3人の撮影は順調に進んでいた。
長期の撮影といっても、ずっとこの場所に留まるわけにはいかない。
その為この場所と東京を、行ったり着たりの繰り返し。
「はなちゃーんっ♪」
『今日は直樹だけか?』
「うん。」
毎回3人が一緒というわけではなかった。
この日、上地とつるのは別の仕事。
今日は野久保1人だけが撮影に来ていた。
「これ、一緒に食べない?」
『それは何じゃ?』
「チョコレートだよ♪」
甘くて美味しいんだよと言って、箱ごとはなに差し出した。
はなはそこから一粒手に取ると、しばらく眺めてから口に入れた。
『!!』
「ね?美味しいでしょ?」
それから2人は木の側に座って、のんびりとチョコを味わっていた。
「はなちゃんってさ、人間には姿が見えないんだよね?」
野久保はずっと疑問に思っていた事を口にした。
「でもなんで…僕らには見えるの?」
最後の一粒のチョコを口の中に放り込むと、はなはゆっくり話し始めた。
『昔から、大人には見えていなかった。でも…子供達には見えておった。』
それはきっと、子供達の心が純粋だったから…。
小さな子供達はもちろん、時には10代後半で見えていた人間も稀にいたという。
『でもいつからか…子供達にも見えなくなっていた。』
時代や環境が変わってしまったせいか、今では子供達ですら見えていないのだ。
『だから3人は…バカが付くほど純粋なんじゃろうな。』
はなが笑って言うと、野久保もつられて笑顔になった。
それから何日かが過ぎ、撮影もいよいよ終盤。
この日は羞恥心の3人とも揃って撮影に入っていた。
「休憩入りまーすっ!!」
3人はいつものように、はながいる桜の木がある広場へと向かっていた。
「…ん?」
「何だか騒がしいですね?」
「何かあったのか…?」
いつもは人がいない広場に、今日はたくさんの人が集まっていた。
3人が駆け寄ると、その人だかりは地元の人達だった。
「おっちゃん、何かあったの?」
何度も訪れている間に、親しくなった人達もいた。
上地は人だかりの中にいたその内の1人に話を聞いてみた。
「あぁ、君達か。実は…」
「反対ーッ!!」
「今すぐここから出て行けぇーッ!!」
大きな声で叫ぶ住民達。
人だかりの奥には、作業着姿の人達が数名。
スーツ姿の男性が先頭に立ち、住民側と話をしている。
「いったい何があったの?」
「…随分前からあった話だ。」
昔はこの広場に、小学校が建っていた。
しかしそれは火事で焼けてしまい、崩れてしまった。
「でも今、もう一度この場所に学校を建てようという話が出てるんだ。」
「いいんじゃないの?ここ広いし…。」
学校を建てる話は、住民側も賛成だった。
しかし1つだけ…反対する問題点があった。
「あの桜の木を…切らないといけないって言うんだ。」
「…え?」
広場の中央に咲き誇る、大きな大きな桜の木。
学校を建てるには、この桜の木が邪魔だというのだ…。
-つづく-