●浅間嶺 雨のち曇り

  東京都 浅間嶺(903m) 2009年5月30日(土) 温泉付

 

 <参考コースタイム>

 JR武蔵五日市駅→払沢の滝入口バス停→(払沢の滝往復(20分))→(40分)時坂峠(60分)→浅間嶺展望台下分岐→(15分)展望台→(1時間10分)一本松→(20分)数馬分岐→(30分)浅間尾根入口バス停→(10分)檜原村温泉センター
 参考歩行時間 :4時間30分

  温泉 檜原村 温泉センター
山   写真 温泉

関東地方は梅雨入り前だというのに、3日前から雨が降りつづき、当日の予報も曇りのち雨。

というわけで、雨になってもエスケープができて、高低差の少ない山を選ぼうと、2日前になってようやく決まったのが、奥多摩の浅間嶺。

浅間嶺は、昔、生活物資を運ぶ人馬が、武州から甲州に抜ける近道として往来した古道という。いまではハイカー以外に往来する人はいないが、春は桜、そして新緑の美しいハイキングコースとして知られている。

 

五日市駅からバスに20分ほど乗って、払沢(ほっさわ)の滝入口バス停に降り立ったのは、午前10時ころ。

やはり小雨が降っているが、空は明るいので、あるいはそのうち雨がやむのではないかとの期待が出て来る。

山   写真 温泉 バス停前

バス停で雨具とロングスパッツの完璧な装備をして、寄り道だが10分ほどのところにある払沢の滝に寄ることにした。1段の落差26mほどの水量豊かな滝で、日本の滝100選にも選ばれている。

滝の上を見上げると、薄っすらと陽が射してきた。

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登山道入口からはしばらく林道がつづくが、ところどころショートカットのための山道がある。

この辺りは檜原村といって、東京に唯一残る”村”のせいか、東京都とは思えない山里の風景が残っている。

山道に入るとすぐに、檜原村特有の茅葺の兜造りの家が見えてきた。

この先の数馬という集落には「兜家 」という、兜造りで有名な旅館があるが、実際に山中にまだ茅葺の民家が残っているのにはおどろいた。

屋根の両端が兜の庇のような形をしているのが特徴で、合掌造りと同じ屋根裏に蚕棚スペースがあり、風通しを良くするための格子窓がある。

兜造りは甲州地方が発祥の造りだそうだから、この辺りが昔、甲州の文化圏(甲州から移住したひと)に属していたことを物語っている。

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茅葺の兜造りの民家

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小雨はすっかり上がったので、雨具を脱ぐが、山はまだ濃い霧の中。

登山口から40分ほど歩いて、時坂(とっさか)峠に着。とっさかとは、「取りつき」という意味らしい。浅間嶺へのとりつき、という意味か?

林道をもう少し歩くと峠の茶屋があり、ここが林道の終点となる。
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               時坂峠

山   写真 温泉 峠の茶屋

峠の茶屋の前は木を払っているため、見晴らしがいい。

晴れていれば、御前山、大岳山が見渡せるという。今日は霧が出ているので見えないが、周辺の小高い山に点在する家々が、はっきりと分かる。

檜原村の暮らしは、ほとんどが山仕事(林業)で、畑でジャガイモ、こんにゃく、それにわずかだがお茶も作っているそうだ。

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茶屋から店主のおばあさんが出てきたので、少し話をした。「若いころは山なんてイヤでしょうがなっかたけど、最近はこの景色が気に入ってねえ」。

ご主人がこの先にある、320年続く兜造りの家(旧瀬戸沢家)が生家だという。「この間、茶屋のすぐ脇にある神社の木の下で、昔の馬の蹄鉄を見つけた」そうだ。村人が、江戸時代から恐らく昭和のはじめ頃まで、足しげくこの峠を往来したのだろう。この景色を見ていると、往時の光景が、ついこの間のことのように思えてくる。

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林道からの道は、勾配が徐々にきつくなり本格的な登山道になる。

尾根道とはいえ視界がきかないが、新緑が目に眩いばかり。

峠の茶屋から50分ほど歩くと、休憩所と展望台への分岐に出た。展望台は頂上ではないが、ここは、やはり展望台に向かいたいところ。途中、標高932mの松生(まつばえ)山への分岐点があるが、あまり登山客は行かないようだ。

山   写真 温泉
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分岐点から10分ほどで展望台に着。周囲は霧に覆われているので展望はきかないが、北側の尾根筋が開けていて、開放感がある。

背後は、ブナやクヌギ、サワラの天然木の樹林や青葉で美しい。

 

そういえば今日は、朝からひとりの登山者を見ていない。ここにも全く人の気配がない。この自然をわれわれ二人だけで独占しているのかと思うと、なんとも贅沢な気分になる。
空気が湿っているせいか、ここまで汗を一杯かいているので、休むとからだが冷えてくる。

広々とした展望台のベンチで昼食を摂る。季節はずれのウグイスの良く通る鳴き声が、新緑の霧の中から聞こえてくる。
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1時間ほど展望台で休んで、登山道から少し離れたところにある浅間嶺の頂上に行ってみることにした。

10分ほど急坂を上ると、浅間神社の小さな祠がある。この辺りが三角点のようだ。ここから富士山や丹沢方面の眺望が得られるという。
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山頂から、なだらかな新緑のトンネルの尾根道が続く。

ところどころ、人ひとりが通るのが精一杯の狭い道がある。この道を果たして人馬が、本当に行き来したのだろうか、と思えるほど。

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山頂から50分歩いて浅間石宮の木標に着いた。傍らに、馬頭観音の石仏がある。この狭い道なら、足を踏み外した馬もいるだろうから、その供養か。

霧がいよいよ濃くなって幻想的な気配。傾斜のキツイ坂を登ったので、ここで一服。

今日は、数馬の集落に降り、檜原村の温泉センターに浸かる予定になっている。ここからあと2時間弱というところか。
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浅間石宮の木標から10分で、浅間尾根で一番標高の高い一本松(930m)に着く。ここからはイッキに視界が開けて、眺めがよい(はずだ)。

下りはなだらかで、人工林があり、伐採したばかりの檜の香りがあたり一杯に漂っている。やがて、今日初めて山ツツジの群生をみた。
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数馬の分岐に着いたのは、丁度3時。展望台から1時間30分だから相当速いペースで降りてきたことになる。バス停まではあとわずかだ。
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予定通り30分ほどでゴール間近の集落に着いた。バス停に降りる途中、「浅間坂 」という宿があり、その前庭に、自然水が引いてある。「自由にお飲みください」と書いてあるので、口に含んでみると、やわらかい軟水。早速空になったペットボトルに詰めて、持ち帰ることにした。ちなみにこの宿では、日帰り温泉もあるという。

山   写真 温泉

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林道を下ってゆくと、舗装された檜原街道に出て、そこから10分ほどで、本日のゴール檜原の温泉センター に着いた。16時少し前。
この温泉は、アルカリ性単純温泉で、薬草の露天風呂もある。今日は天候が悪く登山客や一般客も少なく、ノンビリ浴槽に浸かることができた。

湯上りは、待望の冷えた生ビール。「このための山登りだ」と相棒がグビリとビールを飲んで深いため息。

つまみはこの土地でとれたコンニャクの刺身と茹でたての枝豆。
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温泉の玄関口の土産物コーナーで、「生コンニャク」を売っていたので購入。

翌日、途中で手に入れた大きな朴歯の葉に、コンニャクと四万十川で買っておいた柚子味噌を盛り付けて、ビールと熱燗を一杯、二杯。