その日、私は通りかかった路地裏で奇妙な水溜りを見つけた。普段ならば気にも留めないような小さな水たまりだが、その日は何かが違った。水たまりの表面には赤い液体が浮かんでいるように見えた。私は不安を覚えつつも、水たまりの中を覗き込んでみると、その液体が血であることがすぐに分かった。
驚いて後ずさりする私だが、足元が何かに引っ張られるような感覚に襲われた。恐怖で凍りつく私を水たまりは引きずり込もうとしている。必死に抵抗するものの、その力は強大で、私は水たまりの中へと引きずり込まれてしまった。
暗闇の中、私は目を凝らして周囲を見渡す。水溜りの中は広大な空間と化し、血まみれの水面が光を反射して光り輝いている。逃げるべきか、叫ぶべきか迷っていると、怪物のような姿をした何かが私に近づいてきた。
その姿は人とも畜生ともつかないもので、顔には笑みを浮かべているが、その目は凍りつくほど冷たかった。私の周りには他にも同じような姿をしたものたちが集まっている。彼らは私を囲み、悪意に満ちた視線を送りつけてくる。
私は恐怖に震えながらも、逃げることしか考えられなかった。足掻いて水面を蹴り、必死で這い上がろうとするが、水溜りの中は底知れぬ深みだった。絶望感に飲み込まれそうになりながらも、最後の力を振り絞って水面に向かって泳いでいくと、とうとう空気を吸い込むことができた。
激しく息を切らしながら立ち上がると、ふいに路地裏が明るくなっていた。水たまりは普通の水たまりに戻り、何も異変はなかった。私はただの幻覚だったのかと思いながらも、背筋が冷たくなった。
その後、私はその場を去りながらも、水溜りの血溜まりの恐怖が忘れられずにいた。あの日の出来事はただの夢かもしれないが、私の心の中にはぬけ出せない闇が残っているのだった。