「ところで君、名前何ていうの?」
上地が少女に訊ねると、少女は再び黙ってしまった。
「ないの?」
『……。』
「そりゃ困ったなぁー?」
「名前がないと、何て呼んだらいいか分かりませんもんねぇ?」
「え?」
上地が振り返ると、そこにはつるのと野久保がいた。
なかなか戻って来ない上地を探していたらしく、さっきの話も2人は聞いていたようだ。
「どうする?雄ちゃん?」
野久保が聞くと、上地は桜の木を見上げた。
そしてしばらくの沈黙の後…
「…はな。」
「花?」
「そう。桜の花だから、はなっ!!」
そう言うと、上地は笑顔で振り向いた。
「まぁ桜だからサクラって言わなかっただけでも…」
「ちゃんと考えた結果なんでしょうねぇ…;」
上地は少女の目の前まで来ると、
「よろしくな?はなっ!!」
『…はな?』
「そうっ。君の名前♪」
”はな”と名付けられた桜の精霊の少女。
この日3人は、はなと友達になった。
翌日、3人は午前中から撮影に入っていた。
「はなぁーッ!!」
『…雄輔?』
撮影が休憩に入ると、3人はすぐにはなの所へ行った。
「はなちゃん、おはよ♪」
『おはよう。直樹。』
「なんでお前ら…いつも走って行くんだよ…っ;」
上地と野久保に遅れて、つるのが少し息を切らして到着。
「なんか雄ちゃんにつられちゃって…」
『体力無いのぉ?つる兄。』
「う…っ;」
人間嫌いのはなが、3人の人間と友達になった。
しかし、彼女の性格は…天邪鬼。
『仕方が無いから、友達になってやるっ。』
突き放した言い方だが、本当は少し嬉しかった。
100年以上生きてきて出逢った…不思議な3人の人間。
「…ところでさ~、はな?」
『何じゃ?』
「なんでつる兄だけ”つる兄”なの?」
100歳を超えるはなから見れば、3人ともまだまだ子供。
上地と野久保の事は呼び捨てなのに対して、何故かつるのだけ違っていた。
『お前ら2人がそう呼んでいるじゃろぅ?』
2人の真似をして呼んでいる…ただそれだけだった。
「写真撮らねぇ?」
つるのが自分の携帯を取り出すと、上地と野久保も同じように自分の携帯を取り出した。
「はなちゃんも一緒に…」
『何じゃ?それは?』
3人が手に持つ携帯を、はなは不思議そうに見つめている。
「何って…携帯。」
『…けいたい?』
「はな知らねぇのっ!?」
『知らんっ。』
長く生きてはきたが、ずっと人間たちの事には興味が無かった。
「これからいろんな事、教えてやるよ♪」
大きな桜の木をバックに、4人は笑顔で写真を撮った…。
-つづく-