年が明けて 生きる気力をなくし

生きるのを拒否しているかの様な父に

生きる気力を戻してほしくて

急いで退院した後 

主治医の先生がおっしゃった通り

父はだんだん弱りで

結局 家に戻って命が尽きるまで

わずか1ヶ月ちょっと…

2ヶ月も生きられませんでした。



退院の時 主治医の先生から

父の肺に水が溜まってて寝ている状態が

今 一番楽な体勢だと聞かされる前までは

いつか歩行器を使って歩けるように

せめて車椅子で出かけられるようにと

私は ネットで調べて リハビリのつもりで

手足を動かしたりマッサージしたり

父が少しでも自分で動けるようになるように

頑張ってしていたのですが


動かすのは痛いだろうし 疲れるだろうし

リハビリしても 車椅子にも乗れないし

自力で起き上がることすらできないし

リハビリしても ただ父を苦しめるだけなら

手足を動かしてあげることは無意味に思えて

ほとんどしなくなりました。


それなのに家に帰ってきてから父は

『(私)ちゃん リハビリしてくれよ

 手足が動かなくなると 

 この先ずっと歩けなくなるから』

と私に言ってくるくらい

生きる気力をなくしていませんでした。 

父にやる気があるのに辞めてはいけないと

リハビリを再開したくらいでした。

動かさないと 硬直して動けなくなる

身体の硬直がすすめば 痛みが増すから

手足を動かしたりマッサージするのは

硬直予防になって父のためにもなると

妹に言われたので『無意味ではない』と

頑張れました。


ただ調子の良い時は 元気だった頃のように

会話ができたし 微笑んだり

時には我儘を言ったりもしましたが


調子の悪い時は無口で 

話すことすら辛そうに 言いたいことを

『お茶』『寒い』『痛い』と言葉少なく伝え

伝わらないと『あ~っ』と不機嫌そうに

しました。


元気そうに見えていたのは しばらくだけで

やはり だんだん弱り…なのでしょう。

だんだん 調子の悪そうな日が増えました。


しばらくすると 父の腕の皮膚が

水ぶくれのように ぼよぼよしてきて…

人の身体がこんなふうになるんだと

驚くほど

見た目にも父の身体の異変を感じました。


訪問医の先生に

『肺だけでなく 他の所にも水がたまって

 本人も苦しいはずです。

 尿も出にくいので 入れる水分を減らしたい

 点滴の量を減らす事を検討してほしい』

と 言われました。


前にも書きましたが

父は 点滴で生きる為に必要な

栄養と水分を取っていました。

最低限必要な量だけ取っているのに

減らすとどうなるんでしょう。


先生は 同じ点滴で 1日に入れる量のみを

半分にしたいと言われました。

それでは 必要な栄養が半分しか取れません。


点滴の量を減らして 同じだけの栄養を

その中に入れることは可能だそうです。

ただし血糖値が上がったり 

他にも新しい症状が出てくる可能性が高い。

かといって このまま同じ点滴を

同じ量続ければ

水分が 更に父の身体に溜まって

さらに父を苦しめることになるのです。


栄養が取れなくなるって事は

父が弱っていくって事ですよね…だとしても

父を苦しめたくはありません。


先生の提案通り 1日に入れる点滴の量のみ

半量にして 今まで通りの点滴を

入れることにしました。


点滴の量が半分になると 想像通り

父は更に元気ではなくなりました。

仕方ないです。栄養が足りてないのですから。


あんなに 私にしてほしいと言った

足のマッサージや 手足を動かすリハビリは

かなり痛がり できなくなりました。



少しでも力が入ると痛がるので できるのは

本当に軽くさする事くらいでした。


動かさないから硬直がすすんだのかな?

痛がる事が増え 夜中中さする日もあり

痛み止めの座薬も効かなくなりました。


父が痛がって可哀想だけど 

ずっと さすっていては 夜眠れないと 

母が相談すると 訪問医の先生に

『娘さん達と 医療用の弱いモルヒネを

 入れる事を相談してください』

と言われたそうです。


『もう苦しい思いも 痛い思いも

 たくさんしているので

 相談する必要はないです。

 少しでも楽になるなら入れてください』

と 母は即答したからと 私と妹には

事後報告がありました。


次の日から一定時間毎に 点滴の液の中に

モルヒネが入る機械がつきました。

一定時間毎に薬は入るのですが

夜中とか それでも痛がって暴れる時は

ボタンを押すと さらに少しモルヒネが

追加される仕掛けになっていました。


モルヒネが入って最初に泊まった時

父のそばで寝ていて

こんなに眠れたことはないくらい

眠ることができました。

妹の病院では あまり使わないらしく

聞いても妹はあまり詳しくなかったのですが

モルヒネって 麻薬だから強いのかなぁ…と

私は思いました。


定期的にモルヒネが入っているからか

痛がらず静かだったけど 

さらに口数が減り 寂しくもありました。

モルヒネを入れていても 夜中に急に

声を出して痛がることもありました。


追加のモルヒネを入れたら

楽になるのかもしれないけど

すぐモルヒネに頼るのはなんとなく嫌で 

私は いつも通り足をさすったりしました。


『モルヒネって体に良くないんだよね。

 お父さんは 体に悪いこと嫌いだし

 追加で入れるのは抵抗があって、

 さすったりしてる』

と、妹に話すと

『よくなくても 痛くて苦しいよりいいよ

 まだ元気になって生きられるならともかく

 この先 いつ突然 父さんが亡くなっても

 おかしくない状態なのだから

 痛かったり苦しかったりする時は

 楽にしてあげよう。

 その方が お父さんのためだよ』

と言われました。


たしかにそうだ…

こんな状態になってても まだ

父がながくないことを受け入れられていない

自分を自覚しました。