・世界の医薬品市場の売上高は、2022年に200兆円となった。今後も中国をはじめとする新興国や米国を中心に年3〜6%の成長が見込まれる成長産業となっている。2027年には250兆円を超える。米国は鈍化しているが、中国インドをはじめとする新興国市場が堅調。
・日本市場は、2023〜27年の成長率はマイナス2〜1と低迷する見通し。理由としては、少子高齢化や経済的な低成長に伴う国の医療費抑制政策。
・医薬品製造業の売上高に占める研究開発費の割合は10.1%。全産業平均の3.1%の3倍超となる。製造業の中で最も高い数値である。
・医薬品という高付加価値の製品を中心とするハイリスク・ハイリターンの事業体である。
・特許が切れると売り上げが激減するため、事業継続においては一定期間ごとに新薬を創出し続ける事業サイクルを構築することが重要。
・新型コロナ禍の2022年のファイザーの新型コロナワクチン「コミナティ」の売り上げは約5兆円にも上った。ファイザーの売り上げの25%を占め、世界一位の売上規模の製薬会社に押し上げた。
・社会的公衆衛生の緊急事態対応として各国の国家予算で購入されていた新型コロナワクチン・治療薬の供給は2023年に激減し、ファイザー社の新型コロナ関連の売り上げは50%近く減少。なんと2023年第三四半期中は赤字になった。
・2023年8月の調査で、薬価収載されている約1万3千の医薬品のうち23.9%が「出荷停止」「限定出荷」などの供給制限状態にあった。理由としては、小林化工や日医工などのジェネリック医薬品メーカーの不適切製造や品質管理の不正です。
・これまで、製薬会社各社は生活習慣病領域(高血圧、高脂血症など)における新薬創出により成長してきました。現在、創薬のターゲットは、生活習慣病領域から、がんや、治療薬が存在せず開発が希求されている中枢神経疾患、希少疾患、難病などのアンメット・メディカル・ニーズと呼ばれる領域へと移行してきている。
・2021年の世界の売り上げ上位100品目のうち47品目はバイオ医薬品。
・バイオ医薬品の開発費は、低分子医薬品の1剤当たり100〜300億円に対し、1千億円もの研究開発費が必要といわれている。
・世界各国の巨大製薬会社には一般用医薬品事業や後発医薬品事業を切り離し、医療用医薬品や主要研究領域に特化する動きも起こっている。
・2019年の後発医薬品の世界市場規模は、医薬品全体の売上の2割程度の40兆円規模とされている。先発医薬品の伸びを上回るペースで成長しており、その背景には、世界各国で新薬から安価な後発医薬品に切り替える動きが加速している。
・中国やインドなど医薬品市場の拡大が著しい新興国でも、後発医薬品の割合が高く、市場の伸び分の過半数を後発医薬品が占めている。
・日本の海外進出が増えている。2010年に海外販売比率が50%を超えたのは大手7社中2社でしたが、2021年には6社となりました。7社の海外売上高も2倍超となっている。
・業界トップのファイザー。ペニシリンの量産を実現するなど、世界的企業の地位を確立した。有望な新薬候補を持つ製薬会社を買収し、圧倒的な研究開発資金により大型新薬のブロックバスターを生み出していく事業手法は、「ファイザーモデル」と呼ばれ、多くの製薬会社の経営モデルになった。一時ロシュに世界売上1位の座を奪われたが、新型コロナワクチン「コミナティ」を開発し、世界トップに返り咲いた。
・ロシュは、ビタミンCの合成とベンゾジアゼピン系抗不安薬の販売などで、世界的な企業に成長してきた。近年の成長の背景は、バイオ医薬品の開発力をもとに、世界トップの診断薬事業との相乗効果を実現できる個別化医療の領域に経営資源を集中してきた。ロシュは現在、バイオ医薬品、がん領域の医薬品、診断薬の事業規模で世界1位である。ハーセプチンなどの分子標的薬と対外診断用医薬品を同時に開発し、診断から治療までのパッケージを提案することで、個別化医療を拡大してきた。今後は、進展するICTを活用した医療データの分析により、さらに精緻な個別化治療の実現を目指している。
・モデルナはmRNA技術をベースに新薬開発を目指し、2010年に設立されたバイオベンチャーである。ビオンテックはmRNA技術によるがん治療の開発を目指し、2008年に創設された。mRNAワクチンでは、ウイルスに特有のタンパク質を生成するmRNAを、筋肉注射により体内に注入する。その後、人間の細胞内で当該タンパク質が生成されると、免疫細胞がこのタンパク質を異物と認識して免疫反応を起こすことで、体内に入ったウイルスが排除されるという原理である。モデルナは、自社での製薬だけにとどまらず、mRNA技術やノウハウの一部を研究者などに開放し、共同でアイデアを具現化するmRNA創薬プラットフォーマーとしての展開も広げていく考えである。
・一般用医薬品は、全医薬品の市場規模の10分の1未満に過ぎない。医薬品業界は、医療用医薬品を中心に動いている。
・国内の、先発医薬品市場は約11兆円、後発医薬品市場は約1兆円、一般用医薬品市場は約8400億円、医薬品卸業は約9兆円でかる。
・武田薬品工業は、2019年に欧州の大手製薬会社であるシャイアーを約6兆円という巨額で買収し、世界的なメガファーマへと飛躍した。オンコロジー、希少疾患、ニューロサイエンス、消化器系疾患を重点疾患領域。血漿分画製剤、ワクチンを重点領域。細胞療法、遺伝子治療、データサイエンスをデジタル対応とテクノロジー導入として事業の選択と集中を進めた。
・第一三共によって、日本国内製薬会社による新型コロナワクチンが承認された。売上の20%超を研究開発に投資し、多様なモダリティ技術(創薬の基盤技術)で新薬開発を行っている。
・エビリファイの大塚製薬。オプジーポの小野製薬。
・「バイオのパイオニア」と銘打ち、バイオ医薬品の開発に注力しているのが中外製薬。世界トップの製薬会社であるロシュ・グループのチャンネルを通じた販売網、そしてグループが持つ医薬品のラインナップが強み。2001年にロシュと提携し、約20年で中外の売り上げは約7倍、営業利益は約17倍に成長した。
・結局的な海外進出に事業の活路を見出しているのが、アステラス製薬である。現在は売上の8割超を海外で稼ぎ出している。
・認知症領域の新薬開発に社運をかけて挑んでいるのがエーザイである。アルツハイマーは対症療法的な治療薬しかなかったが、エーザイが国内で承認を得たレカネマブは、発症プロセスに介入することで進行を遅らせる国内初の根本治療薬である。また、医薬品提供に留まらない認知症領域の事業展開を進めている。
・参天製薬は、医療用眼科薬の国内シェアトップの会社である。医療用眼科薬メーカーが注目される理由の一1つに、海外市場での高い評価があります。
・ツムラ は漢方薬最大手であり、医療用漢方製剤市場のシェアは8割超である。
・後発医薬品市場の伸びは低下しており、「成熟市場」の時代に入った。
・医薬品業界の独自の流通・販路。製薬会社が安全に、適正に使用してもらうため、独自の流通経路により患者に提供される。医薬品卸業が品質を保って全国の医療機関に配送。医療機関が医師と薬剤師が関与して患者に医薬品を提供。患者が適切に使用する流れ。
・製薬会社ならではの事業部門となるのが、「医薬品の情報提供に関わる部門です。
・MRの数は10年連続で減少している。近年大型新薬がなく情報提供のニーズが低下している点、またウェブやICTの活用など、医薬品情報を提供するツールが多様化し、MRを通した情報提供が必ずしも効率的とは言えなくなった実態もあります。
・プロダクトマネージャーが販売促進に向けた方策の例として、ウェブや専門誌広告、影響力のある医師(KOL、ROL)へのアプローチ、研究会・講演会活動、医薬品卸業の活用、他の製薬会社との共同販売(コ・プロモーション)、患者会の活動支援、MR活動がある。
・MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)は、KOLなどに対して、医学的・科学的なエビデンスや高度な専門知識をもとに、医薬品の情報を提供する職種。MRは営業部に所属するのに対し、MSLはMA(メディカルアフェアーズ)と総称される医療の課題に関する情報収集・分析を行う部署に所属することが多くなっている。MRは情報提供を担う中で、残念ながら利益供与が疑われる事象が生じたため、MSLは、営業の役割と切り離した活用が進んでいる。
学術情報部門は、多種多様な情報を医療関係者や患者に紹介する前に内容をチェックするのが学術情報部門の役割である。チェックするのは、薬機法や医薬品等適正広告基準などの法律に基づくルールに沿っているか、また医薬品業界で設けられている自主ルール(日本製薬工業協会が策定している)に基づいているかなどです。さらに、日本病院薬剤師会などの要請に基づいて作成されている資料もあるため、そのルールに則って適切に作成されているかもチェックする。
・製薬会社から医療関係者への情報提供は、2019年4月から、より厳格な国の法律に基づくルールとして、「販売情報提供活動ガイドライン」が導入されました。さらに、MRなどが行う不適切な情報提供活動を、医療関係者が国に報告する「医療用医薬品の広告活動監視モニター制度」もスタートしている。
・MSは、医薬品や医療材料、医療機器など、医療に関わる様々な企業の製品を仕入れ、病院やクリニック、保険薬局などの医療機関に販売する専門職です。広範な製品群から、中立的な立場で、病院や薬局に合わせた医薬品の情報を提供できるという特徴があります。
・医薬品を製造販売するためには、大きく3点の許認可に関する規制当局の審査を受け、認められる必要がある。①製造販売業許可。製品の販売に必要な許可。医薬品の種類に応じて許可が必要。②医薬品製造業許可。製品の製造に必要な許可。製造所ごとの設備や製造工程・品質管理に関する審査を行う。③製造販売承認。製品ごとに承認が必要。
・医薬品を販売するにも許可が必要であり、医薬品販売業の許可は、薬局、店舗、特別販売、配置、卸売に分かれる。
・製造販売が承認された医薬品の薬価は、中央社会保険医療協議会の薬価算定組織の意見のもとに、中医協総会で了承されることで決定する。
・厚生労働省の医薬・生活衛生局は、医薬品の治験、承認審査、市販後の安全対策を担い、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が同局と連携して、医薬品や医療機器の治験段階での相談、承認審査及び申請データの信頼性調査の実務を担っている。
・GLP省令。治験の前に行われる動物などを対象とした非臨床試験を実施する際に守るべき基準をまとめたもの。
・GCP省令。治験参加者の同意の手続きや安全性の確保、計画に基づく治験遂行など、医薬品の臨床試験実施の際に企業や医療機関が守るべき基準をまとめたもの。
・GMP省令。品質の良い優れた医薬品を、安定して製造するための製造管理・品質管理をまとめたもの。
・GQP省令。製造販売業者が守るべき品質管理の基準をまとめたもの。
・GVP省令。製造販売後の製品のリスク管理のための体制や、情報収集、分析、対策立案などの役割、市販直後調査の実施について基準をまとめたもの。
・GPSP省令。製造販売後の付加的な調査や、当該医薬品使用に伴う試験を実施する際に求められる基準をまとめたもの。
・医薬品の販売開始後に行われる各種調査と報告には大きく分けて4つある。①市販後直後調査、重篤な副作用が発生した場合の情報収集体制を強化。②使用成績調査、有効性や安全性などに関する情報、その他の適正使用情報に関する調査を行う。③特定使用成績調査、小児や高齢者、特定の疾病のある人を対象に有効性や安全性を調査する。④製造販売後臨床試験、すでに承認された医薬品に対し、引き続き安全性や適切な使用方法などを検討するための試験を実施する。
・医薬品業内のグローバル化が進み、国内の主要製薬会社の海外売上高比率は6割超となっている。承認や整合販売の手続の標準化の動きも広がっている。
・製薬会社は販売後も医薬品の副作用や不適切使用による症例を収集している。収集した情報は医薬品の添付文書に反映されるとともに、危急性のある副作用情報は緊急安全性情報(イエローレター)や安全性速報(ブルーレター)として医療関係者に日々発信されている。
・「医薬品副作用被害救済制度」は、薬を正しく使ったにも関わらず起きてしまった副作用では健康被害を受けた時に、その治療費などの給付を受けられる制度である。医療用医薬品、一般用医薬品ともに対象。抗がん剤、免疫抑制様医などは対象外。生物由来製剤、予防接種関連は別制度。
・新薬の薬価算定の仕方。新薬のうち類似薬があり、新規性があるものは類似薬効比較方式(I)、新薬のうち類似薬があり、新規性に乏しいものは類似薬効比較方式(Ⅱ)、新薬のうち類似薬がないものは原価計算方式から算出する。
・「ドラッグ・ラグ」や「デバイス・ラグ」をなくすため、希少疾患への効果の高い有効性が確認された医薬品には、承認のための優先審査や優先相談が受けられるなど、規制緩和措置が取られてきている。
・新薬誕生までの長い道のり。基礎研究2〜3年、非臨床試験3〜5年、臨床試験3〜7年、承認審査約1年。開発開始から販売までに要する時間は、最初の候補物質の抽出から数えて9〜16年、販売に至る確率は、約22000分の1とも言われている。71社で新有効成分の承認は年40件程度。
・近年主流となっている逆算合成型の開発方法は、ターゲット疾患から関連遺伝子などを分析、薬効が見込めそうな物質を解析し、化合物を合成する。
・非臨床試験は、「薬理学的試験」「薬物動態試験」「毒性試験」と呼ばれる試験を中心に実施する。
・臨床試験には3つの段階がある。「第Ⅰ相試験」では、少数の健康な人の協力を得て、副作用などの安全性と、医薬品の有効成分がヒトの生体内で実際にどのように働き、排出されるかを確認する。「第Ⅱ相試験」では、対象とする疾患患者の協力を得て、有効性と安全性のバランスが取れた投与量を探る試験を実施する。「第Ⅲ相試験」では、多くの疾患患者に参加してもらい、プラセボと呼ばれる偽薬郡と医薬品投与郡の比較や、既存の治療法との比較を通して新薬が本当に意義のあるものなのかが検討される。
・ワクチンも承認手続きの基本は同じ。ワクチン開発の難しさには、健康な人を対象に治験を実施し、感染症が「発症しないこと」または「発症しても重症化しないこと」を科学的に示すことがある。また、一般の医薬品では、治験の規模は1千人程度あれば科学的な検証が可能とされているのに対し、ワクチン開発では数千人から数万人の対象者が必要とされている。
・ジェネリック医薬品の一般的な開発期間は3~4年、開発費も1億円程度である。先発医薬品との同等性は4つの試験によって証明される。①規格試験、②溶出試験、③生物学的同等試験、④安定性試験。
・医薬品には4つの特許が存在する。①新しい化学構造の物質が医薬品に使用できることを発見した際の「物質特許」、②既存の医薬品の新しい製造方法を発見した際の「製法特許」、③錠剤からカプセル剤などの既存の医薬品と異なる剤形で効果があることを発見した際の「製剤特許」、④既存の医薬品の別の疾患への有効性などを発見した際の「用途特許」が存在する。
・医療用アプリの承認は、通常の医療機器と同様のプロセスを経て行われる。カテゴリーがクラスⅢ以上であれば、医療用途で役立つ有効性と安全性を、非臨床試験、知見などで実証し、厚生労働大臣への承認申請を行う必要がある。
・アプリによる治療を、手術療法、薬物療法に次ぐ「第3の治療法」と位置付けになる可能性がある。
・実際の治療時には、患者の希望をベースに、様々な治療法のエビデンスや、医師の臨床経験、患者の症状や現場で実施できる治療の選択肢(環境)を踏まえ、治療の選択が行われる。
・多様な医薬品の剤形がある理由には、医薬品の効き方の最適化と使いやすさを考慮して医薬品が設計されているから。
・薬剤師法において、調剤、医薬品の供給、その他薬事衛生の向上の3つの業務が薬剤師の主要な役割とされている。調剤は主に、処方監査、調剤、服薬指導の3つのプロセスから構成されている。
・日本の服薬率について調べた研究では、服薬率が6〜8割とも報告されている。
・2019年12月4日公布の「改訂薬機法」では、薬剤師に対し、「調剤時に限らず、必要に応じて患者の医薬品の使用状況の把握や服薬指導を行う義務、患者の医薬品の使用に関する情報を他医療提供施設の医師等に提供する努力義務」が法制化された。
・オンライン診療・服薬指導解禁による事業上のメリットには、地理的、時間的制限の解消、受診ニーズの拡大、オンラインと郵送の組み合わせによる全国営業、保険薬局の新たなビジネスチャンスにつながる可能性がある。
・2021年8月から「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の認定制度が導入された。「地域連携薬局」は、かかりつけ薬剤師・薬局の機能に加え、特別や調剤スペースが必要になる抗がん剤への対応、癌の緩和治療に用いられる医療用麻薬への対応、24時間365日の在宅医療への対応などが可能な薬局である。「専門医療機関連携薬局」は、地域の高度医療を担う医師や看護師と退院前から連携し、退院後の患者の生活支援にあたる薬局である。
・「patiant like me」というアプリは、患者同士で不安や悩みなどの情報交換をする事で、患者さんの闘病の糧になることを目的としている。
・「薬局」は、薬機法に定められた設備などの条件を満たし、都道府県知事の開設許可を得た医薬品販売店。「保険薬局」は、医療保険から給付を受けられる体制、人員の条件を満たし、厚生労働大臣による保険薬局の指定を受けた薬局。「調剤薬局」や「ドラッグストア」は、法律で定義されていない一般用語である。
・薬局の増加を後押しした要因として、高齢化による医療費の増加、医薬分業の推進による調剤報酬の院外処方化、薬剤師の増加による独立開業の増加、制度ビジネスの収益の安定と見通しやすさが挙げられる。しかし、近年の薬価引き下げなどの医療費の抑制政策により、調剤薬局事業総体としての上限も見え始めている。
・調剤報酬は、薬剤料(公定薬価)+技術量(調剤基本量、薬学管理料、調剤料)である。
・セルフメディケーションは、医療費削減を目的に推進されており、2015年に1兆1000億円の市場が、2025年には1兆8000億円まで伸長すると予測している。
・近年の診療報酬の改定では、門前薬局を狙い撃ちにした報酬引き下げ策が取られている。2016年度の診療報酬改定では、大型門前薬局が対象となる、特定病院からの処方集中率、処方箋の受付回数の高い薬局に、低い調剤基本料が設定された。
・保険薬局と保険薬剤師に関する主な関係法令は、健康保険法(医療保険の薬剤報酬の請求に関わること)、薬担規則など(保険薬局及び保健薬剤師が守るべき規則)、医療法(医療関連の基本法規)、薬機法(医薬品や医療機器の基本法規)、薬剤師法(薬剤師の業務に関わること)。
・近年、大手ドラッグストアチェーンは、いずれも調剤併設型ドラッグストアの展開に力を入れており、中小事業者が多い調剤薬局業界で、積極的にm&aによる事業拡大を進めている。
・医療費抑制の流れが続く中、保健調剤に頼った薬局経営は、今後も厳しさを増すことが予想される。地域に必要な「健康ステーション」としての拠点を目指し、薬局の機能を拡張する試みも始まっている。
・薬剤師業務の定型的な業務の約9割がAIに代替可能であるという実証事業の結果も出てきている。
・医療保険制度では、患者の医療負担が過重なものとならないよう、月額の負担上限を設ける「高額療養費制度」というものがある。また、高齢者などで、1年間の公的な医療保険と介護保険のサービス費の自己負担額が高額になってしまった場合に、負担額を世帯単位で軽減する「高額医療・高額介護合算療養制度」もある。
・2021年度の国民医療費に占める自己負担額の支払い割合は11.6%にとどまる。
・2001年度に約30兆円だった医療費総額が、2020年度には1.4倍の約43.0兆円に拡大している。一方で、薬剤費についても、同期間に約6.4兆円が9.6兆円と拡大しており、伸び率については1.5倍となっている。医療費増大の一因として、薬剤費の伸びが指摘されることも多いが、薬剤費だけではないことがわかる。
・診療報酬改定は、2021年度から市場の実勢価格により近づけるため、毎年改訂が導入された。
・公定薬価は、医療機関が医療保険を適用して患者に医薬品を提供する際の価格。一方、市場実勢価格は、製薬会社から医薬品卸業者を経て医療機関へ販売する過程で決まる価格。
・2020年5月の薬価承認で、ノバルティスのゾルゲンスマという医薬品について、1患者あたり1億6700万円の薬価が承認された。
・75歳以上の在宅高齢者の飲み残しで無駄になっている薬剤費は、年間約475億円と試算されている。日本全体では、年間1000億円以上とされている。
・経済財政諮問会議の経済・財政一体改革推進委員会社会保障ワーキンググループの議論では、「2029年度までにバイオシミラー数量ベース80%以上、置き換え成分数を60%以上」など目標案が提示されている。
・アンメット・メディカル・ニーズとは、特定の疾患への高い医療ニーズのことを言う。有効な医薬品が待ち望まれている疾患への医療ニーズのこと。
・「顧みられない熱帯病(NTDs)」とは、WHOが「人類の中で制圧しなければならない熱帯病」と定義している18の疾患のことを指している。代表的なものに、リンパ系フィラリア症、シャーガス病、デング熱などがある。製薬会社としては事業性が見込めない領域であり、治療薬の開発が進まないことが大きな課題となっている。
・免疫チェックポイント阻害剤とは、がん細胞にある、免疫から身を守るために免疫の働きにブレーキをかける機能をターゲットに開発された医薬品。免疫チェックポイント阻害剤は、オプジーボを皮切りに8剤(2023年11月現在)が発売され、新たな抗がん剤のカテゴリーを確立している。
・アルツハイマー病の治療薬開発の難しさは、脳内で20年とも言われる時間をかけて徐々に進行する疾患の原因を突き止め、さらに医薬品を使用した際の効果を証明しなくてはならない点である。厳しい開発状況が続く認知症治療薬の領域だが、2021年に米国のバイオジェンと日本のエーザイが、米国でアルツハイマー病治療薬であるアデュカヌマブの製造販売承認を取得。2023年には両者が米国でのレカネマブの製造販売承認を取得している。アルツハイマー病による認知障害の早期治療を図る初の『治療薬』であり、世界中からその成否が注目されている。
・ドラッグリポジショニングは、すでに他疾患に対して承認を得て製造販売されている医薬品を、別の疾患の治療に応用する医薬品開発の手法である。ドラッグリポジショニングが見直された背景には、AIやips細胞など医薬品の効果を確かめるスクリーニング技術の発展がある。
・とくにips細胞を活用する意義が大きいのが、難病患者向けの医薬品開発である。難病と知られているALSでは、患者の疾患特異的ips細胞を用いて培養した脊髄運動ニューロンにより、有効性のスクリーニングが行われた。結果、候補役として絞り込まれた9つの化合物の1つであるロピニロールの臨床試験がスタートしている。
・ヒト遺伝子塩基配列の解読により得られた遺伝子情報をもとに、遺伝子の働きや疾患が生じるメカニズムを解明し、治療薬の開発につなげる手法を「ゲノム創薬」と呼ぶ。
・オンライン診療は、日本では1997年から段階的に解禁され、2020年4月からは新型コロナウイルス感染拡大防止対策の特例として、2022年度からは正式に初診からも利用可能になりました。電話・オンライン診療を実施できる体制がある医療機関は、2019年12月時点の1352施設から2022年3月末の18121施設へと10倍超に急増し、全医療機関の16%を超えたとされています。
・ライフスタイル・ドラッグとは、日常生活で気になる症状や体調を改善することで、その人の生活の質(QOL)を改善し、快適に過ごすために用いられる医薬品のこと。例えば、ED薬、禁煙補助剤、経口避妊薬、食欲抑制薬、睡眠改善薬、しわとり薬(ボトックス)、抜け毛防止薬、発毛薬などがある
・中国市場の拡大と規制緩和が背景にあり、積極的に新薬を投入する方針の製薬会社が増えてきている。
・国内製薬会社の生き残りのためのビジョンとして考えられるのが、「メガファーマー化」と「スペシャリティファーマ化」の2つの方向性です。メガファーマは、世界市場で総合的な新薬開発力を持つグローバル企業であり、合併や買収を繰り返し、資金力や網羅的な研究開発体制をとる方策。スペシャリティファーマは、独自の創薬技術で新薬を開発するグローバルニッチ・ファーマと疾患領域に特化して新薬を開発するグローバルカテゴリー・ファーマに分けられる。「選択と集中」、他者が追随できない「独創的な創薬アイデア」が求められる。
・医薬品開発におけるクラウドファンディングが始まっている。
・地域包括ケアの時代を迎え、製薬会社は戦略の転換が迫られている。病院単体へのアプローチから地域医療へ、製薬会社各社は新たな販売戦略のアプローチに乗り出している。
・医薬品業界は「治療を担う医薬品」と言う領域にとどまっていては、ビックテック企業の新興企業に医療・健康に関するプラットフォームを押さえられかねない。いわゆる「医薬品」の開発や供給にとどまらず、AI技術やICT機器を活用した新たな総合健康支援産業へ変革していく必要がある。