中村建治「日本初の私鉄「日本鉄道」の野望 東北線誕生物語」(新書判、全244ページ、交通新聞社新書2011年2月15日発行、定価800円)
目次
第1章 26時間で東京~青森を結ぶ、初の私鉄が9年余で完成(p18)
第2章 日本初の鉄道会社が誕生し、岩倉具視が「日本鉄道」と命名(p28)
第3章 東京起点は逆転で「上野」に、攻防を経て「山手線」を開業(p80)
第4章 東北方面の分岐は「大宮」に、仙台では厳寒深夜の開業式(p130)
第5章 海岸路線に軍部が横ヤリ、3日間にわたり全通式典(p168)
第6章 山手・磐城・日光線等も建設、国有化され25年の経営に幕(p208)
東北本線、上野~青森間の全通120周年と、東北新幹線の青森までの開業に合わせて出版されたもので、扱われているのは、東北本線の前身となった、上野~青森間を開業させた日本鉄道の誕生から、路線の建設、青森までの開業、国有化に至るまでとなっている。巻頭の「はじめに」には「本書に登場する年号や人名・地名などの固有名詞は、内容の正確性を高めるため、史実に基づいた記述に努めた。一方、人物描写や鉄道風景などは、残されている伝記・写真・錦絵等を参考に、筆者の創造を交えて考察・復元したものである。その点で本書は、史実に基づくフィクション」とあり、中身の方は、史料に残っている文章を、登場人物の台詞として語らせる形となっており、歴史書と歴史小説の中間と言った作りになっている。ただ、それに寄って、読みやすいものになったかと言うのは疑問で、史料を現代語訳にした上で、引用元資料名を添えて、厳密性を保った方が良かったのでは、と思える。
それと、本書では、東京~青森間に鉄道を敷くことは当然のこととして書かれているが、どのような経緯でそう決まったのか、より確実な収益が見込まれる、東京~仙台間や、盛岡間で止めることは考えなかったのか、などについては触れておらず、掘り下げが甘いな、と思えてくる。
まあ、最初に触れた通り、東北本線120周年と東北新幹線青森乗り入れを記念しての出版であり、日本最大の私鉄であった、日本鉄道のおおまかなことを知るには手頃な書籍の出版を素直に喜ぶべきなのだろう。
なお巻末に1891年8月の上野~青森間の時刻表が付いている。