地元の人間にとって、この桜の木は特別だった。
そしてそれは、この3人にも同じ事だった。
「そんな…っ!!」
「桜の木を切るなんて…」
ここの皆がどれほどあの木を大切にしていたか、3人は知っていた。
そしてあの桜の木は…はなの本体。
人間の姿は仮の姿であり、はなはあの桜の木自身。
木がなくなってしまえば当然、はなも…。
「出て行けぇーッ!!」
住民側の反対を、スーツを着た男性が必死に説得する。
「今すぐ切るわけではありませんから…っ」
学校を経てる話は前から出ていた。
しかし木を切るという話が出てからは、なかなか計画が前に進まないでいた。
「今日はこの木を調べに来ただけです。」
専門家数名が同行し、桜の木の調査に来ていた。
木の側で何かをしていた作業着姿の男達が、こちらに向かって説明を始めた。
「この木の成長は…既に止まっています。」
「こんなに立派に立っているじゃないかッ!!」
住民の1人が怒声をあげた。
「しかしこの木自体は、もう枯れ始めているんですよ。」
中から…目には見えない所で、この木は枯れ始めているというのだ。
「おそらくこの数年間、この木の桜は咲いていないのでは…?」
「……っ。」
男の言葉に、住民達は黙ってしまった…。
「桜…咲いてないの?」
「たしかに…もう10年以上になる・・・・・。」
10年以上前から、この木の桜は咲いていないらしかった。
「このまま放っておいても、あとは朽ちていくだけの木ですよ?」
だから残しておいても意味が無いと…。
「この木は特別なんだ…。」
「頼むよ…ッ。」
話し合いに決着は付かないまま、スーツ姿の男達は帰っていった。
「…どうなっちまうんだよ。」
「……。」
3人はただ、呆然と立ち尽くしていた。
しばらくすると住民達も帰り始め、広場には3人だけが残っていた。
『やれやれ…やっと静かになりおった。』
今まで姿を現さなかったはなが、ようやく3人の前に出てきた。
「はな、今の話…」
『聞きたくなくても耳に入るわっ。毎回この場所で話されればな…』
はな自身も、この木が切り倒されるかもしれないという話は、随分前から知っていたようだ。
「……。」
『まぁ、なるようにしかならんじゃろっ。』
いつも通りのはな。
確かに…まだ切り倒されると決定したわけではない。
住民達も反対しているし、もしかしたら気持ちが通じて残してくれるかもしれない。
暗くなっていては駄目…3人もいつも通りにしようと決めた。
「んじゃ、また来っからな♪」
『お前らも暇じゃなぁー…』
いつものように天邪鬼なはな。
困ったように笑っている。
3人と過す時間が、はなにも楽しみになっていた。
しかし数日後、事件は起きた…。
-つづく-