「私」「子犬」

共に成長して行く物語です。

 

 

 

 

★  ★  ★

 

 

 

 

その子犬は、

私が高校1年生のある日、我が家にやってきた。

 

 

 

 

当時悩んでいた姉を元気づけようと

母が近所で産まれた子犬を引き取ってきたのだった。

 

 

 

 

その日、学校から帰った私は

困惑した顔つきの父と母にイヤな予感がした。

 

 

 

 

姉はその子犬に

まったく見向きもしなかった、という。

 

 

 

 

玄関を入ってすぐに

簡易的にこしらえた父の小さな書斎があり、

その床に、どこかの店の紙袋が置いてある。

 

 

 

 

「子犬は?この紙袋の中だよね?」

ウキウキする私に

なぜか母が

「まず話を聞きなさい!」と制してくる。

 

 

 

 

話なんか後だ!早く子犬が見たい!

 

 

 

 

え...?

死んでる。。。

 

 

 

 

紙袋の底には

グッタリと広がって動かない

ムク毛の奇妙な生き物らしき姿があった。

 

 

 

 

何、この子どうしたの?

 

 

 

 

母が「死んでるんじゃないわよ!」と説明を始める。

 

 

 

 

兄弟の中で1番ダメな子をもらってきたのだ、と。

踏みつぶされ、母犬のおっぱいをろくに吸えず、

兄弟が食べ残して腐ったようなものを食べていたのだという。

 

 

 

 

飼い主さんは

「足腰も立たないし、この子はもうすぐ死ぬだろう。」

とあきらめていたらしい。

 

 

 

 

母は、そんな子犬の様子に

姉が自分の姿を重ね合わせられるんじゃないかと思った、と言うのだ。

 

 

 

 

そんなこと、あるわけないだろ!

 

 

 

 

姉は子供の頃からペットでもモノでもなんでも

いつも可愛い方、キレイな方を与えられて来た。

いまさら惨めな子犬に自分を重ね合わせる?

 

 

 

 

「やっぱり返してこようかしら?」

 

 

 

無責任な。

 

 

こいつは生き物なんだぞ!

 

 

 

 

母にイラつきながらも

そういえば、この子動かないし鳴かない。

一体どうなってるんだ?と紙袋の底から引き上げてみた。

 

 

 

 

 

 

栄養不十分なくせに、

やせこけているわけでもなく、

私の手からダラ〜ンとだらしなく垂れ下がっている。

 

 

 

 

子犬らしいあどけない様子はまったく、ない。

形容しがたい奇妙な生き物。

惨めったらしいその目つきに腹立たしささえ感じる。

 

 

 

 

それに...

 

こいつ、クサッ!

 

 

 

 

ドブのような異臭がただよう。

子犬って甘いカワイイ匂いがするはずなのに。

 

 

 

 

思わず投げ出したくなるのをこらえ

床にそいつを放した。

 

 

 

 

「汚いから早くしまえ!」

 

「どうせ死んじゃうなら、それまでウチで飼う?」

 

 

 

 

父の文句に母の能天気なセリフが続く。

 

 

 

 

私達が「どうする?」と話していたその時、

グッタリしていたはずのそいつが

いきなり動きだした!

 

 

 

 

 

! ! !

 

 

腰をクネクネとうねらせながら、

おかしな早さで床を這いずり回る。

その姿はまるでムク毛の毛虫だ。

 

 

 

 

何こいつ!

気色ワルーーーッ!!!

 

 

 

 

おののいて、手出しできない私達を尻目に

ムク毛の毛虫は床下に逃げ込んでしまった。

 

 

 

 

つづきはこちら

私のハルマゲドン②.救出作戦

 

 

 

★Ra Suumi(ラー・スーミ)