・記憶に焼きつくアイデアには、6つの共通原則がある。①単純明快である、②意外性がある、③具体的である、④信頼性がある(アイデアを、相手に検証してもらって信頼性を証明する。レーガンは統計で経済の停滞ぶりを示す代わりに、「投票する前に、あなたの暮らしが四年前より良くなったかどうか自問してください」と言った)、⑤感情に訴える、⑥物語性がある。
・「知の呪縛」とは、いったん何かを知ってしまったら、それを知らない状態がどんなものか、うまく想像できなくなること。「知の呪縛」から解放されるためには、方法は二つあり、一つは何も学ばないこと、もう一つは自分のアイデアを作り変えることだ。本書では、アイデアを作り変えて「知の呪縛」を打ち負かす方法を述べる。その際、最強の武器となるのが前述の6原則である。

(単純明快である)
・「単純明快である」とは、アイデアの核となる部分を見極めることだ。アイデアの核となる部分を見極めるとは、アイデアから余分なものを剥ぎ取って、1番大切な本質を向き出しにすることだ。大切な見識を際立たせるために、多くの素晴らしい見識を切り捨てるのだ。
・アイデアを相手の記憶に焼き付けるには、二つのステップがある。第一のステップは、核となる部分を見極めること。第二のステップは、SUCCES(記憶に焼き付くアイデアの6原則)チェックリストを使って核となる部分を言葉にすること。
・「単純明快さ」とは、「誰にでもわかる」、「最大公約数」、「簡単に」と言ったことではなく、単純明快さに大事なのは平易化ではなく、的確さと優先順位である。
・「リードの埋没」とは、記事の最も重要な要素を記事の後ろの方に埋もれさせてしまうことだ。核となる部分を見極めることも、リードを書くことも、強制的な優先順位付けに他ならない。
・人間は不確実なことがあると、それが何の関係もないものでも判断停止に陥る可能性がある。優先順位は、果てしない決断の苦悩から人々を救う。核となる部分を見極めることが大切なのはこのためだ。核となるメッセージは、何が大切かを思い出させ、誤った判断を予防する。
・「単純明快である」とは、核となる部分+簡潔さが必要である。ただ簡潔さを目指しても仕方がない。簡潔だが、核心をついている必要がある。
・私たちの多くは何かしらの専門家だが、専門家というのはニュアンスや複雑さに魅力を感じるものだ。そこに「知の呪縛」が生じる。私たち専門家にとって、インパクトの強いフレーズを連呼したり、誰にでもわかる話をしていると思われることは不本意なことだ。簡潔化が高じて単純化するのが怖いのだ。だから、「単純明快さ」ということの真の価値を知る必要がある。
・ことわざや金言は、単純明快だが深い。つまり、記憶に焼き付く簡潔さと、影響を及ぼすだけの深い意味のあるアイデアである。単純明快で優れたアイデアは、洗練された的確さと実用性を備え、ことわざに似た役割を果たす。
・「三つ言うのは、何も言わないのと等しい」、「50個もボタンのあるリモコンでは、チャンネルを変えるのもひと苦労」
・深いアイデアを簡潔にするためには、短いメッセージにたくさんの意味を詰め込まなくてはならない。その方法は、すでに聴き手の既存の記憶領域にあるものを活用する。
・全てを完璧な正確さで、今すぐ伝えたい。誰でもそう思ってしまう。だが本当に役立つ情報だけを与え、追加情報は後から小出しにすべきなのだ。「株主利益の最大化」は、正確で、CEOにとっては役立つ行動指針かもしれないが、客室乗務員にとっては役に立たない。「最格安航空会社」と言うフレーズは、とっつきやすいが正確ではない、だが、客室乗務員の実務において判断の役には立つ。
・類推は、相手がすでに知っている概念を呼び起こすことによって、簡潔なメッセージの理解を可能にする。
・類推は概念の理解を促すばかりか、新しい考え方の土台にもなるので非常に役に立つ。良い比喩は「創造的」である。「新たな認知、説明、発明」を生み出す比喩を「創造的な比喩」と呼ぶ。

(意外性がある)
・本章では二つの重要な問題について考える。一つは、「どうやって関心をつかむか」と言う問題、もう一つはこれと同じくらい大切な「どうやって関心を繋ぎ止めるか」と言う問題だ。この二つの問題の解決を理解するには、驚きと興味という二つの基本的感情を理解する必要がある。この二つは、もともと記憶に焼き付きやすいアイデアに共通する感情だ。

「どうやって関心をつかむか」
・意外性のあるアイデアが記憶に焼き付きやすいのは、驚きが注意を喚起し、考えさせるからだ。普段より高まった注意力と思考力が、意外な出来事を記憶に焼き付ける。驚きな関心を惹きつけるのだ。この驚きの威力を利用すべきだ。
・核心的メッセージに役立つ形で驚きを利用すれば、大きな効果が期待できるが、大きな驚きばかり追求すると何を言いたかったか全くわからなくなってしまう場合がある。
・アイデアを記憶に残すためには、驚きだけでは不十分である。驚きとなるほどと思えるような洞察も必要なのである。
・これまでの内容を踏まえ、アイデアを記憶に焼き付くものにするには、次のプロセスを辿ると良い。①自分が伝えるべき中心的メッセージを見極める(核となる部分を見極める)、②そのメッセージの意外な点を探し出す(核となるメッセージが言外に示す意外なことや、当たり前のようなのになかなか実現しない理由など)、③ドキリとさせる意外なメッセージの伝え方で聴き手の推測機械を破壊する。推測機械が作動しなくなったら、今度はその修正を促す。
・常識のように聞こえるメッセージが、右の耳から左の耳へ抜けていくのは当然だろう。危ないのは、常識のように聞こえても、実はそうではないことが多いことだ。フーバーアダムズやサウスウェスト航空の例がまさにそうだ。その場合、メッセージの常識に反する部分を曝け出すことは、伝えるものの仕事となる。
・メッセージを記憶に焼き付けるためには、常識を脱して非常識まで達しなくてはならない。
・ジャーナリズム基礎講座。「来週の木曜は休校となる」と言う正しいリードを示すことによって、生徒の頭にあったジャーナリズムのイメージに素早く喝を入れ、もっとよく働くようにした。

「どうやって関心を繋ぎ止めるか」
・書き手の天文学者は、「土星の輪は何でできているのか?」という謎を生み出すことによって、塵に興味を持たせた。しかも、すぐに結論を明かすのではなく、科学理論や実験の説明が詰め込まれた20ページの文章を読む間、ずっと関心を繋ぎ止めた。
・好奇心とは、疑問を解消し、曖昧な状況をはっきりさせようとする知的欲求だ。ストーリーは、この普遍的欲求を逆手に取り、疑問を提示して状況を曖昧なままにする。
・映画「大逆転」では、バレンタインとデューク兄弟の「ターニング・ポイント」が観客の好奇心を掻き立てる。抜け目ない詐欺師のバレンタインが、商品仲買人としてどんな腕前を見せるか、と。
・「次はいったい何が起こるのだろう」、「この先、どうなるんだろう」。私たちは、この疑問への答えを求める。その欲求が私たちの関心を持続させるのだ。
・好奇心が生じるのは、自分の知識に隙間を感じた時である。この隙間を埋める前には、隙間を作る必要がある。
・メッセージの必要性を相手に納得させるための秘訣は、まず欠けている知識に光を当てることだ。
・コミュニケーションの効果を高めるためには、「どんな情報を伝えるべきか」から、「どんな疑問を抱かせたいか」と言う考え方に切り替える必要がある。
・核となるメッセージはトランジスタラジオという夢である。井深大は、このメッセージに意外性を持たせ、優秀な技術者たちの好奇心と興味を掻き立たせるために提案したのは、「ポケットに入るラジオ」だった。この言葉は、人の関心を掴む意外性と関心を繋ぎ止める知識の隙間に光を当てる良い例である。

(具体的である)
・抽象的であれば、アイデアの理解や記憶が難しい。同じ抽象的表現でも人によって全く違う解釈をすることがあるから、他人の行動と調和させるのも難しくなる。具体的であれば、こうした問題を避けられる。これこそ、イソップが私たちに残した最大の教訓かもしれない。
・自然環境保護のため、従来は「ドルとエーカーの戦略で、土地を買い上げて保護してきた。この方法は、購入した土地という具体的な成果が見えるため、後援者や寄付者、従業員から受けが良かった。一方で、保護すべき広大な土地を「ドルとエーカー」の戦略では保護しきれないという欠点があった。そこで、地主から「保護地役権」を買い取るという方法に切り替え、「ドルとエーカー」の戦略よりも広い面積を保護できるようになるが、欠点としては、土地を購入するわけではないので具体性に欠け、後援者や寄付者の寄付金が下がり、従業員の士気も下がる可能性があった。新戦略の打開策として、具体性を持たせるために、環境保護区に名前をつけ、その景観を10年間で50区保護するという目標を立てた。
・状況や解決策が具体性を失っても、自分たちのメッセージを曖昧化させてはならないと気づいた自然管理委員会は賢明であった。具体的であることは、記憶に焼き付くアイデアに欠かせない要素なのだ。
・具体的であることは理解を助ける。既存の知識や認識を土台に、より高度なより抽象的な洞察が得られる。抽象性には、何らかの具体的な土台が必要だ。
・偏見という抽象的なアイデアについて学習させるため、実際に茶色い目の子と青い目の子に優劣があると宣言し、子供達に偏見を体験させた。友人が突然自分を嘲笑う光景、首輪の感触、絶望的な劣等感、鏡で自分の瞳を見た時の衝撃。
・なぜ私たちは最も簡単に抽象性に囚われてしまうのか。それは、初心者は具体的な細部を具体的な細部として認識する。一方で、専門家は高度な洞察力があるだけに、抽象的で高度な話をしたがるからだ。作業員と設計者にも同様なことが言え、たびたびコミュニケーション不良に陥る。解決策としては、設計者が行動を改めることだ。1番重要で効果的なコミュニケーションの場は物質つまり機械である。機械のことはだれもがよく理解している。だから、設計図上で解決するのではなく、機械のレベルで問題を解決すべきなのだ。この物語の教訓は、「物事を優しく噛み砕く」ことではなく、だれもが流暢に話せる「普遍的な言語」を見出すことだ。その言語は自ずと具体的なものになる。
・研究者と顧客の欲求は必ずしも合致しない。研究者は技術の限界に挑戦し、複雑で高性能な製品を開発したがるが、顧客が通常求めるのは手軽で信頼できる製品だ。ストーン・ヤマシタは、ヒューレッドパッカードとディズニーを繋ぐため、プレゼンテーションではなく、展示施設による技術の紹介を行い、強烈な感覚的体験によって抽象的なアイデアに具体性を与えた。この展示には2種類の観客がいた。一つはディズニーだ。ディズニー経営陣は技術に関しては「素人」だから、HPの技術が彼らにどう役立つかは具体的に示す必要があった。もう一つの観客はHPの従業員、とりわけ技術者だ。彼らは素人ではない。しかし、技術が具体化されることで、専門家チームの強調を促した。
・具体的であることが脳の力を動員し、焦点を絞り込ませることができる。「白いものを思いつく限り書き出しなさい」と「冷蔵庫の中の白いものを思いつく限り書き出しなさい」の質問に対して、どちらも同じくらいたくさん書き出すことができるはずである。
・カプラン1人が投資家らの質問攻めになるはずの会議を、ブレーンストーミングに変えたのは、えび茶色の書類鞄であった。彼らの思考を集中させ、既存の知識を発揮させる一つの方法だったのだ。その結果、聞き手の態度は受け身で批判的なものから、能動的で創造的なものへと変わった。
・書類鞄の存在が投資家のブレーンストーミングを促したのは、私たちが「冷蔵庫の白いもの」に限定した方が色々なものを思いつきやすかったのと同じだ。書類鞄の大きさを目の当たりにすることで、彼らの頭に次々と質問が閃いた。それは、「ポケットに入るラジオ」と言うアイデアを得たソニーの技術者がしたのと同じことだ。
・具体的であることが生み出す共通の「場」は、人々の協力を可能にする。具体的な話は彼らを共通の場に立たせてくれるからである。

(信頼性がある)
・アイデアに信頼性を付与する権威には、2種類の人物像が頭に浮かぶ。1つ目は資格や肩書を山ほど持った専門家だ。もう一つは、タレントや有名人など、人々が憧れる人物だ。このような権威者に信頼性を与えてもらえない場合は、反権威者の信頼性を利用すれば良いのだ。地位やステータスがあるからではなく、誠実で信用できるからという理由で、反権威者は、時に権威者に優る。
・アイデア自体の信頼性を高める方法は3つある。①1つ目は、細部の鮮明な描写である。細部の鮮明な描写は、内在的信頼性を生み出す。
②2つ目の方法は、統計を利用することだ。しかし、統計数値は抽象的な概念であるため、記憶に残りにくい。また、統計で算出されたデータの数値自体にあまり意味がなく、関係性を認識することが重要である。
抽象的な概念である統計を、感覚的に理解させるような工夫は2つあり、1つ目は統計で算出された値を体験させたり、実演することで感覚に訴える方法である。2つ目は、統計に実感を湧かせる方法としては、人間的で日常的な文脈の中に置くことである。例えば、協調性にかける企業より協調性に欠けるサッカーチームに例えることで、調査結果がどのくらい協調性がないのかイメージしやすくなる。また、無線ネットワークを導入することの費用対効果を考える上で、従業員一人当たり年間501ドル分の付加価値を生み出されるかどうかを議論するより、従業員の生産性を1日に1分か2分高めることができるかどうかを議論する方がずっと簡単に投資効果を評価できる。
③3つ目は、ある種の事例を用いることである。それは、「シナトラ・テスト」なる試験に合格する事例である。シナトラ・テストに合格する事例とは、それだけでその分野全体に通用する信頼性を確立できるものだ。例えば警備会社の場合、大量の金塊保有で知られるフォートノックス陸軍基地と契約を結べば、どこでも契約が取れるだろう。
・最後に、まだ触れていない信頼性の源がもう一つある。それは、顧客に自ら真意を確かめさせるやり方である。この「検証可能な信頼性」は、聴き手が「試してから買う」ことを可能にするため、信頼性を大きく高めることが可能である。

(感情に訴える)
・かつてマザー・テレサはこう言った。「大衆を見ても私は行動しない。個人を見た時に私は行動する」私たちの心の中では、大衆より個人に軍配が上がるのだ。
・統計について考えると、思考が分析的になるため、感情的になりにくい可能性が高い。人々を行動に駆り立てるのは、ロキアの窮状に対する感情的反応である。
・前章では、アイデアの信頼性を示し、信じてもらう方法を考えた。信じてもらうことは大事だが、それだけでは十分でない。行動を起こさせるためには、心にかけてもらう必要がある。
・アイデアを心にかけてもらうための3つの戦略
①関連付けを利用する
・ある用語への関連付けが、あるときは的確に、あるときは粗雑に扱われると、言葉の威力もその根底的概念も薄まってしまう。感情に強く訴えるアイデアや概念は、何かと乱用されることが多い。こうした乱用を「意味の拡張」と呼んでいる。
・心にかけて欲しければ、相手が心にかけていることを利用すべきだとわかる。皆が同じものを利用したら、軍拡競争が始まってしまう。それを避けるには、別の場所で勝負するか、トンプソンのように自分のアイデア独自の関連付けを見つけることだ。彼は「試合の尊重」という言葉によって、意味拡張を避けながら、人々に配慮を促すアイデアを表現したい。
②自己利益に訴える
・心にかけてもらうためには、メリットの大きさを訴えるより、メリットを実感させることが必要である。お金持ちになれるとか、異性にモテるようになるとか、魅力的な性格になるなどと約束しなくても、相手が手軽に実感できるほどほどのメリットを約束すれば良いということだろう。しかし、自己利益は相手の心を動かすこともあれば、逆効果の場合もある。人が意見を決める際に考えるのは、「自分にどんなメリットがあるか」ではなく、「自分の集団にとってどんなメリットがあるか」だからだ。
・意思決定の二つの基本的モデルを提案している。一つは、結果を計算するモデルだ。人は選択肢を見比べ、それぞれの価値を判断し、最も大きな価値をもたらす選択肢を選ぶ。このモデルは経済学における意思決定の標準的な考え方で、人間を利己的で理性的な存在とみなしている。もう一つのモデルは、人は自分らしさに基づいて意思決定をすると仮定している。ここでは人は「自分は何者か」、「自分はどういう状況にいるのか」、「自分と同じような人々はこういう状況でどうするのか」を自問する。
③アイデンティティに訴える
・「テキサスを怒らせるな」というスローガンの元、「本当のテキサス人はポイ捨てをしない」というメッセージを訴え、南部の男たちにゴミのポイ捨てを心にかけるようにさせた。理性的に自己利益に訴えるよりも、アイデンティティに訴える方が南部男の反応は大きいと考えたこのキャンペーンは成功した。

・知の呪縛を避けるためには、「なぜ?」という問いかけを繰り返し、アイデアの根底にある核となる価値、つまり核となる原則を思い出す必要がある。知識のある専門家と知識のない素人の気持ちが通じ合い、具体的で深い関連付けへと移ることで知の呪縛から抜け出せるのだ。
・ビジネスの世界では、個々の事柄より全体的な状況が重視されがちだ。全体を重視するという知的な作業が、思いやりの心を邪魔する。

(物語性)
・物語は優れた教材だ。状況に惑わされて判断を誤る危険性や、それまで気づかなかった因果関係、ためになる意外な問題解決法の実例を示してくれる。
・信頼性のあるアイデアは信じてもらえるし、感情に訴えるアイデアは心にかけてもらえる。本章では、適切な物語が人を行動へと駆り立てることを見ていく。
・シミュレーションには、実際の行動ほどではないにせよ、それに準じる効果がある。適切な物語とは要するにシミュレーションである。物語は脳の飛行シミュレーションのようなものだ。
・物語の役割は、知識を日常生活で実感しやすい現実的な枠組みの中に移すこと、つまり飛行シミュレーションに近づけることだ。物語の聴き手もさほど受け身ではない。心の中で行動に備えているのだから。
・「サブウェイ・サンドイッチ・ダイエット」は、シミュレーションの価値を示す好例だ。この逸話を聞けば、サブウェイダイエットがどんなものかは、だいたい想像がつく。だがこの物語は、飛行シミュレーションである以上に見る人を元気付ける話だ。こんなに太った人が自己流のダイエットで110キロ以上も痩せたなんて。この物語は「あと5キロ」で四苦八苦している全ての人に喝を入れる。
・「サブウェイ・サンドイッチ・ダイエット」は、心の琴線に触れる。ダイエットに興味のないスリムな人でさえ、勝ち目のない戦いを戦い抜き、勝利を掴んだジャレドをみれば励まされる。励ましこそ、物語のもう一つの大きなメリットだ。励ましもシミュレーションと同様、行動を促す。
・人を励ます物語には三種類の基本的な筋書きがあるという結論に達した。「挑戦」の筋書き、「絆」の筋書き、「創造性」の筋書きである。
・「挑戦」の筋書きの重要な要素は、主役が圧倒的な障害に直面する点だ。「挑戦」の筋書きは、私たちを元気づけ、行動へと駆り立てる。
・「絆」の筋書きとは、人種、階級、民族、宗教、あるいは人口統計上の違いを乗り越えて、人々が関係を育む物語である。
・「引きずり検査」は、研磨機開発チームの新しい文化を印象付ける「創造性」の筋書きだ。それは「決断を下すためには適切なデータの入手が必要だが、より迅速に入手する必要がある」と示唆している。「創造性」の筋書きに触れると、私たちはいつもと違ったやり方を模索し、創造性を発揮し、新しい方法で実験したくなる。
・3つの筋書きについて述べた目的は、読者が物語を創作できるようにするためではなく、可能性を秘めた物語の発見方法を学ぶことだ。つまり、人生が贈り物をくれた時、それに気づくことだ。
・人々に可能性を伝える跳躍台の物語は、アイデアを売り込むだけでなく、人々を動かす。物語は人々の意識を潜在的な解決法に向けさせる。目標や障害がわかりやすく示された物語を語れば、聞き手は問題を解決しようという姿勢になる。また、聴き手自身の問題解決も促す。

・アイデアを発見するのが得意な人は、想像が得意な人に必ず勝てる。なぜなら、どんなに創造性があると言っても、1人の生み出す優れたアイデアの数は、世界に生まれ続けるアイデアの数には敵わないからだ。
・話術に長けた頭の良い人が、アイデアを聞き手の記憶に焼き付けられないのはなぜか?その理由は2つある。1つ目は、大量の情報の中にリードを埋没させてしまう癖だ。目的や明確さよりも、集めたデータの量に値打ちがあると言わんばかりだ。核となる部分を際立たせるために情報量を減らすことは、自然にできることではない。2つ目は、メッセージよりもプレゼンテーションを重視する傾向だ。人前で話をする人が、落ち着きやカリスマ性や意欲を示したがる。総花的なスピーチではなく、メッセージを伝えることを重視すべきだ。
・アイデアを聴き手の記憶に焼き付け、後々まで役立たせるためには、利き手を次のような状態にする必要がある。①関心を払う、②理解し、記憶する、③同意する、あるいは信じる、④心にかける、⑤そのアイデアに基づいて行動できるようになる。