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事業計画の策定

事業計画の策定

買収のための金融機関の目処は何とか立った。

しかし、問題は大林の業績だった。何しろ、7期連続の赤字決算。その上、決算を担当してきた東京の鵜の木公認会計士事務所が、あろうことか毎年1億以上の粉飾決算を数年間も続けていたのだ。クーポン回収で3000万以上、関連会社の未回収金を8000万。毎年こんなずさんな決算報告で、お咎めなしを続けてきた税務署とは、いかにいい加減なところか良くわかる。つまりは、公認という名前で書類を右から左に回しているからだろう。中身を検証すらしていないのは明らかだった。

しかし、この重要な時に、「実は粉飾でした」とバカ正直に提出すれば、今回の融資は間違いなく流れる。それどころか、今後の運営にも支障がでるだろう。如何に正義感が強い私でも、この虫唾が走る事実を、今回はグッと飲み込むしかなかった。



毎年売上を下げ続けてきた大林を、この景気状況の中で、突然V字回復させることはマジックでも不可能だった。それは、たとえ金融機関でも解っているだろう。そうであれば、無効3年間は売上を大幅にアップさせるような計画は跳ねられることは間違いない。

第一、どこを探してもそんな要素は見つからない。その上、売上に結びつくポイントは、すでに着手していた。もし、この効果が出なかった場合、売上計画は相当に厳しくなる。私は、誰もいなくなった事務所の一番奥の自席で、暫くパソコンの画面をじっと見つめながら、グループの営業体制を頭の中で画きながら、各営業マンに数字をあてはめていった。

このホテルグループの、この街の観光業の将来が掛かっている・・・・。もし、失敗したら・・・。

つい、弱気になる自分を振り払うように、外の空気を吸いにホテルの外に出てみると、東京とは比べ物にならない程の無数の星が、夜空いっぱいに輝いていた。

「もう、子供たちもねてるだろうなあ・・。」

自分らしくもない思いが頭をよぎった私に、思わず苦笑していた。「マズイ。大分弱気だな・・。」

「こんな時は、戻って寝るに限る。」



カウンターの夜勤さんに挨拶を入れて、ホテルを後にした。


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