※読みにくい。
・問題解決とは、複雑さと不確実性が高く、明確な解決策が得られない場合、または良い答えを得るための努力に見合うだけの結果が得られる場合の意思決定のことである。
・今の世の中は、グーグルが全てを知っているから、単にモノを知っているだけでは報われなくなった。問題解決能力とは、解決の方法がすぐにわからない問題の状況を理解し、解決に結びつけるために、認知的な処理を行う個人の能力のことである。
・学生を優れた問題解決者に育てるためには、単に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーをしっかり教えるだけでなく、創造性、論理的思考力、推論といったスキルが不可欠である。
・問題解決に関する共通のフレームワークやプロセスは、まだ現れていない。
・完全無欠の問題解決の7つのステップ。①問題定義、②問題分解、③優先順位付け、④作業計画、⑤分析、⑥統合、⑦ストーリー伝達。
・問題解決において、よくある失敗の例を挙げる。①問題定義文が曖昧なまま分析に入る。多くの問題定義文には、具体性が足りず、意思決定者の基準や制約の明確さが欠け、問題解決された場合に起こるアクションの指示がなく、問題解決のための時間枠や要求される精度の水準が書かれていない。
②過去の経験のみに基づいて解決策を断言する。可用性バイアス(手元の事実にのみ基づいている)、アンカリングバイアス(すでに見たことのある数値の範囲を選ぶ)、確証バイアス(自分の先入観に合致するデータだけを見る)などに悪影響を受けている可能性が高い。
③問題を細かく分解しない。構成要素に分解することなく解決できる問題はほとんど見たことがない。
④チームの構造や規範を軽視している。グループ内に多様な経験や多様な意見を持つ人がいること、新しい意見やアイデアに対して開かれていること、競争的にも協力的にもなれるグループ内の力学、バイアスによる影響を減らすトレーニングやチームプロセスが、チームによる問題解決において重要である。
⑤分析ツールが不完全。単純な計算で解決可能な問題もあるが時間をかけ、洗練された技術を使わなければならない問題もある。
⑥分析結果と、行動を促すストーリーとを結びつけない。分析指向のチームは、分析が終わってしまうと「これで終わり」にしてしまうことがよくあり、複雑な分析結果をどのように統合して多様な聞き手に伝えるかについて考えない。
⑦問題解決のプロセスを反復しない。問題が一度で解決される事はほとんどない。
・本書で紹介する完全無欠の問題解決アプローチの秘訣は、直線的な問題から、複雑な相互依存関係にある問題まで、ほぼ全てのタイプの問題を解決するために、同じ体系的プロセスを踏むことにある。
・ロジックツリーが優れた問題解決に決定的に重要な3つの理由。①誰もが構成を理解できるように、問題を明確に、視覚的に表現できる。②やり方が正しければ関連する全てのものがツリーに取り込まれると言う意味で、全体論的になる。③データと分析によって検証可能な、明確な仮説を導ける。
・シドニー空港の規模は将来的に十分か?と言う問題に対する最も生産的なアプローチは、滑走路の利用率を深く掘り下げる事である。なぜなら、輸送計画担当者が能動的に管理できる数少ない変数の1つだからである。
・ソーラーパネル問題の分析が良好な結果をもたらした主な要因は、正しい問いを立てたことと、問題を単純な塊に分解することであった。
・どこに住むべきか?と言う問題では、問題定義文に関連した論点や要因を簡単なリストにすることから始めて、要因をさらに指標変数に分解して、最後に具体的な数値測定と重み付けを追加する方法を示した。あとは、特徴の順位付けに基づいて単純な計算をするだけである。
・トラックギアの値上げ問題で使用した財務ツリーは、代替戦略に金銭的なトレードオフが伴う問題を解決するのに、特に役立つ。

(問題を定義する)
・優れた問題定義文の6つの特徴。①成果に焦点を当てていること。活動や中間成果ではなく、最終的な成果で表現された、解決すべき問題を明確に記述している。②可能な限り具体的で測定可能であること。③明確な時間的制約が設定されていること。④意思決定者の価値観や境界線(求められている精度や希望の規模など)に明確に対処するように設計されていること。⑤創造性や予期しない結果に対して十分な余地を許容するよう構造化されていること。問題の範囲が狭すぎると、解決策が人為的に制約される可能性がある。⑥可能な限り高いレベルで解決すること。つまり、一部に最適化して解決するのではなく、組織全体として解決する。
・常に問題をより高いレベルに再定義することにより、大きな恩恵が得られる可能性が高い。範囲の狭いプロジェクトは迅速な問題解決につながるが、同時に、問題空間に従来の概念を当てはめてしまい、目の前の問題を直視できなくなってしまうことがよくある。問題解決プロジェクトの範囲や幅に柔軟性を持たせることで、創造的で斬新な解決策を生み出す余地が生まれる。
・私たちが遭遇する最も一般的な問題定義文の1つに、ユーザーエクスペリエンスに関するものがある。デザイン思考は、消費者のニーズとユーザーエクスペリエンスに取り組む問題解決者にとって、強力なツールとして発展してきた。

(問題を分解し、優先順位をつける)
・ロジックツリーを使用して、問題を構成要素に分解する際は、2つか3つの分解方法を試し、どれが最も多くの洞察をもたらす図になるかを見極めるようにする。
・基本的な問題構造を定義するために、通常、構成要素ツリーまたは要因ツリーを使用し、しばしば機能的に作業する。その後、データ収集と分析を何度か繰り返した後、問題の性質に応じて、仮説ツリー、演繹的ロジックツリー、意思決定ツリーに移動することが一般的である。
・ツリーから明確な仮説を引き出せない場合は、ツリーが本当にMECEであるのかどうかを確認してほしい。
・根本原因よりも詳細な問題(ツリーの葉)について詳しく知っている場合は、ツリーを逆方向にして機能的に考えると解決に役立つことがある。
・優れたツリー構造ができたら優先順位付けが非常に重要になる。全ての小枝と葉を、潜在的な影響の大きさと、影響を及ぼすことができるかどうかのマトリックスに配置してほしい。初期の段階では、引くことのできる大きなレバーに努力を集中させてほしい。

(作業計画を立てる)
・作業計画を立てる際は、必ず仮説を立ててから分析を行う。
・作業計画を立てる際は、「課題」を具体的に記載し、「仮説」を立てて、「分析」の調査対象を明確にする、「データの出所」や「責任者とタイミング」も明記して、「最終成果物」がどのような形になるか視覚化(ダミーチャートと呼ぶ)することを義務付けることで、無駄な作業にかかる時間を大幅に節約することができる。
・「1日の答え」を構成する3つのパート。①状況。問題解決開始時の状況についての簡単な説明。②複雑化。問題を引き起こしている緊張関係やダイナミクスを生み出す状況の観察結果や、複雑化した状況の説明。③解決策。問題の含意、意味合い、または解決方法に関する、あなたが今持っている最良のアイデア。
・優れた問題解決チームは、比較的フラットな構造であり、優れたプロセスとチーム規範を有し、さらにバイアスを回避するための明確なアプローチを備えている。
・問題の過度なパターン化は、問題解決における斬新な解決策や創造性の妨げになる。
・問題解決において陥りがちな5つのバイアス。①確証バイアス。自説に対する反対意見を真剣に検討しない。②アンカリングバイアス。最初に見たデータ範囲やデータパターンに誤った精神的執着を持ち、その後の問題理解に色をつけてしまう。③損失回避。すでに費やされたコスト、あるいは利得と損失の非対称的な価値を無視する失敗のことである。④可用性バイアス。手近にあるがゆえに既存のメンタルマップを使ってしまうこと。⑤過度の楽観。
・バイアスを軽減するための7つのアプローチ。①チームメンバーの多様性を確保する。②常に複数のツリーや分割フレームワークを試す。③仮説には疑問符を追加する。④バイアスを排除するブレーンストーミングを行う(異議を唱える義務、ロールプレイング、弁証法の基準、遠近法をとる、建設的な対立、チームによる分散投票、外の意見を求める)。⑤下振れシナリオの明示的なモデリングと死亡前死因分析。⑥優れた分析手法。⑦データソースの拡大。

((経験則」で問題をざっと分析する)
・分析の近道として機能する11のヒューリスティックス。
①オッカムの剃刀。前提とする仮説の数が最も少ないものを選択しなさいと言うものである。前提とする仮説の数が多くなればなるほど、複数の仮説全てが成立する確率が低くなるためである。
②「大きさの程度」分析。チームの取り組みに優先順位をつけるために使われる。
③パレードの法則。この法則は、80%の結果は20%の原因から生じると言う一般的な現象を説明している。
④複利の成長率。72の法則というものがあり、72を成長率で割ることで、元本が2倍になる期間を推定できる。
⑤S字曲線。
⑥期待値。1点期待値の計算が最も役立つのは、基礎となる分布が片方に偏っていたり、ロングテールだったりするのではなく、正規分布である場合である。
⑦ベイジアン思考。ベイジアン思考とは、つまり条件付き確率のことで、あるイベントが起こったときにそのイベントがどのような確率で起こるかを表す。
⑧類推による推論。類推は、適切な参照クラスがある場合には強力だが、そうでない場合には危険である。
⑨損益分岐点。
⑩限界分析。
⑪結果の分布。
・根本原因分析の中で、一般的な問題解決でも役に立つ優れものは、フィッシュボーン図、「5回のなぜ」、およびパレードの法則である。
・全ての分析作業は、問題のレバーの大きさと形状を確認するのに役立つ簡単な要約統計とヒューリスティックスから開始する。

(「奥の手」で問題を深く分析する)
・高度なツール(「奥の手」)を使う前に、定評のあるヒューリスティックスに基づいたショートカット、簡単な統計、根本原因分析から分析を開始すること。
・「奥の手」である9つの高度なツールを使ったケーススタディ
①データを視覚化する。相関関係は因果関係があることを証明しないことに注意が必要である。PM2.5のホットスポットと喘息入院者の両方を引き起こす根本的な要因が存在する可能性があるからだ。
②回帰分析。複数の説明変数を用いる重回帰分析では、変数を組み合わせてコントロールすることで、根底にある変数間の関係を説明することができる。たとえば、歩きやすさだけを使って線形回帰分析を実行すると、都市の歩きやすさと肥満率の間には優位な相関がないと結論づけられる。しかし、重回帰分析で歩きやすさと快適性スコアの両方をくみあわせると、天候をコントロールした上で歩きやすさと肥満の間に優位な相関があることがわかる。
・回帰分析の落とし穴としては、相関関係と因果関係は別であることには注意が必要である。また、モデルでは考慮されていないが非常に重要な変数があるかもしれない場合、回帰モデルは誤解を招く可能性がある。さらに、変数を追加するとデータの過剰適合になる可能性がある。
③ベイズ統計。チャレンジャー号の事故から、データ分析で奥の手を使用することについて、いくつかの教訓が浮かび上がる。まず、モデルの選択がリスクに関する結論に影響を及ぼす可能性があることごある。2つめは、正しい条件付き確率を導き出すには、慎重に考える必要があること。最後に、データが不完全な場合、氷点下0.5℃の打ち上げといった極端な値を処理する方法については、利用可能なデータに分布を適合させるという確率論的アプローチが必要であることである。
④実験。ランダム化比較試験では、他のすべての変数をコントロールしながら、1つの変数の変化を検証できる。ABテストでは、たとえば、Webサイトのトップページで背景色を変更したら訪問者の滞在時間の長さは変わるのか、その効果を検証することができる。
⑤自然実験。擬似実験とも呼ばれる自然実験。自分で実験ができない場合は、世の中ですでに実験が実行されていないか、あるいは、それと似たようなことがされていないかを確認し、あたかも実験しているような状況を見つけて利用する方法。
⑥シミュレーション。シミュレーションとは、現実の世界で起こると予想されることをコンピューターで模倣したものである。シミュレーションが強力なのは、異なる条件を仮定して、世界の多くの潜在的な状態を見ることができるからだ。
⑦機械学習。機械学習は、適切な形式のデータが大量にあり、データの中に複雑なパターンや相互作用がある場合に、従来のツールよりもはるかに優れたパフォーマンスを発揮することが多い。
・機械学習の要点は、結果の予測にあり、解決策や意思決定の方法を理解することではないと言うことである。
・機械学習は、意思決定メカニズムはすでに理解できているが、それが複雑で、多様なデータ例がたくさんある場合に最も役立つ傾向にある。しかし、多くのビジネス上の意思決定には、学習アルゴリズムの採用に必要な大量の高品質データが不足していることが多い。
⑧クラウドソーシング。解決策を探している企業と、それを実現できるアイデアを持っている個人のチームを結びつける方法として登場した。以前はコンサルタントや専門家との契約が必要だった難題を、今では参加者が賞金をかけて競うことが多い。
⑨ゲーム理論。ゲーム理論は、難しい競争や敵対的な問題解決の場面で使うに適したツールである。また、敵対者がどのように対応するのかを考慮に入れた問題アプローチである。

(結果をまとめ、ストーリーで伝える)
・説得力のあるストーリーテリングに向けた最初のステップは、データ収集、インタビュー、分析、モデリングから得た知見を統合することである。ほとんどの人は視覚から学習するため、作業から得られた洞察を強調するために、それぞれの発見を画像や図形の形で表現すると有益であることが多い。
・恐ろしい「不安に満ちた知識のパレード(決してまとまらない細切れの事実のみで構成されたプレゼンテーション)」に陥らないように、ロジックツリーのピラミッド構造を使い、説得力のあるストーリーに整理する。

(不確実性に対処する)
・不確実性の種類とレベル、そして自分のリスク許容度を理解することが、不確実性のもとで問題を解決するための最初のステップである。
・不確実性のレベルと種類を認識して定量化し、自分たちが制御できるレバーを管理することによって、望ましい結果に向かって進むためのアプローチを開発する。次に難しいのは、特定のレベルの不確実性に対処するために、どのような行動を取ることができるかを特定することである。
・不確実性は、戦略的な問題解決者にとって好材料になり得る。
・レベル2からレベル4(合理的に予測可能な未来であるレベル1でも、予期しない、または予期できない状態のレベル5でもない状態)の不確実性に直面した時に取る行動の範囲は、時間を買う(基本的に何もせず、詳細情報が出るのを待つ)ことから、情報を購入すること、ヘッジをすること、保険を購入すること、低コストのオプションを購入すること、悔いのない手段を取ること、大きな賭けをすることなど多岐にわたる。

(優れた問題解決者になる)
・優れた問題解決は、鋭い仮説を導く優れた問い、問題のフレーミングを決めて分解する論理的アプローチ、時間を節約するために厳密な優先順位づけ、創造性を育みバイアスに抗うための強固なチームプロセス、ヒューリスティックスから始まり適切に選ばれた奥の手の分析道具に移行する賢明な分析、そして最後に調査結果を統合して行動を喚起するストーリにする取り組みから構成される。
・問題解決のためのアドバイス。
①問題を理解するために時間をかける。最初に提起される問題は、正しい問いでないことがよくあるからである。
②問題定義文から始める。巨大なデータセットや豪華なコンピューターモデルを待つ必要はない。大きな紙と鉛筆、あるいはホワイトボードを用意して、問題のロジックツリーを描き始めよう。データに飛び込むと、思考が進化し、単純な構成要素の構造からより洗練された仮説へと移行することが期待できる。
③ツリーでいくつかの切り口を試す。
④可能な限りチームを使う。チームは、考え方と経験の多様性によって、創造性の豊かさを深め、確証バイアスやその他の持続的バイアスの可能性を低減し、問題解決に大きな利点をもたらしてくれる。
⑤優れた作業計画に適切な投資をする。優れた作業計画には、前もって少し時間がかかるが、あとで無駄な労力を大幅に節約してくれる。あなたが動かすことのできるインパクトの大きなレバーに焦点を合わせることにより、あなたのツリーを厳しく選定してほしい。
⑥要約統計、ヒューリスティックス、経験則から分析を始める。巨大なデータセット、機械学習、モンテカルロ・シミュレーションなどの分析の「奥の手」に飛びつく前に、データセットを調査し、その品質を知り、重要な変数の大きさと方向を理解し、介入を計画するために推進要因を理解しようとしているのか、世界の状況を予測しようとしているのかを見極めることが不可欠である。
⑦「奥の手」を恐れず使う。
⑧分析と同程度、結果の統合とストーリーの説明にも力を入れる。
⑨7ステップのプロセスを反復し、時には圧縮・拡張する。
⑩どんな問題も恐れない。