●雲取山  曇り 晴れ

  東京都 雲取山(2017m) 2009年19・20日 1泊2日

 

 

 <参考コースタイム>

  ●1日目

 JR奥多摩駅→鴨沢バス停→(2時間5分)堂所→(45分)七ツ石小屋→(25分)七ツ石山頂→(40分)奥多摩小屋→(60分)雲取山山頂→(30分)雲取山山荘

  ●2日目

   雲取山山荘→(20分)雲取山山頂→(15分)雲取山山荘

  雲取山山荘→(30分)小雲取山分岐→(35分)ブナ坂→(15分)七ツ石山頂→(20分)千本ツツジ→(1時間40分)林道出合→(1時間20分)

  ●1日目参考歩行時間:5時間25分

  ●2日目参考歩行時間:5時間15分
山   写真 温泉

 

今年、相棒がとうとうテントを購入。年々、山の装備を充実させてきているので、「今度はきっとテントを買うことになる」と水を向けると、「それはない」ときっぱりに否定をしてきたのだが、”予想どおり”テントを買うことになった。

そこで3連休を利用して、1泊で、2000m級の山を登ることにした。

目指すは雲取山。前々から雲取山に行きたいと思っていたのだが、日帰りでは強行軍なので、1泊ならこの山とひそかに決めていた。

確かこの山は中学2年の春休みに登っているから、およそ40数年ぶり。当時は、相棒を含めて5人で三峰神社から登っているので、今回は鴨沢から。

山でテントを張るのは、やはり何十年ぶりなので、体力的な不安がどうしても付きまとう。「初日は一体どこまで行けることやら」、と期待より不安の方が大きいのは事実。

押入れから古い大きなザックを引っ張り出して、シュラフやコッフェルを詰めると大層な大荷物になる。出かけに重さを量ったらぴったり12Kg。昔に比べれば、さほど重くはないのだろうが、年を考えるとやはり不安になる。テントは相棒が担ぐので、どのくらいの重さになるか尋ねると、どうも非公開らしい。かなりの重さであることは間違いない。

お互い惨めにgive upしなければ良いのだが・・。
山   写真 温泉 相棒のザックの中身

決行日は、連休の初日を予定していたが、天候が不安定というので、あっさり翌日に順延することにした。

奥多摩駅から西鴨沢行きのバスは8:30分発。乗客が多く、1台増発。

途中、奥多摩湖で1/3くらいが降車して、鴨沢バス亭に下車したのはあわせて60~70人程度か?これまで登ってきた山と違って、20代、30代の登山者が多く、身軽なトレイルランナーの数も多い。
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登山口からやかな林道を30分ほど歩いて所畑の分岐に着。ここまでは順調なペースで、ザックの重さもさほど気にならない。さらに薄暗く、変化の少ない緩やかな道が続き、50分歩いて10分の休憩をとるペース。これならなんとか予定通り、山頂に立てるだろうと予想がつくような気になってきた。

雲取山は、東京都で唯一の2,000mを超える(2,017m)山で、「日本百名山」の一つでもある。

本日の第一目標地点は、七ツ石山(1757m)。ここまで登ればあとは、尾根伝いに標高差300mほど登り詰めれば山頂に辿り着くことができるはず。その七ツ石への急途が、やはりクセもので、徐々にザックの重さがグッと肩や腰に食い込んでくる。暑さのせいもあって、しきりに額から大粒の汗が滴り落ちてきた。
歩き始めてようやく2時間半たった頃、樹林の間から山並が見えてきた。そこから10分ほど急坂を登って、登山口から2時間50分かけて、山頂下の七ツ石小屋に12時15分着。小屋の入口付近から、わずかに富士山の裾野が見えている。

山   写真 温泉
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小屋の前で休んでいると、若い登山者が腰を上げて、山頂を目指して登り始めた。足元を見るとなんと、一本歯の高下駄を履いている。まるで修験者のようだが、ここでハタと思い出した。

実は雲取山の本籍地は熊野の大雲取山で、熊野信仰の修験者がここで修行をしたのが由来とか。今でも那智から本宮に向かう「大雲取山越え、小雲取越え」は西国三十三所観音巡礼のメインルートという。

あの若者は、その故事来歴をなぞっているのだろうか?
翌日の払暁、雲取山の山頂でご来光を仰いでいると、どこからか法螺貝の音が聞こえてきた。まさかあの法螺貝は、このとき通り過ぎた若者か、と心密かに思ってみたりしたのだが・・。

重い腰をあげて、山頂への最後の詰めに差し掛かかる。小屋から七ツ石の山頂までは、ほんのわずかな距離のはずだが、なかなか山頂が見えてこない。一見なだらかそうな登りだが、やはりここでザックの重さが応えてきた。
山   写真 温泉
山   写真 温泉
小屋前から25分かけて13時15分、ようやく石尾根の稜線に登り詰め、七ツ石の山頂にたどり着いた。
今日初めて味わう、見晴らしの良い眺望。眼下にこれから向かう雲取山の尾根筋が見える。

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七ツ石山頂

ひと足先に頂上に着き、相棒を待っていると、重い荷物を背負って、一歩一歩確認するような歩みで登ってきた。

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左下の防火帯の稜線から小雲取山を経て、右上に雲取山の山頂が見渡せる。厚い雲がかかっているが、富士山や大菩薩辺りの山波がはっきりと分かる。

山頂で遅い昼食を摂り、13時45分出発。せっかく高度を稼いだのに、急な坂を下ってブナ坂へ。ここから、防火帯の平らな道をノンビリとした気分で歩けるのが雲取山の魅力の一つだろう。

奥多摩小屋前に着いたのは七ツ石の山頂から40分後。稜線沿いにすでに数張りのテントが設営されている。

林の中にある雲取山荘の幕場ではなく、ここでテントを張るのは、やはり見晴らしが良いせいだろう。ここなら満天の星を堪能することができる。

 山   写真 温泉
   奥多摩小屋前
山   写真 温泉 山   写真 温泉
奥多摩小屋を通過して、明るく開けた尾根道を歩くと、徐々に小雲取山の急坂が迫ってきた。この坂でとうとう足がパンパンに張ってきて、つりそうになる。太ももを騙し騙し、なんとか登りきった。

山   写真 温泉
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山   写真 温泉
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小雲取山山頂から少し下ったところに、山頂へのコースを取らず、直接雲取山山荘に向かう平坦な巻き道がある。このルートを使えば、20~30分ほど時間の短縮になるようだが、頂上はもう目と鼻の先なので、あとひと踏んばりの登りに耐えることにした。

山   写真 温泉
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雲取山避難小屋

さすがに最後の急途は応えたが、15時30分ついに山頂にゴール。登山口から休憩を入れて6時間かかったことになる。苦労した甲斐があったせいか、ことのほか山頂からの景色が美しく見える。

山   写真 温泉
山   写真 温泉

山頂で景色を堪能して、うっそうとした樹林の急坂を10数分下って、山荘に着いた。小屋でテント料300円を払い幕場に降りて行くと、50張りが張れるという幕場はすでに超満杯。

ほとんどの人は、山荘への巻き道を使ったのではないか?

小屋近くにわずかなスペースがあったので、そこに設営してから、小屋に戻って、ようやくビールで祝杯。残念ながら下界と違って、冷えたビールではないが、ひと心地ついた気分に浸ることができた。

山   写真 温泉
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●2日目 雲取山荘から峰谷へ

テントの中は予想以上に暖かく、むしろ暑いくらいでなかなか寝付かれない。夜半から強風が出てきて、テントを容赦なく煽る。夜陰に混じって、キャン、キャンと盛んに鹿の鳴き声が聞こえてくる。そういえば今日、七ツ石山辺りで、目の前に鹿が飛び出してきたが、雲取山にも鹿が出没するのだろう。

いつの間にかウツラウツラして、目を覚ますと明け方3時頃。相棒とテントの外を覗くと、なんと満天の星空。夏の星座がびっしりと夜空を煌々と照らしている。他の登山者が、夜中の2時に天ノ川が良く見えたと言っていたそうだ。三脚がないので星空の写真はすべてブレている。

 

今日は雲取山の山頂で、御来光を拝むことになっているので、小さなザックにバーナーと水を詰めて、3時40分頃テントから這い出した。

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本日の日の出は4時39分。山頂まではおよそ30分かかるというが、空身だから夜明け頃までには十分間に合うと思っていたが、すぐに東の空が明るくなってきた。

空を見上げると、光りの当たらない下弦の月の影の部分までもハッキリ肉視することができる。都会では到底拝めない月のカタチだ。

山   写真 温泉
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昨日の強風が上空の雲を払ったか、願ってもない山頂の朝焼けの景色。避難小屋で一夜を過ごしたか、登山客が夜明けのコーヒーを飲んでいる。早速われわれもコーヒーを沸かし、地平線の彼方から昇る朝陽を待つことにした。

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下界の雲間から陽が上る頃になると、登山者の数が多くなった。朝の日差しが昨日辿ってきた、山稜を徐々に照らしてきた。

目を転じると、薄っすらと朝日を受けた富士山の存在が際立ってきた。

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頂上付近にほんのわずか雪の名残をとどめている夏の富士山が、大菩薩嶺の背後のドンと聳えている。

山頂から徐々に人影が少なくなってきた。われわれもそろそろ朝食を食べ出発の準備をしなくては・・。

山   写真 温泉

テントに戻り、朝食を済ませて、7時丁度に幕場を後にした。

今日はもう山頂を通らずに、巻き道を通って、七ツ石山を登り、千本ツツジ、鷹巣山を経て日原に下りる予定。
山荘からの巻き道は緑豊かな原生林で、朝の足慣らしには打ってつけ。山道の脇を笹や杉コケが埋め尽くしている。

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巻き道から小雲取山の分岐についた辺りで、富士山を見ると山頂に珍しく笠雲が乗っている。富士山に笠雲がかかると天気が崩れるというが、果たして今日はどうだろう。

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七ツ石に向かう途中に、ツワブキに似たマルバダケブキ(丸葉岳蕗)という花の群生がある。花の数が少ないのは花期がもう終わっているからだろうか。緑の山に黄色の花がひときわ映えている。
出発してから1時間50分で七ツ石の山頂に着いた。

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ここで少し早めに下山しようということになって、このまま石尾根を下り、千本ツツジから赤指山の脇を経て、峰谷のバス停に降りるコースを辿ることにした。

峰谷はバスの本数が少なく不便だが、時刻表を調べると幸い13時30分のバスがある。これなら十分に間に合うはず、というので即決定。

山   写真 温泉

七ツ石から千本ツツジに向かう途中道が上下二つに別れている。
下の道を通ると、名前の通りシロヤシロツツジやヤマツツジの群生がある。

山   写真 温泉
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千本ツツジから、いよいよ下り一方の赤指尾根になる。

まったく見晴らしのない針葉樹の樹林帯だが、ところどころ白樺の木があるのは珍しい。

この登山道は、やはりバス便が悪いせいか、滅多に登山客がいない。その日出合った登山客はわずか3組4人だけ。

重い荷物を背負うと、やはり下り坂が応えることを実感した。おまけに途中標識があるものの、現在位置が分からないので、ストレスがある。一体あとどれだけ歩けば林道に出るのだろうとイライラした気分になる。

山   写真 温泉
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ようやく千本ツツジの分岐から1時間40分ほどで、林道の出会いに出た。そこからショートカットの道を辿り、ゲートを経て、峰谷の一番上の人家にたどり着いた。廃屋になった農家の茅葺屋根の雑草が痛ましくみえる。谷間の向こうを見ると、鷹巣山にいたる奥集落が見渡せる。

この峰集落も相当な標高にある。
山   写真 温泉
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林道に出た辺りから、急坂で足指に負担がかかったせいで、つま先が痛くなった。もうすぐバス停に着くはずと思いながら、結局林道出合から1時間近く歩くことになった。バテよりも足やつま先の痛さでギブアップ寸前。

このコースは、林道の行き詰まりまで車で行ければ良いだろうが、上りも下りもあまり勧められないコースではある。
その日、林道に沿って下り着いたのは、峰谷バス停の一つ先のバス停だった。

後日、山のガイドブック(東京周辺の山)で調べてみると、赤指尾根から七ツ石に至るコースガイドが載っていた。それによると峰谷バス停に至る林道には何箇所かショートカット道があり、それを辿ると目的の峰谷バス亭に着けたようだ。

しかし余程、注意深く標識を見ていないと、このショートカット道は分からない。
結局、力尽きたカタチでゴールに12時20分頃着き、バス停そばの食堂で冷えたビールを1本飲んだだけ。恒例の奥多摩駅近くの湯に浸かる気力もなく、しかも駅前の食堂も早い店仕舞で、そのまま家路に着くことになっ た。

1日目の徒歩数は2万5千歩で、2日目は3万歩、合計5万5千歩はきつかった。

今後、やはりコース変更は考えもの、というのが教訓。