テント場→(50分)仙水峠(1時間10分)駒津峰→(1時間25分)駒ヶ岳山頂→(1時間)駒津峰→(30分)双児山→(1時間5分)北沢峠(泊)

  歩行参考時間:6時間(所要時間7時間50分)
山   写真 温泉
重いテントを背負わずに、3000m級の山を2座登ることが出来るベースキャンプ地がある。
それが、南アルプスの玄関口、北沢峠。

ここを拠点に、1日目は甲斐駒ヶ岳、翌日は千丈ヶ岳を空身同然の軽装で往復できるのは、願ってもないロケーション。

 

シルバーウイークの2日目の日曜日、相棒と朝9時30分に甲府駅で待ち合わせ、10時発の広河原行きのバスに乗車。

バスを待つ間、相棒が駅前をせわしく走り回っているのは、どうやらしこたまアルコール類を仕入れているようだ。

ベースキャンプ地の北沢峠は、伊那市(長野県)と南アルプス市(山梨県)を繫ぐ、南アルプススーパー林道の中間地点(両方からの終点)。

標高2000mのこの峠に至るには、途中、北岳の入口、広河原で一度バスを降り、そこから市営バスに乗り変えて、終点の北沢峠に向かう。

一般車両の交通は遮断しているので、通るのは工事車両と登山バスのみ。

深さ400mもある険しい谷を横目で見ながら、山襞に沿った狭隘な道が延々と続く。谷側に座った相棒は、窓から下を覗いてその深さにゾッとしたそうだ。

北沢峠までのバスの乗車時間は合わせて2時間30分にも及ぶから、初日は北沢峠に辿り着くのが精一杯

バス停を降り、コメツガやシラビソの樹林を10分ほど歩くと、駒ケ岳の入口に当たる北沢駒仙小屋に着く。かなり広い幕場だが、ゆうに100張りを超える色とりどりテントで埋め尽くされている。

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幕場のそばに細い渓流が流れ、見上げると、青空を背景に雪をかぶたような白い甲斐駒ヶ岳の頂上がポッカリ顔を覗かせている。

渓流の向こう側の山は、すでにモミジやダケカンバが赤や黄色に色づき始め、秋の風情を印象付けている。

渓流を見下ろす太い木のベンチに腰掛けて、冷えたビールを傾けながら、初秋の景色をノンビリ眺める至福の時間帯。

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中央奥の白い山が甲斐駒ヶ岳

初日はすこぶる快晴で、深夜、空を見上げると満天の星。

星の数があまりに多いので、何の星座かは確認できないほどだが、明け方4時半頃テントを這い出すと、薄っすらと明るくなった東の方角に、3つ並んだオリオンの星たちがひときわ輝いていた。

朝食を済ませ、最低限の荷物を小さなアタックザックに詰め込んで、6時ちょう度にキャンプ地を後にした。

山小屋のような混雑はないが、硬い寝床でなかなか寝付かれず、ボーとしながら、50分ほど歩いて、仙水峠に着。

山   写真 温泉山   写真 温泉
仙水小屋からは、ゴツゴツした急坂を登ると、そのうち視界が開け、遥か彼方に広がる雲海の上に、大菩薩の連山が浮かんでいる。

時計を見るとまだ6時50分。朝の気配がまだ山間に色濃く漂っている。
 

やがて行く手の頭上に、白い花崗岩の荒々しい岩肌をむき出しにした2960mの甲斐駒ヶ岳の雄姿も見えてきた。南アルプスの貴公子といわれるだけあって、圧倒的な存在感。
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山   写真 温泉 甲斐駒ヶ岳山   写真 温泉

この山域の紅葉は、9月下旬が盛りということだから、あと1週間もすると全山錦色に彩られるのだろう。黄色に色付いたダケカンバや赤い実をつけたナナカマド、やはり赤く変色したヤマボウシなど、いままさに紅葉の旬といったところ。

澄み切った青空がさらに秋景色に彩を添えている。

仙水峠から駒津峰(2740m) までは、いよいよ等高線の目が詰まった厳しい直登になる。標高差は480m。見晴らしは良いが、ゴツゴツした岩伝いに、ひたすら足元を見つめる苦行。

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                    向こうに尖った北岳が見える

森林限界を越えた辺りから、展望が開け、北岳や千丈ヶ岳などの南アルプスの主峰がくっきりと見渡せる。

かなりハイペースで登ってきたせいで、駒津峰(2740m) の山頂に着いたのは、スタートしてから、休みを入れてわずか2時間半(正味2時間10分)。コースガイドの正味歩行時間が2時間50分だから相当飛ばしてきたことになる。

この登りで、相当ふくらはぎが応えてきた。これが後々たたることになるのだが・・

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アサヨ峰をバックに駒津峰の最後の急坂

駒津峰からの景色は360度のパノラマで、鳳凰三山の向こうに、小さく富士山の姿もみえてきた。
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手前右からアサヨ峰連山、その奥中央が鳳凰三山、その奥に小さく富士山
山   写真 温泉 駒津峰頂上山   写真 温泉

左上のひときわ尖った山が鋸岳
駒津峰で15分ほど景色を堪能して、いよいよ最後の詰めの登りにとりかる。

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山頂を目指して、痩せて尾根沿いの細い道を行く登山者山   写真 温泉
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駒津峰からは、しばらくハイマツの緩やかな尾根を上り下りして、六方石に着く。
ここから、摩利支天の方にカーブしながら下る「巻き道」(右)と、山頂への「直登」(左)の道がある。ほとんどの登山者は、この巻き道を通るのだが、たまたまこの道が混雑しているので、直登コースを上り始めたのだが、これが大失敗。

すでにかなり太ももが張っているのに加え、岩場の連続でとうとう両足の太ももがつってきた。3点確保が必要危険な岩場もある。

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直登コースから、巻き道の方を見下ろすと、アリの行列のように一列縦隊の登山者が、ゆっくりとしたペースで山頂を目指している。

それにしても、遠くまで連なる雲海の広大なこと。これが3000m級の登山の醍醐味だろう。山   写真 温泉
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1歩登るたびに休みたくなるような、急峻な登りになんとか耐え、10時ちょうどに駒ケ岳の山頂にたどり着いた。

キャンプ地からの所要時間はぴったり4時間。
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山   写真 温泉 山   写真 温泉

中央上の山が鳳凰三山。左端の小さな突起がオベリスク

山頂からの景色は360度全開の大パノラマ。

富士山、南アルプスの主峰や八ヶ岳、北アルプスや中央アルプス、鳳凰三山、秩父連山の山々が、ブルーのシルエットのように雲海の彼方に浮かんでいる。

とくに富士山をバックにした鳳凰三山のオベリスク(地蔵岳)の姿が美しい。

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甲斐駒は、諏訪の延命行者が文化13年(1816年)に開山したという。当時は、白州(現在の北杜市)から黒戸尾根を伝うルート。現在でもこの表ルートと言われる黒戸尾根を登る人がいるそうだが、あまりにもアプローチが長いなので、その数は少ないという。

往時、講中登山が盛んであったせいか、山頂にはたくさんの石仏が奉納されている。
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山頂でコンロを使って昼食を摂り、たっぷり1時間休んで、摩利支天の下の巻き道を通り、双児山経由で下山の途に着いた。

惜しむらくは、摩利支天によればよかったのだが、その余裕もない。

下山してから隣でテントを張っている人が、摩利支天からの景色が、本日の圧巻だったという。
駒ケ岳山頂から駒津峰の下山は1時間、そこから双児山までは30分。

北沢峠のキャンプ地に帰り着いたのは、2時少し前だった。

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明日は、本日とほぼ同じくらいの行程の、千丈ヶ岳に登る予定だが、果たして足のツッパリは解消しているだろうか?

 

 

千丈ヶ岳に続く