・「良い企業は偉大な企業になれるのか?そして、どうすれば偉大な企業になれるのか?」「『良い』に過ぎない状態から抜け出せない病は治療できるのか?」と言う疑問が本書の基礎になっている。
・本書の重要な発見は、ほとんどどの組織もこの調査から導き出された枠組みを適用して努力を続ければ、地位と実績を大幅に向上させることができるし、おそらく偉大な組織になることもできる。
(飛躍した企業と比較対象企業との組織的な違い)
・著名で派手なリーダーが社外から乗り込んできたことは、偉大な企業への飛躍との相関性がマイナスになっている。
・経営陣の報酬の形態と飛躍との間には、一貫した関係は見つからなかった。
・戦略を確立していること自体では、飛躍した企業と比較対象企業との違いをもたらす要因ではなかった。どちらの企業もしっかりとした戦略を持っていた。
・合併と買収は、飛躍をもたらす点でほとんど何の役割も果たしていなかった。
・飛躍した企業は変化の管理、従業員の動機づけ、力の結集にはほとんど注意を払っていなかった。条件が整っていれば、士気、力の結集、動機付け、変化といった問題はほぼ消滅する。
・偉大な企業に変化する概念は、規律ある人材(「第五水準のリーダーシップ」「最初に人を選び、その後に目標を選ぶ」)、規律ある考え(「厳しい現実を直視する」「針鼠の概念」)、規律ある行動(「規律の文化」「促進剤としての技術」)の三段階に、それらの枠組みの全体を包み込む「弾み車」と呼ぶ概念の7つである。
(第五水準のリーダーシップ)
・第五水準の指導者とは、個人としての謙虚と職業人としての意志の強さと言う矛盾した性格の組み合わせによって、偉大さを持続できる企業を作り上げる人のことである。自尊心の対象を自分自身ではなく、偉大な企業を作ると言う大きな目標に向けている。
・第五水準の指導者は成功を収めたときは窓の外を見て、成功をもたらした要因を見つけ出す(具体的な人物や出来事が見つからない場合には、幸運を持ち出す)。結果が悪かったときは鏡を見て、自分に責任があると考える(運が悪かったからだと考えない)。
・第五水準のリーダーシップの二面性には、職業人としての意志の強さと個人としての謙虚さがある。個人としての意志の強さには、「素晴らしい実績を生み出し、偉大な企業への飛躍をもたらす」「どれほど困難であっても、長期にわたって最高の実績を生み出すために必要なことを全て行う固い意思を示す」「偉大さが永続する企業を築くために基準を設定し、基準を満たせなければ決して満足しない」「結果が悪かったとき、窓の外ではなく鏡を見て、責任は自分にあると考える。他人や外部要因や運の悪さのためだとは考えない。」
個人としての謙虚さとしては、「驚くほど謙虚で、世間の追従を避けるようとし、決して自慢しない」「野心は自分個人にではなく、企業に向ける。次の世代に一掃の成功を収められるように後継者を選ぶ」「鏡ではなく窓を見て、他の人たち、外部要因、幸運が会社の成功をもたらした要因だと考える」「静かな決意を秘めて行動する。魅力的なカリスマ性によってではなく、主に高い基準によって組織を活気付かせる」
・どの企業も、成長を担う適切な人材を集められるよりも早いペースで売上高を増やし続けながら、偉大な企業になることはできない。
・偉大な企業を築いてきた人たちは皆、企業が成長していく時に最大のボトルネックになるのが、市場でも技術でも競争でも製品でもないことを理解している。どの要因よりも重要な点がある。それは適切な人々を採用し維持する能力である。
・座ってる席が悪いだけなのか、それともバスから降ろすべきなのかを確認できるようになるまでには時間がかかる場合がある。とはいえ、飛躍をもたらした指導者は人を入れ替えなければならないと分かった時、行動している。
・人を入れ替えなければならないと分かったことが、どうすればわかるのだろうか?2つの問いが役に立つ。①バスから降ろすべきかではなく、採用すべきかが問題だと想定した場合、その人物をもう一度雇うだろうか?②その人物がやってきて、素晴らしい機会があるので会社を辞めたとするなら、深く失望するだろうか?それともそっと胸を撫で下ろすだろうか?
・飛躍した企業は、最高の人材を最高の機会の追求に充てており、最大の問題の解決には充てていない。比較対象企業にはその逆の行動をとる傾向があり、問題を解決しても無難になるだけで、偉大になるには機会を追求するしか道がない事実を認識できていない。
(最後には必ず勝つ)
・偉大な企業への飛躍が、幾つもの正しい決定を一つずつ粘り強く実行して積み重ねていった結果である。当然ながら、飛躍した企業が間違いを犯さなかったわけではない。しかし全体として見れば、正しい決定が間違った決定よりはるかに多いし、比較対象企業と比べて、正しい決定の数がはるかに多い。
・飛躍を遂げた企業は、意思決定の過程に大きな違いがあり、二つの特徴的な形態で規律ある考え方をとっていた。①意思決定の全過程にわたって厳しい現実を直視する姿勢を貫いている。②全ての決定にあたって、単純だが極めて賢明な判断の枠組みを用いている。
・①の厳しい現実を明らかにして、どうやって人々の意欲を引き出すのか?意欲を引き出す動機づけで中心になるのは、説得力のあるビジョンではないか?答えは、ビジョンが重要でないと言うことではないが、適正な人たちがバスに乗るようにすれば、そもそも従業員の意欲を引き出すこと自体が必要なくなる。全員が偉大なものを築こうと言う意欲を持っていれば、本当の問題は、「従業員の意欲を挫かないようにするにはどうすればいいか」である。
・リーダーシップの要点はビジョンである。これは事実だ。だが、それと変わらぬほど重要な点に、真実に耳を傾ける社風、厳しい事実を直視する社風を作ることがある。「自分の意見を言える」機会と、「上司が意見を聞く」機会との間には天地の開きがある。偉大な企業への飛躍を導いた指導者は、この違いを理解しており、上司が意見を聞く機会、そして究極的には真実に耳を傾ける機会が十分にある企業文化を作り上げている。
・上司が真実に耳を傾ける社風の作り方の基本的な方法は4つある。
①答えでなく、質問によって指導する。
飛躍を導いた指導者は皆、質問するのは一つの理由からである。理解するためである。相手を誘導するために質問を使うことはないし、誰かを批判したり黙らせたりする質問をすることはない。時間のかなりの部分を理解しようとする努力に費やしたと言う答えが多かった。
・偉大さへ導くとは、まず答えを考え、理想を実現するビジョンに向けて人々の意欲を引き出すことを意味しているわけではない。答えを出せるほどに現実を理解できていない事実を謙虚に認めて、最善の知識が得られるような質問をしていくことを意味する。
②対話と論争を行い、強制はしない。
偉大さへの飛躍を遂げた企業は全て、激しい議論を好む傾向がある。
③解剖を行い、避難はしない。
解剖を行い避難しないようにすれば、真実に耳を傾ける社風を作る点で大きく前進できる。
④「赤旗」の仕組みを作る。
偉大さへ飛躍するための鍵は情報の質にはない。入手した情報を無視できない情報に変えられるかどうかが鍵である。
・ストックデールの逆説。飛躍した企業の経営陣は二面性を持った強力な姿勢で困難に対応している。一方では、決して目を逸らすことなく、厳しい現実を現実として受け入れている。他方では、最後には必ず勝利するとの確信を持ち続け、厳しい現実はあっても、偉大な会社になって圧倒的な力を持つようになる目標を追求している。
(単純明快な戦略)
・大きな影響を与える業績を残した人たちは、複雑な世界について考え抜き、それぞれ関心を集中させて、単純化して捉えている。単純化することは愚かなことではなく、理解を深めていけば、本質は単純であることを知っている。
・偉大な企業は全員がハリネズミ型の考え方である。比較対象企業を率いた経営者はキツネ型が多く、ハリネズミの概念に見られる単純明快さの利点を獲得できず、力が分散し、焦点がボケ、方針に一貫性がなくなっている。
・ハリネズミの概念は単純明快な概念であるが、ただ単純明快なだけではなく、以下の三つの円が重なる部分に関する深い理解から導き出されている。
①自社が世界一になれる部分はどこか?
②経済的原動力になるのは何か?
③情熱を持って取り組めるのは何か?
・特に重要な点は、ハリネズミの概念は、最高を目指すことではないし、最高になるための戦略でもないし、最高になる意思でもないし、最高になるための計画でもない。最高になれる部分はどこかについての理解である。
・ある事業が中核事業だからといって、何年にも渡り、時には何十年にもわたって従事してきたからといって、それで世界一になれるとは限らない。そして、中核事業で世界一になり得ないのであれば、中核事業はハリネズミの概念の基礎にはならない。
・偉大な企業へと飛躍するには、「能力の罠」を克服しなければならない。そのためには、「何かをうまくできるからといって、利益を上げて成長しているからといって、それで最高になれるとは限らない」と判断する規律がなければならない。飛躍を遂げた企業は、無難な仕事を続けていても無難になれるだけであることを理解している。どこにも負けない事業になりうる部分だけに注力することが、偉大な企業への唯一の道である。
・飛躍した企業ではいずれも、情熱がハリネズミの概念に不可欠な要素になっている。情熱は作り出せるものではない。「動機付け」によって情熱を感じるよう従業員を導くこともできない。自分が情熱を持てるもの、周囲の人たちが情熱を持てるものを発見することしかできない。つまり、自分たちが情熱を燃やせることだけに取り組むことが重要である。
・ハリネズミの概念は決定的に重要ではあるが、この概念に安易に飛びつこうとすると、とんでもない間違いを犯すだろう。飛躍した企業は、ハリネズミの概念を確立するまで平均四年かかっている。また、「成長を目指せ」はハリネズミの概念ではない。
・ハリネズミの概念を獲得するためには、評議会を作って、三つの円に基づく問いを立て、活発に議論し、決定を下し、その結果を解剖して学ぶ。この過程をすべて、三つの円を指針にして進めていく。この理解の過程を続けていけば良い。このサイクルを十分な回数経過すれば、そして、三つの円を絶対の指針にしてやれば、やがて、ハリネズミの概念の確立に必要な深い理解が得られるだろう。1日では到達することはできないが、いずれ到達できる。
・選ばれた11社の半数以上は、世界一だと言える点はどこにもなかったし、世界一になれる見込みもなかった。だが、どの企業もストックデールの逆説を信じて、こう考えた。「世界一になれる点がどこかにあるはずだ。それを探し出してみせる。世界一になれない点がある厳しい現実も、直視しなければならない。この点で幻想を抱いてはならない」。そして、その時の状況がどれほど惨めであっても、ハリネズミの概念を見つけ出すことができている。
(人ではなく、システムを管理する)
・偉大な業績を維持する鍵は、自ら規律を守り、規律ある行動をとり、三つの円が重なる部分を熱狂的とも言えるほど重視する人たちが集まる企業文化を作り上げることにある。
・飛躍した企業は、外部から見れば退屈だとか月並みだとか思えるかもしれない。しかし内部を詳しく見ていくと、極端なほど勤勉で、驚くほど徹底して仕事に取り組む人たちが大勢いる。
・偉大な業績を持続させるために最も重要な点は、ハリネズミの概念を熱狂的とも言えるほど信奉し、三つの円の重なる部分に入らないものであれば、どんな機会でも見送る意思を持つことである。
(新技術にふりまわされない)
・技術の進歩による事業環境の変化は決して新しいことではない。だから、本当に問題になるのは「技術はどのよう役割を果たすか」ではない。「偉大さへの飛躍を遂げた企業が技術について、通常とは違った考え方をしているのはどの部分か」である。
・技術への闇雲な依存は、強みではなく、弱みになりかねない。もちろん、深い理解に基づく単純明快で一貫した概念に結びつけた形で使えば、技術力は業績の勢いを促進する不可欠な要素になる。だが、使い方を間違えてしまえば、単純明快で一貫した概念にどう結びつくのかを深く理解しないまま、安易な解決策として技術に飛びついた場合には、自ら招いた転落を促進する要因になる。
・飛躍を遂げた企業は、恐怖によって動かされてはいない。自分たちが理解できないことへの恐怖によって動かされてはいない。馬鹿にされることへの恐怖によって動かされてはいない。他者が大成功を収めるのを指を咥えて見るハメになることへの恐怖によって動かされてはいない。競争で打撃を受けることへの恐怖によって動かされてはいない。
・偉大さへの飛躍を導いた経営者は、何かを作り上げたいという深い欲求と、高い理想を純粋に追い求める自分自身の衝動とに動かされている。これに対して、凡庸さに陥り、凡庸さから抜け出せない体質を作った経営者は、取り残されることへの恐怖に動かされている。
(劇的な転換はゆっくり進む。弾み車と悪循環)
・超優良に飛躍した企業は、転換の動きに名前をつけていなかった。開始の式典はなく、標語もなく、何か特別のことをやっているという感覚すらなかった。大きな転換の過程にあることに気づいたのは、転換がかなり進んでからだったと語った経営幹部も少なくない。転換の動きは内部のものにとって、後から見た時の方が、その当時よりもわかりやすいことが多い。
・比較対象企業の全てで、代々のCEOがそれぞれ、独自の方針を打ち出して自分の足跡を残そうとしたため、前進と後退を繰り返し、何らかの形で悪循環に陥っている。特に紹介する価値のある事例は、買収の使い方の間違いと積み重ねを無にする経営者の選任である。
・間違った買収。偉大な実績に飛躍した企業で、買収の成功率が高く、大型買収では特に成功率が高い。成功のカギは、大型買収が一般に、ハリネズミの概念を確立した後、弾み車の勢いが強くなった後に実施されている点にある。買収は、弾み車の勢いの促進剤として使っており、勢いの源泉にはしていない。
・弾み車の動きを止める経営者。悪循環でよく見られるパターンにはもう一つ、新しい経営者が弾み車の回転を止め、全く新しい方向に回し始めることが挙げられる。
(ビジョナリーカンパニーへの道)
・永続する偉大な企業は、基本的な価値観と目的を維持しながら、事業戦略や事業慣行では世界の変化に絶えず適用している。これが「基本理念を維持し、進歩を促す」魔法の組み合わせである。
・悪いBHAGは去勢によって設定されたものであり、良いBHAGは理解によって設定されたものである。3つの円が重なる部分に関する静かな理解に、BHAGの大胆さが加われば、魔法に近いとすら言える強力な組み合わせになる。
・本当に問題なのは、「なぜ偉大さを追求するのか」ではない。「どの仕事なら、偉大さを追求せずにはいられなくなるのか」だ。「なぜ偉大さを追求しなければならないのか、そこそこの成功で十分ではないか」と問わなければならないのであれば、おそらく、仕事の選択を間違えている。