憂鬱だ。
いつもの3割増し憂鬱だ。
憂鬱に憂鬱を重ね、憂鬱を塗りたくって憂鬱を乗せたような憂鬱。
僕は、朝のHRが始まる前の喧騒を見ながら思う。
月曜日と言うのは、大抵憂鬱なものである。
自殺者が多いのも、月曜日だということを最近知った。
これから始まる、土日までの辛い道のりを考えると、憂鬱になるのも致し方ないということだろう。
しかし、今、僕を憂鬱にさせているのは、そんな常日頃から思っていることとは違う。
今日は、紛れもない2月14日なのだ。
すなわち、バレンタインデーである。
そして、にぼしの日でもある。
こんなことを知っている時点で、既に逃げ道を探しているということだ。
まったくもって情けないことだ。
しかし、辛い現実を堂々と受け止める勇気など無かった。
ちなみに、我が校の靴箱には、扉的なものはない。
だから、靴箱にバレンタインチョコやラブレターが入っているというような二次元的状況は起こりえない。
たとえ、扉的なものがあったところで、本来ありえないことである。
何故なら、知ってのとおり靴箱は、靴を入れる場所だ。
そんな中に、食べ物や、まして自分の思いを書き綴った文を無造作に置いておくなど、どう考えても狂気の沙汰である。
いや、これは、僕個人として有り得ないと言っているだけで、前述の行為を批判するものでは決して無い。
第一に、どんな事情も加味せずに考えたところで、僕の靴箱に僕の靴や上履き以外のものが入っている可能性は皆無だ。
上履きような小さい棚の部分に、僕の運動靴が無理矢理押し込められている、という低レベルな悪戯をされたことなら、両手の指で数え切れないほどあるが。
無論、そんなことは今日と言う日に、何の関係も無かった。
休み時間。
とりあえず、負の連鎖しか生まない思考は一旦どっかに捨てておいて、僕は読書に専念する。
読書は快楽だ。
まるで、自分が別の世界にいるような、そういう感覚だ。
それは、風呂に浸かっているようであり、また、布団にくるまっているようでもある。
つまりは休息と安心。
そんな至高の状況を、誰かがぶち破った。
「ねーねー、S君にあげたいんだけど、どうすればいいかな?」
うん、こいつの顔を踏んで、鼻の骨を砕いてやろう。
そんな負の感情が、胸の底から嵐のように巻き起こった。
「知るか」
一言で切り捨て(たつもりになって)、読書に戻る。
「真面目な話なんだって!」
真面目な話を僕にしに来る時点でどうかしている。
そういうときは、もっと頼れる人材がいくらでもいるだろう。
いや、こうは考えられないだろうか。
頼れる人材と成り得る人物は、大抵魅力がある。
つまりは、カッコいい。
こいつはそういう人に配りたいのだ。
だから、頼れるランキングの上の方がバッサバッサとカットされて、搾りかすの上位が僕だったのだ。
廃材活用、リサイクル。
まったく……バカにするのもいい加減にしてほしい。
いや、待て。
まずは女子に相談しろよ。
心の中で突っ込みながら読書に戻る。
喚いている人間のことなど、気にかけるつもりは毛頭無かった。
帰りの会も終わり、皆はバラバラと帰りはじめる。
僕は、別クラスの友人を待つため、そのクラスの前の廊下で待機する。
そんな中、女子が男子にチョッコレートを渡す光景を目にした。
そこで僕は思い出す。
先週の金曜日、先生が帰りのHRで言っていた言葉だ。
『学校には持ってこないでくださいね』。
勿論、チョッコレートを持ってくるなという意味だろう。
なのに、何故持ってきているのだ。
僕は激怒した。
いや、嫉妬した。
学校の規則を守れだの、先生の言っていたことを守れだの、そんな考えは一切無い。
単なる、妬みだ。
このような感情が、僕の人間として、男としての格をまた一つ下げているということには、とっくの前に気付いているが、どうしようもない。
結局、学校で、僕にチョッコレートを下さる天使様がいる訳無かった。
僕は、帰宅した。
失意の帰宅。
もとから予想はしていた。
ギリギリどうにか義理はもらえる、みたいな状況ではない。
義理がもらえたら、奇跡である。
奇跡はそう簡単に起きないのだから、これは当然の結果だ。
だが、しかし、当たり前の現実こそ一番受け入れがたい。
何としても、誰かからはもらっておきたい。
もう、身内でもいい。
投げやりだった。
ジャベリンである。
そんな僕のヤケクソな願望に応えるかのように、帰宅して数分後、祖母がチョッコレートをくれた。
「アーモンドだから好きか分からんけど」
……あーもんど?
って、あのアーモンド?
そんなもの、食べられるはずが無かった。
こうして、僕の2月14日は終わりを告げた。
3月14日、それは僕にとってホワイトデーではない。
返す相手が居ないのだ。
ただの、春休みである。
何の予定もない。
いや、そういう意味では、逆にホワイトデーかもしれない。
むしろ、ホワイトデーとしか言いようがない。
何の予定もなく、手帳があれば真っ白だという意味での、ホワイトデー。
否定する余地は無かった。
───────────────────────
小説風にしてみたものの、
ほぼ実話です。
実話を元にしたフィクションです。
いつもの3割増し憂鬱だ。
憂鬱に憂鬱を重ね、憂鬱を塗りたくって憂鬱を乗せたような憂鬱。
僕は、朝のHRが始まる前の喧騒を見ながら思う。
月曜日と言うのは、大抵憂鬱なものである。
自殺者が多いのも、月曜日だということを最近知った。
これから始まる、土日までの辛い道のりを考えると、憂鬱になるのも致し方ないということだろう。
しかし、今、僕を憂鬱にさせているのは、そんな常日頃から思っていることとは違う。
今日は、紛れもない2月14日なのだ。
すなわち、バレンタインデーである。
そして、にぼしの日でもある。
こんなことを知っている時点で、既に逃げ道を探しているということだ。
まったくもって情けないことだ。
しかし、辛い現実を堂々と受け止める勇気など無かった。
ちなみに、我が校の靴箱には、扉的なものはない。
だから、靴箱にバレンタインチョコやラブレターが入っているというような二次元的状況は起こりえない。
たとえ、扉的なものがあったところで、本来ありえないことである。
何故なら、知ってのとおり靴箱は、靴を入れる場所だ。
そんな中に、食べ物や、まして自分の思いを書き綴った文を無造作に置いておくなど、どう考えても狂気の沙汰である。
いや、これは、僕個人として有り得ないと言っているだけで、前述の行為を批判するものでは決して無い。
第一に、どんな事情も加味せずに考えたところで、僕の靴箱に僕の靴や上履き以外のものが入っている可能性は皆無だ。
上履きような小さい棚の部分に、僕の運動靴が無理矢理押し込められている、という低レベルな悪戯をされたことなら、両手の指で数え切れないほどあるが。
無論、そんなことは今日と言う日に、何の関係も無かった。
休み時間。
とりあえず、負の連鎖しか生まない思考は一旦どっかに捨てておいて、僕は読書に専念する。
読書は快楽だ。
まるで、自分が別の世界にいるような、そういう感覚だ。
それは、風呂に浸かっているようであり、また、布団にくるまっているようでもある。
つまりは休息と安心。
そんな至高の状況を、誰かがぶち破った。
「ねーねー、S君にあげたいんだけど、どうすればいいかな?」
うん、こいつの顔を踏んで、鼻の骨を砕いてやろう。
そんな負の感情が、胸の底から嵐のように巻き起こった。
「知るか」
一言で切り捨て(たつもりになって)、読書に戻る。
「真面目な話なんだって!」
真面目な話を僕にしに来る時点でどうかしている。
そういうときは、もっと頼れる人材がいくらでもいるだろう。
いや、こうは考えられないだろうか。
頼れる人材と成り得る人物は、大抵魅力がある。
つまりは、カッコいい。
こいつはそういう人に配りたいのだ。
だから、頼れるランキングの上の方がバッサバッサとカットされて、搾りかすの上位が僕だったのだ。
廃材活用、リサイクル。
まったく……バカにするのもいい加減にしてほしい。
いや、待て。
まずは女子に相談しろよ。
心の中で突っ込みながら読書に戻る。
喚いている人間のことなど、気にかけるつもりは毛頭無かった。
帰りの会も終わり、皆はバラバラと帰りはじめる。
僕は、別クラスの友人を待つため、そのクラスの前の廊下で待機する。
そんな中、女子が男子にチョッコレートを渡す光景を目にした。
そこで僕は思い出す。
先週の金曜日、先生が帰りのHRで言っていた言葉だ。
『学校には持ってこないでくださいね』。
勿論、チョッコレートを持ってくるなという意味だろう。
なのに、何故持ってきているのだ。
僕は激怒した。
いや、嫉妬した。
学校の規則を守れだの、先生の言っていたことを守れだの、そんな考えは一切無い。
単なる、妬みだ。
このような感情が、僕の人間として、男としての格をまた一つ下げているということには、とっくの前に気付いているが、どうしようもない。
結局、学校で、僕にチョッコレートを下さる天使様がいる訳無かった。
僕は、帰宅した。
失意の帰宅。
もとから予想はしていた。
ギリギリどうにか義理はもらえる、みたいな状況ではない。
義理がもらえたら、奇跡である。
奇跡はそう簡単に起きないのだから、これは当然の結果だ。
だが、しかし、当たり前の現実こそ一番受け入れがたい。
何としても、誰かからはもらっておきたい。
もう、身内でもいい。
投げやりだった。
ジャベリンである。
そんな僕のヤケクソな願望に応えるかのように、帰宅して数分後、祖母がチョッコレートをくれた。
「アーモンドだから好きか分からんけど」
……あーもんど?
って、あのアーモンド?
そんなもの、食べられるはずが無かった。
こうして、僕の2月14日は終わりを告げた。
3月14日、それは僕にとってホワイトデーではない。
返す相手が居ないのだ。
ただの、春休みである。
何の予定もない。
いや、そういう意味では、逆にホワイトデーかもしれない。
むしろ、ホワイトデーとしか言いようがない。
何の予定もなく、手帳があれば真っ白だという意味での、ホワイトデー。
否定する余地は無かった。
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小説風にしてみたものの、
ほぼ実話です。
実話を元にしたフィクションです。