共同親権の話を基に思いつくままエッセイ風にその問題点を綴ってみます。この問題は欧米諸国と日本との間にある伝統的結婚観の差異やら現実問題として嫌い合う元夫婦間の修羅場が話題になっているところですが、最近改正され2026年5月までに施行されることになりましたね。

 

 国会では随分と議論?されたそうですが、実際はもはや国会の手を離れたわけで、私の知人でこんな事を言っている人がいました。

 

 今までの日本の家族法では離婚したら父か母のどちらかが親権者になる単独親権でなければならなかった、それが今まで通り単独親権でもいいし、共同親権でもどちらでもいいよという風になっただけだろ。そもそも離婚に際して父母が協議して共同親権でやろうという事になったら問題はないわけだ。問題は父母の間で話がつかない場合、例えば母が共同親権を猛烈に反対しているが、父がそれを強く望んでいるような場合、つまり両者の間で話し合いがつかない場合だけ、この問題は顕在化するだけだ。問題が顕在化するのはその場合だけで、これは裁判所が解決してくれるんだからそんなに騒ぐ事もないと思う。

 

 その知人は概略こんな事を言っていたのですが、離婚経験のないその知人の根底には、どちらか一方が死ぬほど共同親権を嫌がっているのに、裁判所が共同親権を認めるわけがないだろうという裁判所に対する腐った信頼があると思うのです。そんなに信頼できる場所でもないと思うんですよね。

 

 この場合の裁判所というのは家庭裁判所家事部です。家庭裁判所には少年部と家事部があるのは言うまでもない事ですが、家庭裁判所、とりわけ家事部というのは少子高齢化が限界まできた人生百年時代において極めて重大な社会的存在意義を有するのは意外と見過ごされているところがあるのではないでしょうか。

 

 この家事部審判官(裁判官)が当該紛争離婚当事者において共同親権を認めるかどうか、もしくは最初は協議の結果共同親権にしたがやはり単独親権にするか(こちらの方が多そうな気がするな。)どうかを判断するわけですが、確かにここまでくるケースって少なそうですね。ここで私が注目したいのが、この審判官を補佐する家庭裁判所調査官という職種の人たちです。家裁調査官と言えば、ドラマや小説なんかでもよく取り上げられるところで、法律ではなく心理学や教育学のプロフェッショナルであり、家事審判官に的確なアドバイスを与える立場にある人たちです。

 

 しかし、この家裁調査官という人たち、神秘のベールに包まれているようなところがありますね。裁判所職員なのに法律のプロじゃない、しかも精神科医の資格があるわけでもない。多くの人たちは法学部でも医学部出身でもない。私は二十代の頃、犯罪論について熱心に学んでいた時期があるのですが、その頃偶然家裁調査官の男性と知り合った事があるんですよね。私よりは少し年上でしたが、とにかく穏やかで話しやすい方でした。一年間位親しくしており、主に酒席で彼から少年非行の実情を傾聴しては楽しかったものです。更に、当時その彼が恋焦がれていた後輩の女性調査官を連れ立ってくる事もあり、心理学に興味があった私は彼女からも色々学ばせてもらったものです。

 

 しかし、当時も今もこの家裁調査官という方々について疑問を抱いていた事があります。というのは、その職分は非行少年や犯罪少年を扱う少年調査官と家事問題を扱う家事調査官の二つがあるという事です。私が知己を得た調査官は二人とも少年調査官であり、彼らの話題は常に少年院や鑑別所ばかりだったので、家事の調査官がいると聞いてもどうもピンとこなかったわけです。それに私は当時も今も家事事件というものについてはよく知らないところがあり、なんとなくイメージ的には離婚事件について当事者の心理状況を科学調査するという風に捉えていたのです。しかし、それもなんだか変な感じがしたんですよね。離婚事件というのは、それを得意とする年配の弁護士が結構いると思うんですよね。何件も離婚事件の修羅場を見聞し解決に導いてきた弁護士の方が若造のような調査官よりもずっと頼りになると思ったのです。

 

 確かに少年調査官というのは、たとえ精神科医の資格はなくとも、少年心理、とりわけ犯罪少年心理学という特殊な分野においては独壇場とまではいかないまでもまさにプロ中のプロだと思います。ちなみに、当時、二十代だった私は心理学や精神医学に非常に興味を抱いていたのですが、調査官になりたいとは思わなかったのには理由があります。勿論、適性がないのは言うまでもない事ですが、私は非行少年というのが大嫌いだったんですよね。

 

 家裁調査官の採用というのは、噂によると筆記試験よりも人物面接試験の方がずっと難しいそうですね。お穏やかさと高いコミュニケーション能力を要求される、これは昔親しくなった調査官をみてもよく分かります。そして、毎年例外がないのは、採用の男女比だそうです。圧倒的に女性が多いようですね。年度によっては八割が女性ということも間々あるようです。なんだか女性の職場という感じですね。職務内容が女性に向いているのかな、それはいいのですが、一つだけ気になる事もあります。私はジェンダーの視点からものを言うのは嫌いなのですが、素人目からみて典型的な非行少年の調査や悩みの相談を受ける時にはどうしても生理的限界があるのではという事です。彼らが金科玉条の如く思う「喧嘩根性」というのは、殴られても殴られても絶対前に出るという事であり、これは女性よりも男性の方が根深いところまで理解しやすいのではないかな。それに「年少リング」にしても、これは何も持たざる男が唯一自己主張したい浪花節的人生図につながるような気がするんですよね。後輩に伝えるべきは、何がカッコいいか、私でさえいい歳になるまでそんな考えを持っていた程ですからね。

 

 これは「共同親権」を通したオリジナルなエッセイなので話が飛んで申し訳ありません。

 

 閑話休題。

 

 「共同親権」の問題が家庭裁判所に持ち込まれた場合、なんとなく私の予想ですが、家事調査官が活躍するという事が多くなるのではないでしょうか。

 

 次回に続きます。

 

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