久し振り。
先日、いつもの産経新聞に僕のエッセイが載った。
入院前日、退院した時の楽しみにと、投函しておいた作品だ。
親友のために書いた。
2か月たって、載った。
「書けない」
親友から久しぶりに手紙がきた。
いつも礼儀正しい手書きの封書だ。オレはネットもラインもしないから、と笑ったハンサムな顔が浮かぶ。相変わらず文体も漢字も几帳面な友だ。
高校へ入学してすぐ友人になったが、彼は在学中に遠くへ転校してしまった。3年後、卒業したばかりの頃に一度会い、次に会ったのは確か定年前。初めて一緒に屋台で酒を飲んだ。
もうお互いに後期高齢者となった今回の手紙には「一昨年の難病手術の後、自宅の階段から落ちて3カ所も骨折した。君も無理せずに注意しろよ」と書いてある。私は近々、持病の手術を受けると電話で知らせたからだ。
彼への返事を書こうとして絶句した。少し複雑な漢字の筆順が全く思い出せない。恥ずかしいが、「農」がどうしても書けなかった。意識するとますます書けない。
こんなはずではと焦る。思えばもう二十数年、パソコンに頼りっぱなしだった。新聞は毎朝読んでいる。だが字を書くことはほとんどない。
反省し、今から練習して、彼に手術結果を報告しようと思い、漢字練習帳を買った。彼には「後日、術後の近況を知らせる」とだけのはがきを送った。
そこにネットもスマホもいじらない親友が羨ましい自分がいた。
ソフトボールチームで1番打者の彼。
僕は2番だった。
文学をかたりあったことも。
濃密な高校3年間を過ごし、離れ離れになったあの日。
それから今日まで、2回しか会っていないが、何の違和感もなく当時に戻れる。
長生きしろよ、とは言わないが、元気でな、とは言った。
彼は高知に住んでる僕の親友。

