今日も部屋中に鳴り響く目覚まし時計をとめて、
普通に学校へ行く。 慣れた。
名前は 宮島一也(みやじまかずや)。
特にこれといった特技も趣味もない。平凡。
俺は今、高校3年。…で、もう、2月の終わりが近づいてきた。
もううちょっとで、重たい体を起して学校へ行かなくて済む。
俺は大学に進学するつもりはないから、長かった学校生活は
これでおさらば。
…すがすがしい。
そう思うと、つまらない学校でも頑張れる。
「…よし。準備できたし、そろそろ――――――」
その時だった。
ドォオオン、と思い音が外から聞こえた。
かなり大きな音だ。しかも、すごい近くから。
急いで外を見ると、ものすごい煙が上がっていたから驚いた。
――――――隕石でも落ちたか。
駆け足で下に降りて見ると、家族は平然とリビングで
くつろいでいた。 まるで、何もなかったかのように。
「…今の音、何?」
「は?」
怪訝そうな顔をして俺をみたのは妹の綾菜(あやな)。
何も聞こえてないけど、と表情を変えずに吐き捨てる。
…やなやつだな、我が妹ながら。
けれど何も聞こえてないと言うのはないだろう。
あの音だ、外に人だかりが――――――――
そう思って外へ出て見るけれど、猫一匹でさえいない。
けれど未だに煙はあがっている。
なんで、この時俺はあの煙の元へ走ってしまったのか。
好奇心か。それとも平凡から抜け出したい欲望からか。
後ろで母がどこいくの、と叫んでいたが、無視した。
走る。走る。なんでかな。何事にも消極的な俺が。
息も今までにないくらい絶え絶えで、もうすでに足がだるい。
しかしなんとか煙の元へたどり着いた。
そこで見たものを、他のものに言えば、「頭がおかしい」だとか
「疲れてるのではないか」と言われただろう。
――――なにしろ、悪魔としか言いようがない外見の
生き物が、宙を舞ってぶつかりあっていたからだ。
「な、なんだあれ…!?」
数えて見ると悪魔は4人いた。
そのうちの2人は、翼が無ければ
人間にしか見えない姿をしていた。
1人は銃、もう1人は自分よりも大きなカマをもっていた。
一方の悪魔は、もう顔の形などとどめておらず、
人間の要素など微塵もないと言いきれるほど、
醜い姿をしていた。
―――――――なんだ、あれは。
恐怖と同時に、なんとも言い難い感覚に襲われた。
怖いくせに、震えているくせに、宙をとんでいる
あの人間ではない者たちに、一歩、また一歩と近づく。
非現実的な、ありえないものを目の前にして、
俺は興奮していた。こんな感覚は初めてだった。
と、ふいに醜い姿をした悪魔がこちらに気づいた。
「――――――――まずいっ」
銃を持った方が、明らかに焦った。
醜い悪魔は耳ほどまで裂けた口をにい、と吊りあげ、
全速力で俺のほうに飛んできた。
やばい、やばい、まずい。
ここまで来て、今さら本気で焦る。でももう遅い。
俺の方へ向ってる悪魔とは、もう3mもなかった。
死ぬのかな。
覚悟して、考える事をやめた。
せっかく、俺の人生がかわったのかもしれないのに。
普通だったら、こんなのを目の当たりにして、冷静でいられない。
でもなぜか…うれしかった。俺の世界が変わるのだと。
一瞬でも、その喜びを感じた。…けど、直ぐ終わるんだ。
ぎゅっと目をつぶって、冷たくなって動かなくなる自分を
想像した。悲惨だった。 けど、もう来るはずの痛みはない。
おそるおそる目をあける。
俺にはそれが、スローモーションで見えた。
カマをもった方が、俺めがけて飛んで来た悪魔を切り裂いた。
もう一匹の醜い悪魔も、銃を持った方が正確に眉間を貫いた。
――――――信じられない。
生きてる。生きてる。…いやそれよりも。
嘘じゃないんだ。目の前にいるこの2人。
ゆっくりと俺のそばに、けれど距離をおいて、空からおりてくる。
こうして見ると、顔は良く見えた。
カマを持っている方は女の子だったようで、無表情で
カマを持ち、俺の事を冷静に見据えていた。
もう1人の銃を持った方は男で、珍しいものでも見るかのように
薄笑いを浮かべて俺を凝視した。
――――――なんだ、この2人は…?
どういう関係なのか、全く同じ角が生えたような
真っ黒のフードつきの、燕尾服に似たような服をきていた。
女の子の方はセミロングの紙で赤いスカートにロングブーツ、
男の方は耳より少し下ぐらいのショートにデニムのジーパン。
カマと銃なんてもってるから、かなり怪しい。
