散文



時は既視の泉(セノーテ)に眠る



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夜ごと。

黒猫に誘われ 早足でビルの間を追う。

角を曲がると猫は消え

先の路地に君のコートの裾がひらめいたのを見る。

毎夜、路地に向かうわたしの足は早くなるのに

いつもその路地は行き止まり、

かすれた口笛の音、貴方はいない。

デジャヴュィエという名の君のトワレが燻っていた。






いつもいつもいつも、

あの日から、繰り返される

夢は決まって、

行き止まりの道に消えた君を探していた。

ずっとずっとずっと・・・・・。





もう、あれから何年経ったのだろう。

そう言えばしばらくあの夢を見なかった。




ある朝、手首に深い傷を負って目覚め

わたしはもういちど昨夜の夢にひきもどされる。




ゆうべ、通りに黒猫の姿はなく

代わりにあのむすめがいた。

わたしがゆるしていないあのむすめ。

後ろ姿だけでわかる、

大好きな貴方を連れ去ったあの娘。

白い寝巻きに裸足の娘はうたうように、

宙を舞うように歩いていた。

見慣れた長い髪を揺らし

生花の白い花かんざしを挿し

わたしを誘うようにどこかへ向かう。






ゆうべ突き当たりの壁には見た事のない扉があり、娘はそこを抜けて行ったらしい。


半開きの扉が風に揺れ、わたしの好きなメルドの花の薫りがした。


必ず突き止める。






昔、そのむすめと君が一緒にいるのを見た日から
君はわたしの前から姿を消し

もう戻る事はなかった。








扉のむこう、ここは来たことがある。

碧(あお)みどりの森と呼んでいた??
記憶が混濁する。


追いかけて。むすめのうたう声が近くなり、息を切らすわたしは草の蔓にあしをとられる。


深い森、こだまする歌、あの白い服はどこへ消えた?


木々をかき分けた先に見つけた青白い泉。


霧に覆われたみなもに水の割れる音がして、


むすめの髪に挿した白い花が浮かんでいた。


彼女は命を絶った??
それとも。。。






おそるおそる覗く泉の底に
娘は舞うように踊りながら深く沈んで行く。




君を探した毎日、この夢に翻弄される日々。
終わりにしよう、どうせ夢なんだから。
わたしは泉に堕ちるように沈んで行った。


大きな鏡が、沈められた場所にわたしは行き着く。ふしぎに息が苦しくない。


ここは伝説のセノーテ?
古代の人々が祈りを捧げ、泉の上に移る光で暦を作ったという。




底に降り立つと
鏡の上には氷で作られた棺があり、
そこにはやはり君が眠っていた。


セノーテの水の中では何も腐らない、
そこは、時間が失われた場所。
朽ちる事も 老いる事もなく


泉の底にはどこか、太古の昔や超未来へ行くゲートがあるという。



わたしはあれから年をとったというのに、君はあの日のままだった。


むすめは、棺にうつぶせて歌を歌っていた。


葬送歌(レクイエム)の子守歌なんか !!


ワタシは棺を割り、
氷の破片をむすめに突き立てようとした。







しかしそれは一瞬でためらいに変わる。


振り向いたむすめはわたしだったからだ。


あの頃の。


畏れも、悲しみも、苦しみも、知らず

優しさも、慈愛も、いつくしみも、受け入れない

人形のようなむすめがいた。


君を起こす隙ももなく、娘は氷のやいばをとりあげ、わたしを切りつけた。


真っ赤な煙が巻き上がり二人をへだてる。


ためらう事などなかったはずた。
一瞬のたじろぎが命とりになったのか。
むすめにやいばを突き立てれば良かった。


遠く、君が呼ぶ声が聞こえる。わたしを呼ぶ声。

赤い煙に巻かれながら、浮かび上がって行くのを止められない身体・・・・。


記憶が遠くなって行った。








それが昨夜の夢。


そして、繰り返す夢は昨夜で終わった。


あのむすめに切りつけられたのだろうか。
手首の傷は言葉を喋らない。
 

凶器を探すが見当たらず、ベッドの下に小さな水溜りが出来ていた。
やはり、自分がつららで刺したのだろうか。


うたた寝の中、あの夢はもうどこにも現れず、






午後になり、君は戻った。


長く遠くの土地へ仕事に行っていてごめん、と言う。
その頬は若さのおもかげを消し、どこか疲れたようにみえた。
泉から抜け出た時、君の時間も返したの?


その国の深い森に少女のお前が住んでいたよ、と君は言う。
僕に毎晩歌を歌ってくれたよ、とも言う。


手首を切ったのか?


長いこと、僕がいなくて寂しかったから?
髪をなでる君に、



わたしは静かに首を振るだけだった。


そして胸の中で訊く。
少女と過ごした日は楽しかったのかと。
時を忘れる事は倖せなのかと。




そう、わたしもいつかあの森にもどらなくちゃ。




君にもらったロザリオを泉の底に落として来たから。




いつか、きっと、。














昨日、かぜ 耕士さんのかぜ耕士博覧会クリスマスバージョンに日暮里にお伺いしましたが、
その2時間くらい前についたので、日暮里繊維街でニンマリ。
沢山安い生地を購入したけど、服がいっぱい作れそう。
帰りはすごく重かったけど。
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太陽系の第9惑星ニビルでは、
美しい宮殿の中で、
この星を司っているバレールが退屈していました。
宮殿と言っても地球のそれとはちがいます。
柱などは総てプラチナ。
床も何かの金属のようです。
星の質量の高いこの星では、地球の上にある軽い物質の建物などは時間と共に簡単に風化してしまうのです。






これは今から1億年も昔の話ですが、
ニビルと他の太陽系の星とでは時間の経過がまったく違うので、
この話は永遠の中の一瞬の話であり、
一瞬は永遠にも匹敵するという


そんなお話しです。



ニビルが太陽系の端にやってきたのは、
人々が勘違いをして、神と呼んでいる宇宙のマスターたるものが、他の異次元空間の穏やかな場所から、
あらゆる鉱物を集める事に余念のないニビルの王に怒り、星ごと弾き飛ばしたため、
その紅黒い星は加速度をつけ、宇宙の多々ある部屋を突破しまくりついに、働きバチの部屋のコスモスへ。
しかもその端にある銀河系に突入したあと、徐々に速度を落とし、


太陽系の手前の端に落ち着き、ここに軌道をとらざるをえない事となったのです。


端に軌道をとったとは言え、マスターに弾き飛ばされたおかげで、その軌道は大きく楕円に歪んでしまっていました。



「お父さま、ここはどこなのでしょう?」

セラミックの白い焼き物のような顔をした美しい姫は聞きました。

「下々の星々がひしめき合っておる、つまらない所よ。」

バレールは落ち着きはらった声色で答えた。

「あの、高次元のマスター達がいた部屋には帰れないのでしょうか。」

「うむ、多分。帰ろうとしても、
気の遠くなるほどの時間を費やすであろ。」

「時間とは何ですか?」

「それはこの、働きバチ部屋のコスモスの中に流れていて、人を疲れさせ、人を年取らせ、素晴らしい出来事を過去のものにする、残酷なものよ。
お前もいつか身をもって知る事となろう。」


「それが、この空間に流れているという事ですか?」

「そう、この大コスモスの端の端、働きバチの部屋にはな。それをこの部屋の者たちは学んでおる。」


それにしても、ここには大小様々な星々があり、
どんな者たちがおられるのか、とてもこころが惹かれます。


セラミックの顔の姫は夜空を見上げながらしみじみと言うのでした。


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