父の株ノートには

筆圧の強い癖のある父の字と数字が

ビッシリ書かれていました。

手術入院する日の朝まで

欠かさず書いていたようです。


そしてそのノートをみたことで

偶然ノートに父の書いたメモのようなものが

沢山 書かれていることに気が付きました。


死んだ後 しなきゃいけない事やら

死んだ後の確定申告のしかたやら

相続についての事やら


いろいろ沢山書いてあって

『なに書いてんだろ🤭』って

笑ってしまいました。


私 思わず言っちゃいました。

『ねぇ母さん 手術入院して出てきた時

 もうヨタヨタで字なんて書けなかったし

 これってきっと全部

 手術前に書いたんだよね〜。

 父さんさぁ〜

 ステージ2だし 治るって言われてたのに

 こんな訳わかんない死んだ後の準備するから

 死んじゃったんじゃない?』


母は

『お父さんは昔から 新聞とかネットとかに

 興味がある事とか いい言葉とか

 覚えておきたい事が書いてあるの見つけたら

 ノートにメモったりする人だったからねぇ。


 だから手術きまってから 

 いつ死んでもいいように

 準備したわけじゃないと思うよ。

 いつか役に立つかなぁ…と思って

 手術よりずっと前に書いたのかもしれないよ』

って言ってた。


だから そうなのかなぁ〜と

思ってみてたんだけど。


『あっ…(笑)』

遺産相続の事を書いてあるページの

欄外の所に父のメッセージを見つけた。


『少しだけど父さん名義の貯金を分けたいとか

 土地の名義を半分かえたいとかって

 母さんは言ってたけど やめよう!

 俺の財産は全て妻に譲る

 って 父さんの気持ち書いてあるよ(笑)。

 

 俺の財産…ってほど すごい財産はないぞ

 って 突っ込み入れちゃいそうだけど🤭


 父さん流の遺言じゃないの?

 まあ遺言書の役はしてないけどさ🤭

 

 父さんが全部母さんにって言ってるんだし

 もし 二次相続で税金かかってもいいよ。

 税金が もらった以上になることなんか

 ないんだし気にしないことにしよう。


 なんなら税金かからないように

 母さんが 父さんの分も長生きして 

 美味しいもの食べたり 

 旅行に行ったりして 

 少し贅沢して使っちゃえばいいんよ』


正直 今 何かを相続したいとは

思ってはいなかったものの

二次相続で 本来払わなくてよかった税金を

払うのは嫌だなぁとは思っていたのだけど

父のメモを見て そんな気持ちは飛んでった。


母はノートを覗き込み

『今 お父さんが株してた話のなりゆきで

 お父さんのノート出してきたけど

 お父さん入院してから初めてノート開いたし

 気が付かないまま いつか捨てられてたよ

 遺言のつもりもないと思うよ』

と言った。

『今開いたのは 父さんが見せたくて

 ノート見せるような話をさせたのかもよ。

 きっと母さんに全部相続してほしいんだよ』

と言っても 

『私長生きする予定だし』


『あっ…

 ここにも メッセージ書いてあるよ』 


やっぱり欄外に書いてあったのは


『我が人生に悔いはあれど 後悔はなしって』


『それこそ 誰かか言ってた言葉が

 いい言葉だからメモった…とかじゃない?』

って母。


『まあ それっぽいけど

 誰かが言った いい言葉を覚えてて

 メッセージ残したかもよ。

 後悔はなし…の後に

 ありがとうって書いてあるし

 母さんにメッセージみたいだね😊』


『えっ?』

って 覗き込んだ母でしたが

『それこそ それを言った人が

 我が人生に悔いはあれど 後悔はなし

 ありがとうございました

 とか言ったんじゃない(笑)』

って…。


それも あるかも…


もしものことがあっても

戸惑わないために書き写したのであろう

死後の手続きやら遺産相続やら 

その他 いろいろなことは


癌がわかってから

死も意識して書きうつしたのか

まだ 癌もわからない時に

なんとなく いつかのため書きうつしたのか 

それは 父だけが知ってる事なのですが


私が妹に

『なんか 父さんらしいよね?』

ってノートを見せたら

『我が人生に 悔いはあれど 後悔はなし

 って ホント父さんらしいよ。

 絶対 ありがとうって 死んだと思うよ。

 ありがとう…って母さんに残した気がする』

って。


本当のところは わからないけど

母は 妹にもそう言われて

嬉しそうでした。


私は この両親の子どもに生まれて

本当に良かった。

父と母に感謝です。


あ~ぁ そう思えば思うほど

両親のような夫婦になれなかった事が残念です。


どんなに仲良くしてみせても

内心はモヤモヤ

簡単に裏切られた記憶は なくならないから。