見知らぬおとこの隣に乗り、
雨の国道を走っている。
いつもワタシが運転手なのに、
何故今夜は助手席に乗っている?
そしてこのおとこは誰?
何年も前から、
雨の国道を走っている。
いつもワタシが運転手なのに、
何故今夜は助手席に乗っている?
そしてこのおとこは誰?
何年も前から、
或いは生まれる前からの知り合いのように
何故かワタシは暖かい気持ちだ。
煙草に火をつけ、
前の車たちのテールランプの帯をみている。
古いかすれた感じのジャズ。
何故かワタシは暖かい気持ちだ。
煙草に火をつけ、
前の車たちのテールランプの帯をみている。
古いかすれた感じのジャズ。
ネオンサインが雨に にじんでいる
車が走り出すと流れる多色のネオン管
リンクするカーラジオの音。
そしておとこは長いこと何も話さない。
国道はやがて急にさびれて行き、
はじめて
驚き 眼を見開く。
ねむいの? と彼は聞く。
今はいつ? とワタシはたずね、
2181年。 と彼は答える。
時刻を尋ねただけなのに
このおとこは ワタシの真意を知っていた。
じかんの迷子になっているワタシのことも。
俺が誰だか知りたいか。
やめとくか。
忘れたのか?
おとこはうす笑いをうかべ
急に曲り角を曲がると車をよせて
ワタシの瞳の中を覗いた。
驚き 眼を見開く。
ワタシはおとこの瞳の中にワタシの瞳があり、その瞳の中に男の瞳があり、そのはるかむこうの、
ワタシのひとみの光彩の彼方に
ビッグバーンのように広がる宇宙があり、
そこにも街のネオンサインの中 、 雨が降っているのを見る。
え?
どこを曲がったの?
気づくとワタシはひとり車を走らせ、
暗い夜の繁華街に似合うエゴラッピンを
流しながら、
今のたった一瞬の白昼夢を思い返す。
海に向かう国道は
呆れかえるほどの青空が広がっていた。

