アラスカを見つめ続けた
一人の日本人写真家の遺作


ノーザンライツ/星野 道夫

圧倒的な自然を前にした人のやさしさ



太平洋戦争が終わり、
新たな人生を求める二人の女性パイロット
シリアとジニーが開拓期のアラスカに降り立つところから話は始まる


様々な夢を見てアラスカにやってきた開拓者の家族や
原野を飛び回るのブッシュパイロット、
アラスカでの核実験計画に惑わされる若き動物学者、
太古の昔から狩猟生活を続けてきたエスキモーの一族



この本で描かれる人々のすべての人生が
シンプルで、真っ直ぐで、自立的で、
やさしい光に満ちている


この本に描かれるアラスカに生きる人々は
その圧倒的な自然を前に
有限な存在としての自己を感じ、
自然にそれを受けているのだろう

それは決して人生を無駄なものと捉えているわけではない


人々の人生が、
ユーコン河の一滴一滴のように、
折り重なり、集められ、
それが遥かな流れを形作る

無駄なものなどどこにもないのだ



それに反し、
めまぐるしく移る都会の時間の中で
今、僕達は
自分たちも大きな流れの一部であることを
感じることができないでいる

自分の生命としての価値が見えない

それは、きっと不幸なことだ



星野道夫の優しい言葉使いが
そんな僕らを
アラスカの悠久の自然の中に誘ってくれる