私は、202号室に住む女です。
お隣り201号室には、男、女、赤子がいます。
201号室は、人が入ったかと思うと出て行く、入居者の出入りが激しい部屋でした。
私は何の嫌がらせもしてませんから!信じて下さい。こんな小心者の女が何か出来るわけがないでしょう。
現在の201号室の人は、最初は男と女だけでした。
入居時に、手ぶらで挨拶に来たことだけ憶えています。
小太りを隠そうとしているのか、ダメな感じのラッパーみたいな格好の男と、駅に行けば一日50人は居る平均顔に雑誌で見たような平均服の女です。
私は、最初の挨拶から、ガツンとパジャマにヒエピタですよ。ほとんどの日々を体調不良で過ごすので。インパクト大です。
その直後、引越しパーティーなのか、薬物パーティーなのかよくわからないが、毎日のようにうるさかった。人が大勢いるのがわかった。こっちは一人で三角座りをしちゃうくらいなので、人の気配に敏感なんだよ。いや、ちっとも寂しくないですよ。
とりあえず、誰かこいつらに『うるさい!』と言ってくれないかなぁ、とか、警察の手入れ入らないかなぁ、とか思っていました。
それにも慣れた頃、パタリと静かになったんですよ。
そして、郵便物とか溢れていて、人の気配が消えたんです。
これは、コロシがあったか?と勝手に想像してあげました。でも、異臭もしないので、引っ越したのか?と思うようになりました。
ところが、今度は、赤子を連れて戻ってきているではありませんか!
どこかで赤子を産んできたのか、どこかで赤子を拾ってきたのか、定かではありませんが、201に赤子と男と女が戻ってきた。
当初、赤子の姿も泣き声もなかったが、共用廊下(通路)に、バギーがガツンと置いてあるので、『邪魔だ!』と思いました。
そして、最近は、夜泣きですよ。
私は、一度眠りにつくと、起きないタイプですが、尿意や悪夢に起こされることがあります。再入眠というときに、どこかからともなく、聞こえるわけです。
子供の頃、春に猫が発情期で鳴いている声を聞いて、『この家には絶対に水子のたたりがある!!』とおびえていました。発情期の猫の鳴き声と赤子の泣き声って似ていると思っていました。
しかし、違います。
猫の鳴き声は外から聞こえるけど、赤子の泣き声は隣りから聞こえる。
夜中に赤子の泣き声が聞こえようが、気にすることなく、再度眠ることが多いのですが、イラついている時に聞こえたら、もう大変です。
何が大変って、私の妄想が。
以下、妄想。
赤子泣き出す。男起きる。
男『うるせぇんだよ。何時だと思ってんだよ。明日も仕事なんだよ、お前みたいに昼寝なんかしてられねぇんだよ』
女『あたしだって、昼寝なんかしてないわよ。いつもこの子の面倒見て、家事やって、一生懸命なのよ。』
赤子『あーん、あーん』
男『だったら、すぐ黙らせろよ。』
女『あたしだって泣き止ませたいわよ!ほーら、よしよし、いい子だから泣かないで』
男『うるせぇ!外に行けよ』
女『こんな冬に外に行ったら風邪引くでしょ』
男『たくさん着ていけばいいだろ。』
女『あたしばっかり育てて・・・あんたは、この子の父親でしょ!』
男『うるせぇ!お前が育てるって言うから産ませたんだろ!だったら責任取れよ!』
男、タバコに火を点ける。
女『子供の前でタバコ吸わないでよ!』
201は、超迷惑なことに、共用廊下(通路)に灰皿を置いている。あまりにも迷惑なので、蹴り倒してやろうと5回くらい思いました。
男『うるせぇ』
男、女を殴る。
女『殴ったね、パパにもぶたれたことないのに。』
女、男に皿を投げつける。皿、割れる。
男『危ないだろ!』
女、皿を投げる。ガシャーン、ガシャーン、ガシャーン。赤子、皿を割られただけにさらに泣く。
男『あああああ!うぜぇ!死ね!!』
銃声!!
なーんてことが起こらないかなぁ、と思っちゃいます。そして耳をすまします。
もちろん、こんなこと起こっていません。皿の割れる音も、怒号も聞こえません。赤子の泣き声だけです。
平和です。
私がこんな妄想をするのは、母上から、『あなたが赤ん坊の頃、夜泣きすると、お父さんに、外に連れて行けって言われて、あなたをおんぶして、外に行ったのよ』と聞かされたからです。
当時、父上の父上も母上も健在で、父上はちょっとだけ母上より権力があると勘違いしていたようです。
現在、実家は母上の権力下にあります。
赤子を持つ方、世の中みんなが赤子の味方だと思ったら大間違いです。他人だけでなく、身内にも敵がいます。
ご注意を!!!