葛西敬之「明日のリーダーのために」(新書判、全255ページ、文春新書2010年4月10日発行、定価760円)
国鉄の分割民営化に一役買い、JR東海という大企業を成立させた著者による、経験を交えたリーダー論や教育論なのだが、論として読むには実例に乏しく、JR東海の屋台骨を作った人物の体験談としては、内部事情に乏しく、いずれにせよ中途半端な本。目新しい話としては、p135にある「JR東日本ハブ会社構想」という、JR東日本を新幹線保有機構の財源を元にして、「いわば「親会社」のようなもので、他のJR各社を経営的に支援するとともに、キャリア社員は五年をタームとして「ハブ会社」と子弟会社(他の六社)の間を人事異動する考え」もあった、という話ぐらいか。
本書の見開きには、「国鉄はまさに日本国の先行モデルであり、今日の霞が関や永田町が直面している問題は、私たちが30年前に目前にしていた問題と同質です」とあり、いわゆる小さな政府論が書かれているのかと思ったのだが、それについてはまるっきり触れられておらず、毎年赤字となっていた国鉄が、人員削減を初めとするどのようなコスト削減・収益アップを元にして、JRという黒字会社になったのかについて、改革前の試算などは書かれておらず、羊頭狗肉の感すらある。