沢和哉「安芸号発車―国鉄マンの独身寮生活記録―」(四六判、全358ページ、博文社1966年10月31日発行、定価450円)
目次
安芸号発車(p5)
生活ノート(p23)
随筆三昧(p107)
独身寮日記(p195)
「日本国有鉄道百年史」の編纂、執筆をしたり、「鉄道―明治創業回顧談」などの著書がある著者の本ということで目録買いしてみたのだが、中身はサブタイトル(表紙には書かれておらず、本文表紙に書かれている)にある通り、1953年1月に東京に出て、国鉄の寮に住むことになった著者の生活日記。肝心の鉄道業務についてはあまり触れられておらず、もっぱら日常生活のことばかりなのだが、それも青春を回顧するみたいな感じで書かれているため心理的な面が多く、高度成長期を前にした日本の様子のようなものもあまり伝わってこない。
鉄道史に関する記述と言えば、p169「発車合図の変遷」での、1872年の日本の鉄道開業当初は太鼓で知らせていたのが、翌年の鉄道寮汽車運輸規定の制定により鐘になり、明治の末頃に電鈴になったとのこと。
あと、鉄道史とは直接関係ないが、今でもありそうな、駅員の失敗に関するエピソードをp76から一つ。西川口の朝のラッシュで、客に押されて自分も車内に入ってしまい、そのまま出発となってしまった駅員が、隣の川口駅に近付くと「皆さん、次は川口駅でございます。出口は同じ右側でございます。次で下車される方は私のあとについてお下り願います」と言ってから、右手を高々と挙げて下車していく客を誘導したとのこと。単なる鉄道エピソードを越えた、ちょっといい話だ。