その箱の中には。




父がよく読んでくれた海外作家の絵本も入っていた。



懐かしい!!


忘れてた!



私は叫んだ。




その絵本は、、、




小さな兎の男の子が


母の愛情を鬱陶しく思う年頃になり、





僕は庭の草むらの中に隠れていなくなっちゃうからね!!

と言うのだ。

すると母兎は、

大丈夫!私はガーディナーになって、
すぐにあなたを見つけるから。


じゃ、僕は遠くの高い山に行っちゃうから。
という、子兎坊やに、



大丈夫よ。私はクライマーになって

すぐあなたを探すから!

と、母兎は言う。


それじゃ僕はヨットになって海に出て、遠くまで行っちゃうからね!




何てことはないわ!

ママは君を吸い寄せるから。





じゃあ、僕はサーカスに入ってどこかへ旅に行っちゃうからね。



大丈夫!
ママもサーカスに入って綱渡りして、
君を掴まえに行くわ。



じゃあね、じゃあね、
僕は風になって、ずーっと向こうに飛んで行っちゃうんだからね!




ああそうなの!?!

それじゃママは大きな樹になって、
あなたを捕まえるから、見ててごらん!!



そうして結局兎の坊やは、

僕に危ない事が、全て無くなるとしごろまで、


ママは僕の事を手放す気はないのだ、


と、諦めて、(実は安心して。) 眠りにつく、


という、絵本なのだ。

大人になった今は、この母心がとてもわかるが、
小さな私は父に


このお母さんはしつこいね、
とか
怖いね、
と言っていたのを、思い出す。


そんな私を父は膝の上に乗せて、
重たくない愛し方をしなくちゃいけないね、

それはなかなか難しいね、(笑)

と、ぽつり  と言った。


父の葉巻の匂いがしていた。


          つづく。      


  
      絵本引用
The  Runaway Bunny
作 Margaret Wise Brown