天下りと聞くと、官僚が高給と高額の退職金をもらっている、そんなイメージしかないのでは?しかし本当にそれだけなのだろうか。マスコミがこぞって批判している、そんなときこそ、あえて冷静に分析する必要があります。
1.マスコミの批判は大きく分けて、①高額の退職金を何度ももらっている②受け入れ法人(企業)と癒着がある、という2つに分かれます。最近は①の批判が強いように思います。
まず②の問題。
確かに国との契約は、国の関連会社とも言うべき独立行政法人等が握っている場合が多くあります。しかし、国の契約は、最近の随意契約批判により一般競争入札に移行しつつあります。一般競争入札に移行すれば癒着も難しくなることが期待できます。
①の問題。
確かに「渡り」により高額の退職金を何度ももらう人がいます。その金額が仕事の質や量に見合っているか分析する必要があります。それも無しに単純に金額だけ見て、たくさんもらっておいしい思いをしている!と言っているのは単なる妬みにしか聞こえません。
2.マスコミに欠けている視点。
①そもそも独立行政法人は国の総人件費を圧縮する(行政機構のスリム化)目的で作られています。単純に天下りをなくせば、国の組織が肥大化(=人件費が増加)します。国の財政負担が重くなるわけです。それを防ぐには、公務員をリストラするしかありません。リストラするにはまず公務員に労働基本権を認め、雇用保険加入を認める必要があるでしょう。また、公務員の数を減らせば、国民も今までどおりの行政サービスを期待できなくなるかもしれません。国民もそれを理解する必要があります。
②天下りをなくせば、国の組織が硬直化します。出世コースから外れた人間が組織に残るわけですから、モチベーションの低下が起こります。今まで上司だった人間が急に部下になれば使いずらいでしょう。今まで以上に非効率になる恐れが高くなると考えられます。
3.真面目人間的結論。
そもそも「天下り」や「渡り」事態が悪いのではなく、「渡り」によって何度も高額の退職金をもらうのが悪いと思います。だから、「渡り」によって何度も退職金をもらえないように法規制すればそれでよいのではないか。仕事の質や量に応じた退職金を得られる仕組みを作るべきです。
マスコミの報道姿勢は、短絡的かつ感情的すぎると思います。つまり、天下りの廃止の前に、公務員制度をどうするか、公務員のリストラを行うかなど、検討しなければならない問題があります。その検討なしに単純に天下りをなくせば霞ヶ関は大混乱に陥ります。それは国民にとって決してプラスにはなりません。天下りをなくせばどうなるのか、どういう影響が出るのかも伝えなければ、国民は正しい選択ができません。ニュースを伝えるマスコミ関係者の方々には、もっと深い見識をもって伝えていただきたいものです。