抜海駅は映画やドラマのロケ地としても有名ですね。今回抜海駅を訪れたのは、日本最北の木造駅舎を見ることもあったのですが、昭和58年に公開された映画「南極物語」で高倉健がたたずんでいたホームに降り立ちたいという思いもありました。
 南極物語に出てくる抜海駅の画像も持って行ったのですが、実際に撮った画像と比較すると不可解な点もあり、翌日も訪問して再度確認することにしました。以前訳あってと書いたのはこのことでした。
 しかも、宿でネット検索していると実際は天北線の恵北駅で撮影されましたとの投稿多数。そういえば、駅舎内にドラマ「少女に何が起こったか」の写真はたくさん貼ってあったが、南極物語の写真は一枚も無かったような…。
 とりあえず写真をたくさん撮り、帰宅後検証してみました。
 
●映画では借りていた樺太犬を南極に置いてきてしまったので、潮田(高倉健)が、その謝罪と代わりの樺太犬を飼い主に渡して帰るシーンで抜海駅?が登場します。ちなみに列車は登場しません。
 
●色は違うものの青い庇の先端の形や庇と側壁の接点にある断面が正方形の木材?、屋根の上に載っている工作物などすべて一致しているように見えます。
 
●4326Dの後方から撮った抜海駅。駅舎の雰囲気も背景の山も似ている。防風柵は木々が育ち見えなくなっている?土曜日だったからかすごいギャラリー。ブレたからプライバシーに配慮出来てちょうどいい。下車1名、乗車は1人もおらず。
 
●旭川寄りの踏切から、安物のカメラの望遠なのであしからず。しかし、木って40年でこんなに大きくなるのかな。
 
●抜海駅の北方面をグーグルマップで確認すると確かに木々の裏側に宗谷本線に沿って防風柵が現存していた。
 
●望遠にすると背景が大きくなるので、映画はもっと南から望遠で撮っていると思われるが、雰囲気は似ている。
 
●映画の画像の庇の下に何か文字が見える。「CRLTU」?稚内だからロシア語?ずっと分からなかったが、ようやく気付いた。「改札口」。上が少し隠れているので分からなかった。過去の写真を探したら冬に列車から撮った時の写真に分かりやすい痕跡を見つけた。縦の駅名板の「抜」の左上に板をはめ込む木製の取り付け口みたいなものが。これこそが「改札口」の案内板が取り付けてあった名残ではないだろうか。
 

●代わりの樺太犬を突き返した姉妹はあっという間に去って行き、潮田が途方に暮れるところで抜海駅のシーンは終わります。犬を受け取ったのは駅舎前ですが、ちょっと移動して撮影していますね。

 
●信号機の位置や右にカーブする線形も似ている。防風柵は木々に覆われ見えないが、さらにその後ろに山も見える。
 
●高倉健の脇の間に黄色のTのような文字が見えるが、稚内寄りのホームの先端付近にも同じのものが確認できた。さらに、左腕の向こうに黄色いものが見えるが、それも線路の間に見えるコンクリートの蓋ではないだろうか。色あせているが縁にはまだ黄色が残っている。また、反対側のホームの先端の位置や形も一致している。右側の木々に沿って立っている電信柱も同じ感じである。
 
●映画の画像の左上に「たしかに」の文字が見える。この痕跡も探したかったが無かった。意味が分からないので書き間違え?とも思ったが、ただ、ちょうどこんな看板が。「たしかに」は指差確認のこと?調べたら国鉄時代に使われていた列車発車時の確認事項らしい。タ…タブレット、シ…信号、カ…客、ニ…荷物
 
●上下ホームの両方にも「たしかに」と書かれたペイントがあった。国鉄時代からあるものだと思われます。
 
 
●上下ホームの側面にも。ありとあらゆる所に「たしかに」。かつては電信柱にも。有人時代に誰かが大ごとをやらかしたのかな。
 
 ★本当に天北線恵北駅なのか?
 これまでの検証だけで、自分的には抜海駅で間違いないと思いますが、ネットで検索すると「実は抜海駅ではありません」などと断定している検索結果が多数あります。恵北駅をネットでいろいろ検索してみると当時の画像が沢山出てきます。駅舎や風景は結構似ている感じもしますが…。
・駅舎の側面は窓ガラスではない、というか駅舎の形が全然違う。駅舎の隣には大木と小屋がある。
・ホームと反対側の構内に信号機が無い。電柱が立ち並んでいない。線路はしばらく先まで直線である。
・そもそも、昭和48年に交換設備が撤去されている。それなのに映画では信号機が稼働している。
・交換設備撤去から10年以上経っているのに映画では反対側の線路に草が全く生えていない。
・昭和52年の航空写真。左手に山は無く、右方向の線路も曲がっておらず直線である。

 

●ホーム上に小屋や木が確認できる。左手奥には建物が1棟あるのみ。映画のシーンと整合しない。

 
 航空写真は映画撮影の5年くらい前のもので、その後変わっている可能性はあるものの、以上のことから、恵北駅である可能性はかなり低いと考えます。何をもって恵北駅と言えるのだろうか?近くで他の場面のロケをしたのだろうか。何か手がかりが分かる方は是非ともご教示ください。
 ちなみに、稚内市声問村字恵北(稚内空港のすぐ南)には稚内市動物ふれあいランドというのがあって、映画に出ていたタロとジロが余生を過ごし、お墓もあるらしい。これが関係しているのかな。
 
 その2に続きます。