息子は小さい頃より将棋を指します。
落ち着いて座るのもやっとな子どもが一生懸命、あの手この手思案している様子はとても可愛らしく、私もよく相手をしましたが、あっという間に上達して今では相手になりません。
当時の彼のスタイルは超攻撃的布陣、子供のケンカは先に殴った方が勝つ(?)と知ってかしらずか、
囲い(守備)もそこそこに攻撃を仕掛けてきました。
奇襲に近いので経験が浅い相手であれば、勝てますが歴戦の棋士には歯が立たず…。
彼は、ぽやぽやおとなしそうに見えても命式的に相当に自我が強く攻撃本能が強いのです。負ければ大泣き、ひっくり返って悔しがっていました。(4歳頃の話です)
息子の陽占には北に牽牛星《けんぎゅうせい》があり、
主気も辛金と美意識と自尊心の高さは相当なもの。
この牽牛星が主星貫索星《かんさくせい》を和剋、
「勝つ」という目的に囚われた上での「負け」は幼い彼の心にとって自己喪失につながる危機だったのでしょうね。
彼は自分のやり方にもこだわりがありました。
自分のこだわる戦法で勝ちたいのです。
なので相手の戦法と相性が悪い・不利になると分かっていても、自分の理想を以てぶつかっていきます。
彼の保守本能の強さゆえに自分の考えを変化させることを嫌ったのでしょう。
やがて、黒星が続き、停滞の時期がきました。
負けることを恐れて、徐々に本気の勝負から遠のいていきます。
そんな息子の様子を見抜いて師匠はこう言いました。
「息子くん、君はのんびりさんに見えて、とってもプライドが高いね。
負けると自分の理想と違って自分のことダメだなぁって、カッコ悪く思っちゃうんだよね。
でもね本当の自尊心ていうのはね、誰よりも強い絶対負けないって思うことじゃなくって、今日この試合会場で誰よりも自分は詰将棋を解いた・練習してきたって自分を認めてあげる心なんだよ」
私はこのアドバイスに大変感動しました。
このお言葉こそが自尊心の星「牽牛星」の本態であると感じたからです。
牽牛星はプライド・責任感とよく語られますが、多くの牽牛星を語る文献や解説では、第三者ありきの他者から見て自分はどう映るかの部分にスポットが当たっているなと思います。
実際、牽牛星は陰性攻撃本能の星なので、
集団の枠からはみ出ない美を持つ意味はありますが本来、
「自分の」着たい制服を着こなす努力ができる星です。
それが最も美しく着こなせる自分になろうとする。
タイトなラインであれば、自分を絞るし、威厳あるものであれば自身を磨き抜く。
牽牛星の次元によっては自己克己が効かず、膨れる自尊心をブランドもので慰めたり、体裁ばかりを気にしたりと、
まさにこの時の息子のような傷つくことを恐れ「本気でやってねぇし笑」のような見栄を張るようになります。
無理筋から逃げて、自分のか細いプライドを守る様では、牽牛星の本領発揮はできません。
師匠が仰ったように
自尊心は外面に表現するものではなく、
自分自身に向けるもので
それは自身の努力とそれに対する誇りに支えられる。
表面の失敗を恐れるさまは真の自尊心ではない。
失敗を恐れて逃げたり、反抗することを恥ずべき。
本当の自尊心というものは、体裁他者からの評価よりも
自分の中に目標を定め、信じて邁進すること。
息子の姿を見て「牽牛星」の本態を感じることができました。
その後の息子とはいうと、まぁ頑固なのでこのご指導後も自分のスタイルを変えませんでした。(笑)
しかし、己に恥ずかしくない自分になるという部分は響いたようで、
負けが見えた戦いでも最後まで全力で戦い抜くようになりました。
負ければ、参りましたと頭を下げ、勝ってもありがとうございました。
と一礼の後、相手との感想戦をしっかりして誠意を尽くします。
そして自分のスタイルにこだわり妥協できないので、相手がどんな風な戦法できても負けないよう、あらゆるパターンを細分化して頭に叩き込むという努力パワープレーを編み出していきます。
強い相手と指してたくさん負けることでその棋譜を分析し、こうすれば勝ち筋があったなと内省してパターンを構築するので、これは結構な努力と忍耐を要したと思います。
でもこの数多の負けは、いつかの勝利のための礎とすればもう恐れる必要はないとわかったのだと思います。
そうした柔軟性のある自尊心を身につけたおかげで、彼はめきめき勝ち星を増やしていきました。
目標が定まった牽牛星ほど、輝く星はありません。
「負ける」事はもう恥ずかしいことではなくなりました。
恥ずかしいのは自分を偽り逃げ出すことだと気づけたからです。
あれから数年、彼は小学生の間に有段を目指して研鑽に励んでいます。
自分の目指すものがあるかぎり、彼の牽牛星は輝き続けるはずです。
ここまで、ご覧いただきありがとうございました。
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