月に向かって手を伸ばしている雄輔君に、しばらく見惚れていた。
やがて人の気配に気づいたのか、彼がこちらを振り返った。
『あ…』
『……。』
しばしの沈黙…。
風に揺れる木々の音だけが聞こえる…。
『何…してたの?』
先に口を開いたのは、私の方だった。
『月が綺麗だったから…』
雄輔君の側まで行って、同じように月を見上げた。
『こうやって…充電してたんです♪』
さっきと同じように、月へと手を伸ばす。
彼の大きな手が、優しく月を掴まえているように見える…。
私は思わず、クスッと笑った。
『変…ですかね?』
『ううん、全然。』
心が綺麗な人なんだと思った。
本当に純粋で、優しい人なんだと…。
『…さっき、なんで私を抱きしめたの?』
あの時の事が気になって…私は聞いてしまった。
『……。』
しばらく黙っていた雄輔君が…ようやく口を開いた。
『自分でも…よく分からないんです。』
『……。』
『あの時…ただ、透子さんを守りたくて…』
自分の中に答えが見つからないのか、少し困った表情…
『お客様なのに…でも透子さんは、他の人と違ってて…』
真っ直ぐな瞳と、目が合った…
『気がついたら目で追ってて…』
『…雄輔君?』
『俺の中で…透子さんの存在が大きくなってるんだ。』
『……。』
視線を逸らしたいのに…目が放せない。
私を見つめる、真っ直ぐな瞳。
その瞳に吸い込まれるように…2人の距離が縮まっていく…
暗闇の中で
2人の唇が重なった…。
-つづく-