【第七話・第一回戦】


「スゲェ……! 魔法学校に、こんな場所があったのか……!!!」


ゲートをくぐった先には、超広いスタジアムが。
ここで、大会が行われるのだ。
別のゲートから、次々と他の生徒も出てくる。
いずれも、見覚えのある生徒ばかり。
そして、その中には第二魔法学校の生徒も……。
とりあえず、あのベリアルとかいう悪魔は居ないようだが……。


「予選を勝ち上がった生徒諸君、中央へ」


校長のアナウンスと共に、生徒らがスタジアムの中央へと歩みだす。
いずれも、魔法学校の実力者達だ。
そんな強豪らの中で、段違いの魔力を持つ男が居た。
彼の名は、ザーク・G・サディーク。
先祖に、大冒険家のザーク・D・サディークを持つ。
第二魔法学校、最強の男。
ラグナが一番戦いたい相手だ。


(サディークか……、声とかあんまし聞いた事無ェけど、どんなヤツかな……)


と、考え事をしながらボーーッ、としていると、背中を雪に叩かれた。
その目には、「集中して」という殺気っぽいものが込められている。
年下だが……結構、怖い。


「はいはい、了解しましたよ……」
「ラグナ、何か言った?」
「いや、別に……」


アンジェもだいぶ落ち着いたようで、先ほどまでの興奮した様子は感じられない。
とにかく、そのまま開会式が終わり、生徒らは控え室へと入った。


「んで? 一回戦、俺らは誰と当たるんだ?」
「えっと……、相手は、シヴァのレン・ライト、シヴァのフィーリ・ツヴァイス、カオスのレオン・グリフォード、アトラス

のセナトゥ・エリエット、のチームです、兄上」
「へェ~……、レン君達、出てたんだ」
「んじゃ、誰から出る? 私が行こうか?」
「いや、ルウはセナトゥとやってろ。ここは……俺が行く」
「ってかさ、相手四人しか居ねーじゃん? ってことは、誰かが戦わなくて良いって事だよな?」
「そういえばそうだね」
「んじゃ……、休憩した方が良いと思う人を指差して」


雪の言葉と同時に、全員がラグナを指差した。
ラグナは「へ? 俺?」みたいな、あっけにとられた表情をしている。
いつもなら、こういう場合は真っ先にルウが「私が休憩する!」って言い張るのだが……。


「あのー……、何で、俺?」
「ラグナ、疲れてるでしょ?」
「兄上はここまでずっと、一人で戦ってきたようなものですからね……。魔力が著しく低下しています。休憩してく

ださい」
「安心しろって! この俺が居る限り、お前なんざ出る必要すらねェ!」
「そうそう、龍の言うとおり♪ だから、休憩した方が良いよ。ね?」
「……わかったよ」
「んじゃ、行ってくるわ!」


しぶしぶ休憩する事を承諾したラグナに目配せをし、龍は控え室を出て行った。
炎VS氷……、攻撃と防御の、全く別の属性の戦い。
それが、今始まる……。


「では、これより第一回戦を始める! 音無龍、レン・ライトの両者は、スタジアムへ!」


校長の高らかな叫び声と同時に、二人がスタジアムに姿を現した。
パキポキと拳を鳴らす龍、そして、背中の大剣を抜き、構えるレン。
二人の戦いが、始まった。


「初めっから全力で行くぜ! フレイム・スピア!」
「アイス・シールド!」


龍の魔法により、天から炎の槍が降り注ぐが、レンは容易くそれをガードした。
シヴァ自慢の防御力だ……。だが、シヴァの生徒の力は、防御だけではない。
龍が次の魔法を唱えようとした瞬間、レンが勢いよく斬りかかった。


「チッ!」
「外れたか……」


間一髪でレンの攻撃を回避し、タン、タン、と地面をけりながらスタジアムの端へと移動した。
魔法での防御力もかなりのもので、剣術も一流……。
「死角が無い」とは、この事を言うのだろう。
はぁ、と溜息を吐いて、龍は再び、魔法を唱えだした。
イフリートの生徒は、体術も得意だが……、龍は、どっちかというと、あまり体術は使わない。


「これで終わりだ、龍! アイス・ブレイドッ!」


剣に防御用の魔法を纏わせ、突撃してくる。
まさに、攻防一体の技。
それを避け、レンの腹に両掌を触れた。
そして……、魔法を発動する。


「ドラギレアッ!!!」


灼熱の業火が、レンの体を包み込み、燃やしていく。
だが、レンは全く動じていない。
無表情な笑みを浮かべたまま、龍の攻撃を喰らっている、ただそれだけ。
そして次の瞬間、レンが龍の腕をつかんだ。
それと同時に「隙あり」という小さな声が聞こえ、後ろから何者かに斬られた。
大量出血で、意識が飛びそうになった、そのとき。


「龍―――ッ!!!」


ルウの叫び声が聞こえた。
地面を踏みしめ、フラフラと立ち上がる。
因みに、戦わない生徒らは観客席から試合を見ているのだ。


「……レン、魔法か? これは」
「ああ、よくわかったな。俺の魔法『氷人形』だよ」


そう、龍が攻撃したレンは、氷で作られた人形。
それも、龍の火力では溶けないほどの氷。
傷口からぼたぼたと血が流れ落ちる。
かなり深く斬られた……、急いで回復させなければ、危ないかもしれない。


「……んで? 俺に致命傷を与えた=勝ち とか思ってんじゃねェよな?」
「何だと?」


ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべる龍。
誰が見てもピンチの彼に、秘策などあるのだろうか……?
次回に、続く

【第六話・マジックグランプリ、予選開幕!】


ついに、マジックグランプリ開催の日……。
ベリアルにアンジェが襲われた後、ラグナはバンに、ベリアルが言っていた『力』の事を何度も聞いたが、バンの返事は決まって「今はまだ話せない」だった……。
そこまで言うなら、と、ラグナはバンに条件をつけた。
その条件とは、「ラグナがマジック・グランプリで優勝したら、『力』の秘密を教える」だった……。
そして、ついに予選が始まる……!
完全に回復し、復活したアンジェと、優勝を狙うラグナ……そして、修行を積んで何気に強くなっていた龍とルウ。
ルセアは、ベリアルの一件でかなりの重傷を負ってしまったため、残念ながら見学となってしまった。
何故ならば、保険医であり、ガイア担任のソウが、未だに出張中の為だ。
まぁ、ソウ以外の教師は全て出張から戻ってきたのだが……。
校長の挨拶が終わり、生徒達は魔法学校の敷地内へ散らばった。
予選の内容は、「生徒五人でチームを組み、一番先に校長室へ辿り着いた者が本戦に行ける」というものである。
ラグナは、アンジェ、龍、雪、ルウの四人とチームを組み、校長室へと向かった。
校長室のある場所は、7777階……、かなりの高さだ。
魔法で壁を登る生徒が出ないように、結界が張られてある。
つまり、生徒は全員、校舎の中から階段を駆け上がるしかないのだ。
もちろん、エレベーターも止まっている。


「さて、と……のんびり上ろうか」


「兄上……、忘れましたか? 制限時間は三時間ですよ?」


「三時間あるんだろ? 充分余裕じゃん」


と、余裕をかましているバカの背中に、魔弾が激突した。
魔弾とは、誰もが使える初級魔法の一種で、魔力を込めた弾丸のことである。
威力は、発動者の魔力の量によって変化し、魔力が強ければ強いほど威力もアップし、おまけに使ってもあまり体力の消耗が少ない魔法の一つだ。


「魔弾か……。なるほど! そう簡単には、上がらせてもらえねーみてェだな!」


「なら、倒しながら上っていく……、そうでしょ?♪」


「よっしゃァ! んじゃ、一気に上がってくぜェ!」


ラグナが軽く振り返って仲間達を見ると、全員ノリノリの様子だった。
並の生徒なら、魔法を使わずとも倒せる。
そして、さくさくと上へ上って行き、あっという間に7700階。
さすがにここまで来ると、強い者しか残っていない。
とりあえず、そろそろ全力でかからなければ……。
その瞬間、背後から魔弾が。


「またこのパターンかよっ!」


と、ツッコミながらギリギリで回避する。
魔弾の飛んできた方向を見ると……そこには、見覚えのある生徒が。
そう、第二魔法学校の生徒達だ。


「……バーナード」


「やはり、貴女方も来ていましたか……。なかなか、ご到着が早いようで……」


「テメェ、いつまでそのキャラ、作ってるつもりだ?」


「と、言いますと?」


「テメェは紳士なんかじゃねェ。最低のゲス野郎だって言ったんだ―――」


ラグナの言葉はそこで途切れた。
一瞬で、風より疾く、バーナードの前に現れ、魔法を発動する。
右手に炎が宿り、いっきにそれをたたきつける……。


「よ!」


ズドォォォン! という爆音と共に、辺りに煙が立ち込める。
ラグナの攻撃が、直撃した……。
確実に、バーナードは大ダメージを受けているだろう……。
誰もが、そう信じて疑わなかった。
だが……。


「おいおい、これが攻撃か?」


「……テメェ」


なんと、バーナードは無傷だった。
いや、正確には……近くにいた生徒を、盾にしたのだ。
それは、ラグナ達とは全く無関係で、しかも、ここまで来るまでの戦いで既にボロボロになっていた生徒だった。


「やはり、その辺に転がってるゴミでも役に立つんですね」


「……!!!」


「おや? 何ですか、アンジェリカ。 その怒りに満ちた目は…、綺麗な顔が台無しですよ?」


「……黙れ」


「おやおや、顔がゆがんでますねぇ……、スノエルみたいなブスになってしまいますよ?」


その言葉が、アンジェの怒りに火を点けた。
怒りに身を任せ、魔法を唱えようとするアンジェを、ラグナ達が抑えた。


「離して! コイツは…! コイツだけは、今殺すんだ! コイツがスノエルを殺したから……だから、だか

ら……!!!」


「アンジェさん! 落ち着いて!!!」


「今この場でやったって、意味無ェだろ!」


「アンジェ、落ち着いて? どうせ戦るなら……」


「全校生徒の目の前で、ボッコボコにしてやった方が良いだろ?」


「フフ……、『友情』というヤツですか? 私には理解できかねませんね……。そして、アンジェリカ。私を殺そうと

するのなら……私が、貴女を殺してさしあげましょう」」


禍々しい殺気を放ちながら、バーナードがアンジェを睨みつける。
ひどく冷たく、邪悪な目つき……、一瞬でアンジェの体が震え上がった。


「……好きに言ってろ。だがな……、バーナード。テメェだけは、アンジェが全てを以ってして倒す。俺は、サディ

ークと戦いてェからな。じゃ、先に決勝大会、行かせてもらうぜ」


アンジェをバーナードから遠ざけて、吐き捨てるように言い、階段を昇っていった。
校長室には、巨大なゲートが開いていた。
多分、このゲートの先で決勝大会が行われるのだろう……。


「……兄上、皆。準備はできましたか?」


「うん!」


「さっさと優勝してやろうじゃねェか」


「腕が鳴るな」


「……」


アンジェは俯いたまま、動こうとしない。
いや、動けないのだ……。
先ほど感じた禍々しい殺気……。
恐怖が、彼女の心を支配していく。
ガタガタと体を震わせ、冷や汗を流しているアンジェの肩をポン、と龍が叩いた。


「アンジェ、心配すんな。俺らが居るだろ?」


「あーッ! 龍が浮気したァァァァァァァァァッ!!!」


「いや、ちょ……違ッ……、グヘァッ!」


数秒後、龍は氷付けにされたが……、すぐに、ラグナに溶かしてもらっていた。
そんなバカ達の光景を見て、アンジェが「フッ」と鼻で笑った。


「元気出た?」


「うん! ありがとね、みんな」


「んじゃ……行くか!」


そう言って、少年達はゲートをくぐった。
ゲートの先……そこにあったものは―――

【第五話・もう一人の雪】


雪のケータイに電話をかけると、見知らぬ男の声がした。
果たして、目の前の雪は本物なのか……。
いや、今は目の前より、さっき廊下ですれ違った雪を探しに行くべきだ。
アンジェの部屋からなら、外も見渡せる……。
そう思ったラグナは、急いでアンジェの部屋へと戻った。
その途中、電話の相手が、再び話しかけてきた。


「何だよ?」


「フ……。俺の正体、教えてやろうと思ってな」


よく聞けば、それは変声機を使ったものだった。
少し機械のような声……。何故、気づかなかったのか?
それは簡単。ラグナが、バカだったからである。
そして、電話の相手は―――もう一人の、バカだった。


「うぃーっす!」


「……何してんだ、龍」


少し呆れ気味にラグナが言った。
緊張感が一気に解けたような気がする……。


「えっとな、俺ら、今から雪を救出しに行くんで。ま、今のはほんの遊び心って奴だ。ついでに、さ……嫌な予感

がすんだよな。今、アンジェを守れんのはテメェだけだぜ? 守れよ」


「……ああ、わかってる」


電話を切り、アンジェの部屋の前へと辿り着いた。
そして、勢いよく扉を開けた、そこには―――


「雪…? お前、何してんだよ……。いや、雪じゃないな……本物は、龍達が助けに行ってるから…。お前、誰だ」


「……」


なんと、雪が、アンジェの喉元に包丁を突きつけていたのだ。
あと少し遅れれば、アンジェは死んでいたかもしれない……。
それにしても、何故雪は、アンジェを襲ったのだろうか?


「見つかってしまいましたか……。なら、仕方ない。ここは退却させてもらいますね、兄上」


「待てよ!」


逃げようとする雪の腕を掴むと……なんと、雪の腕の皮がはがれたのだ。
目の前で起こった出来事に、目を白黒させるラグナ。
そして、何事もなかったかのように、その場から立ち去ろうとする雪。
いや、雪じゃない……皮がめくれた後の腕には、毛深く太い腕が見えていた。


「……テメェ、何者だ」


「……」


話しかけても、無言のまま黙りこくる雪の偽者。
それに苛立ったのか、ラグナは偽者の胸倉をつかんで、壁にたたきつけた。
ドォン! という音と共に、偽者の雪の皮がパラパラと剥がれ落ちていく……。
全身の皮がはがれ、現れたのは……、ベリアルだった。


「第二魔法学校の、ベリアルか……」


「嗚呼」


「何でアンジェを狙った?」


「……オレ様に質問する時は、『どうしてアンジェを狙ったんですか?』が正しいだろ」


「テメェ…ッ!」


首を締め上げ、床にたたきつける。
怒りが、ドス黒い感情が、身体の奥底からこみ上げてくる。
もう、魔法でコイツを燃やし尽くしてやろうかというぐらいに。


「……言え」


「……断る」


そのまま、長い沈黙が続いた。
余裕の表情を見せるベリアルと、怒りに体を震わせるラグナ。


「……バーナードって野郎の命令か? それとも、サディークか?」


「違うな……。これは、オレの独断さ。面白ェゲームだろ?」


「……テメェの目的は何だ。アンジェの命か?」


「ハッ! そんなのじゃねェよ。オレが欲しいのは……お前の『力』だ」


「俺の……『力』?」


一方その頃、龍、ルウ、ウィン♀の三人は……。


「くっそ! この縄、解けねェな!」


「ってか、ベリアルって奴の狙ってるものって何!? 雪が狙われたにしても、結局縛り付けられただけなんでし

ょ?」


「雪ちゃぁぁぁ~ん……無事でよかったよぉ~……」


「ウィン♀先生、泣かないで? 私は大丈夫だから」


「うぬ……」


三人は、仮面の男(第二魔法学校の生徒)をしばき倒し、生徒達を救出していた。
雪の浴衣が何故か破れているが……そこはスルーしよう。
とにかく、雪を含む、生徒らの救出は完了した。
残るは、ベリアルのみだ……。―――アンジェの部屋


「俺の『力』って……、何の事だ?」


「知らねェのか? なら、教えてやるよ……。お前の『力』ってのはなァ……!」


ベリアルがそう言いかけた時……。
ドアが勢いよく開き、ベリアルの体を炎のロープが縛り上げた。
ラグナが驚き、ドアの方を見つめると、そこには……イフリートの担任でもあり、ラグナの育て親でもある、バンが。


「ば、バンちゃん!?」


「予想通り、か……。やっぱり来やがったな。サー・ベリアル!」


「チッ……。バンか……」


「チッ、とは何だよ。久々の再会だろ? 喜び合おうじゃねェか……、悪魔!」


「あ、悪魔……!?」


「バレちまったら、仕方ねェ……ッ!」


ベリアルがそう呟くとともに、彼の背中に巨大な翼が生える。
頭には二本の角が生え、異形の者へと変化していく。
そして、ベリアルはバンへと襲い掛かっていった。
パリィン、と部屋のガラスが割れ、バンとベリアルが外へと飛び出していく。
自分が今まで戦ってきたことの無いほどの強さの悪魔……、そして、それと互角に渡り合うバン。
自分の弱さを、思い知らされた。
気がつけば、ベリアルはどこかへと飛び去って行き、バンは地上に降り立っていた。


「……くそ!」


壁を何度も何度も、何度も殴りつける。
狂ってしまったかのように。
自分の無力さを、かみ締めるように。
そんな彼を慰めるかのように、背中から誰かが抱きついてきた……。


「……おはよう、ラグナ♪」


「……バカが。もう、昼だっつーの……!」


ベリアルの言う、ラグナの『力』とは?
そして次回、マジック・グランプリ開催!



【第四話・雪、誘拐!?】


マジック・グランプリ開催まであと二日……。
魔法学校全生徒はもちろん、第二魔法学校の生徒らも参加するので、気は抜けない。
そんな中、ルセアは、雪の体力向上のためのトレーニングに付き合っていた。


「結構疲れたね……そろそろ、休憩しよっか」


「そだね。ルセア、ありがとね? 私の修行に、付き合ってくれて」


「何言ってんのさ。当たり前でしょ?」


「アハハ、そだね」


ルセアの持ってきた紅茶を飲みながら、笑顔で雪が言った。
その瞬間……、ルセア達から少し離れた方向で、爆発が起こった。
爆風によって、身軽な雪は飛ばされてしまい、どこか遠くへと飛んでいった。


「雪! 雪ィィィィィィィィィ!!!」


一方その頃、食堂に居る龍達は……。

もちろん、この騒ぎに気づいていた。
食堂の窓からは、森林が一望できる。
まだ、アンジェの精神状態が良くないらしく、ラグナはアンジェの部屋に閉じこもったままだ。
大会まであと二日だというのに……大丈夫なのだろうか。


「おい、ルウ……今の爆発、見たよな?」


「うん。何か、雪みたいな子が吹っ飛ばされてくのが見えたけど……」


「いや、雪だろ! 急ぐぞ、ルウ!」


「……」


「何だよ?」


「おんぶして」


「はいはい……、ガキだな、お前は」


「……うるさい」


龍におんぶしてもらい、顔を赤らめながらルウが言った。
というか、この非常事態にこんなイチャイチャしてるのもおかしいと思うが……。
そして、職員室でもまた、この異変をいち早く察知した人物が居た。
彼女の名は、ウィンディーネ♀。
双子でまったく名前が同じの兄が居るので、「♀」とついている。
まぁ、性格が全く違うのでわかるが……。


「ッ!!!」


ガタッ、と立ち上がり、外を見るウィン♀。
窓を開け、風の流れを確かめる……。
彼女の扱う魔法は、「錬金術」。
自然の物質から武器等を作り出し、トリッキーな戦い方をする魔法だ。
習得にはそれなりの努力が要るらしく、彼女が担任を務めるアトラスクラスも、未だ人数の少ないクラスだ。
因みに、イフリート、シヴァ、ガイア、カオスの四つは第二魔法学校にもあるが、アトラスは魔法学校だけにしか無い。
その為、第二魔法学校の生徒達はアトラスがどんな魔法を使うか知らない……。
これは、マジック・グランプリで重要な点になるだろう。


「雪ちゃん……?」


愛用の箒を取り出し、窓から外に飛び出る。
自分の愛する生徒に何かあったのか……。
それを考えるだけで、胸が苦しくなる。
しばらく森林の上空を飛び回っていると、血まみれのルセアを発見した。


「…ルセア君?」


「ウィン♀先生……。ッ!!」


かなり深手を負った様だ……パッと見だが、腕の骨が折れているのだろう。
その証拠に、ルセアは左腕を押さえて苦しそうにしていた。
自分は、回復魔法は使えない……、それに、ルセアも左腕だけでは魔法は使えないだろう。
いくら強いと言っても、まだ半人前の生徒……、ガイア担任のソウのように、片腕で魔法など使えない。


「と、とにかく! ルセア君の怪我も大変すぐ治さなくちゃいけないから、一旦校舎に連れて帰るね! 大丈夫、

雪ちゃんは、ボクが探すから!」


「あ、有難うございます……。でも、何でいきなり爆発なんか……」


「それはわかんない、けど……。ボクが、何とかするから!」


「安心しろ、俺らも手伝ってやらぁ」


「やっほー、ウィン♀先生! ルセア!」


「ルウちゃぁぁぁぁ~ん♪」


「先生、空気読みましょうね。バンちゃんに言いますよ?」


「そ、それはやめてくらはい……」


ルウに抱きつこうとしたウィン♀を脅すかのように言う龍。
バカだが、ちゃんと敬語を使っている。
龍達が来た事に安心したのか、ルセアはそのままぐっすりと眠ってしまった。


「ありゃりゃ、寝ちまった……。ウィン♀先生、悪ィけど、コイツ、職員室連れてっといてもらえる? 雪は、俺らで

探しとくからさ」


「仕方ないぬ……。でも、雪ちゃん見つけたら、真っ先にボクに知らせてね! アド教えてあるでしょ!?」


「了解しましたー。伝えますね~…」


気だるそうに龍がこたえるのを確認し、ウィン♀は箒で飛び去っていった。
今、魔法学校の教師は校長とウィン♀以外出張中で、各クラス、自習となっている。
だが、「自習」といっても、各クラスの担任が課題を残しておいてあるので、通常授業と何ら変わりないが。
因みに、イフリートの生徒は、基本的にサボり……というか、担任が残しておいた課題が「個別で特訓!」なので、自由と言っても過言ではない。


「さぁ! とりあえず、探しに行くとしますか!」


「おー!」


ハイテンションで、雪を探しに行った龍とルウのカップル……。
彼らはまだ、知らなかった……。
この先に、奴らが居る事を……。


―――とある洞窟


「こ、ここは……?」


雪が気がつくと、そこは牢獄だった。
見覚えのある生徒が、そこらじゅうに居る。
皆、服がボロボロで……生気の感じられない顔をしていた。
ここで一体、何があったのか……いや、何が起こっているのか。
全く状況が飲み込めなかった。


(確か……爆風でどこかへ吹き飛ばされて、それで……)


「よう、目覚めたか?」


「あなたは……誰?」


「オレか? オレはサー・ベリアル……第二魔法学校の、生徒さ」


「第二…魔法学校……!!!」


雪の目つきが鋭くなる。
自分が「義姉」として慕うアンジェを。
まだ出会って日も浅いが、それでも優しく接してくれた友達を傷つけた奴の仲間。
ラグナからメールで聞いた……、奴らが、アンジェを傷つけたのだと。
アンジェは今も、眠り姫のように眠ったままだ。
泣き疲れ、精も魂も尽き果てて、人形のように眠ってしまった友達。
許さない…、雪の中には、珍しく「怒り」という感情がわきあがっていた。
だが、それを表情に出す事はしない。
あくまでも内側に留めておく。雪はそういう人間だ。


「それで…、第二魔法学校のベリアルさん…でしたっけ? 何故、貴方は魔法学校の生徒をこんなにも?」


「何故? それは内緒♪」


雪の中で、黒い感情が更に大きく膨れ上がる。
だが、まだ放出してはいけない……。
今の自分は、両手両足を固定され、身動きなど取れない状態。
こんな状態で、魔法を発動するだけの集中力などあるはずが無い。
いつ、何をされるかわからないのだから。


(とりあえず、今は様子を見るか……。大丈夫、さっきルセアと特訓してた時に、魔法で防御力を上げておいたか

ら……あと、三日は効果が持つはずだから)


―――魔法学校、食堂


未だににぎわっている食堂に、銀髪の少年がトレーを運びに来た。
二人分の食器……、片方は、一口も食べられていないようだ。
ついさっき、アンジェの意識が戻ったらしいが……未だにショックから立ち直れて居ないらしい。
ラグナが何度も話しかけても、口を動かすだけで、声は出ないようだ……。
精神的にかなりのダメージを受けたのだろう……。
友達のピンチに何もできない自分を悔やみながら、人の集まっている窓際へと向かった。


「何の騒ぎだ?」


外を見ると……、仮面を被った男が、演説を行っていた。
その背後には、巨大な十字架に磔にされた数十名の人間が。

「見るがいい! こやつらは、魔法学校に侵入しようとしていたところを、オレが捕縛したのだ! 魔法学校の生

徒の名を語り、魔法学校へと侵入しようとした悪魔め! 成敗してくれる!」


「……雪?」


ラグナが双眼鏡で浴衣姿の少女を確認すると、そこには雪が居た。
だが…何かおかしい。
だって、自分はついさっき……廊下で、雪とすれ違ったのだから。


―――五分前


「おっと、ごめんよ……って、雪か」


「あ、兄上……すみません、私の不注意で」


「謝んなって! 俺が悪ィんだしさ。んじゃ、俺、食堂行ってくっから!」


と、いう会話を、した覚えがある。
間違いなく、あの少女は雪だった。
なら、今自分の目の前に居るあの少女は?
頭がこんがらがってくる。
ポケットからケータイを取り出し、雪に電話をかけた。


「…もしもし?」


電話に出たのは、見知らぬ男の声だった……。

【第三話・アンジェの過去】

魔法学校で開かれる大会の知らせを龍から聞き、龍達と共に魔法学校へ戻ったラグナ、アンジェ、ルセアの三人。
そして、今日の昼休み…第二魔法学校の生徒らが、大会の準備の為、そして、魔法学校の見学の為に来るらしい。
期待に胸を沸かす三人組(ラグナ&龍&ルウ)と、少し不安そうな顔をしているアンジェ…。
何故、彼女が不安そうな顔をしているかはわからないが、とにかく、ラグナは第二魔法学校の生徒らが来ることが楽しみでたまらなかった。
そして、昼休み…生徒らが広大な敷地の中で各々の自由な時間を楽しんでいる頃だ。
魔法学校の正門に巨大なゲートが開き、その中から数名の生徒が現れた。
中でも、一際目立つ赤髪の男…。
第二魔法学校一の実力者とされる、ザーク・G・サディークだ。
そして、彼の横に居る銀髪の男がサー・ベリアル、その隣に居るのが、バーナード・シュヴァルツ。
その後ろにも、何人かの生徒が見える。
そのとき、パキポキと何かにヒビが入るような音がしたかと思うと、アンジェの周囲のコンクリートが浮かび上がった。


「お、おい……アンジェ、どうかしたのか?」


「アンジェ……さん?」


「……何で、アンタが居るわけ?」


怒りを抑えつつ、アンジェが一人の男に話しかけた。
バーナード・シュヴァルツ……。穏やかな雰囲気をかもし出した、「紳士」という言葉が似合いそうな男だ。
何故、アンジェが怒っているのかはわからないが……過去に、この二人の間に何かがあったのだろう。


「アンジェリカ、何を言っているのですか? 私達は、大会に参加する為にココへ来たのですよ?」


「ふざけるな! 私の友達を……スノエルを殺した奴が、ココに来るんじゃない!」


「何の事だ? オレには全然わからねェな……」


バーナードが、不敵な笑みを浮かべて言った。
この喋り方が、コイツの本性なのだろう。
アンジェの怒りの理由…それは、一年前に遡る。


~~~一年前、第二魔法学校~~~


「アンジェリカ~!」


私とよく似た髪色の女の子が、私の名前を呼ぶ。
この子はスノエル。私の大親友。
そんなスノエルが、今日、隣のクラスのバーナードに告白するらしい……。
私は、スノエルに笑顔で「頑張ってね」と言った……。
これが、私と彼女の、最後のコトバという事も知らずに……。


―――三日後


「最近、スノエル来てないな……。第二魔法学校は自宅から来てる人多いし、スノエルもだから……行ってみるか、スノエルの家」


放課後、私はスノエルの家へ向かった。
すると、喪服を着たスノエルのお父さんやお母さんが、泣きながら家から出てきた……。


「え……?」


「あら、アンジェリカちゃん……」


いつもとは違い、全く元気の無い、おばさんの声。
その声と、おばさん達が着ている喪服で、私は全てを察した。
スノエルが……死んだんだ。


「……ごめんなさい、スノエルの友達の貴女に伝えなくて。でも……伝えたら、きっとツライと思ったから……」


「……心配しないでください。私は……大丈夫、ですから」


おばさんに背を向け、俯いたまま言った。
きっと、このときの私の顔を鏡で見たら、涙でぐしょぐしょになっていたんだろう。
葬儀の後、おばさんに「スノエルの部屋、入っていいわよ」と言われたから、私はスノエルの部屋に入った……。
まだ、スノエルの優しい香りが残ってる……。
ふと、ベッドの下を除くと、手紙が。
私はそれを手に取り、読み始めた。

「アンジェリカへ……。もう、何もかもに絶望しました。貴女と一緒に、卒業できなくてごめんなさい……。私は、弱い人間です。バーナード君にフラれただけで、自ら命を絶つような、弱い人間です。だから…私の事は忘れて? アンジェ」


「…………嘘だ」


「嘘だぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


私は、スノエルの部屋で泣き続けた……。
その次の日……、廊下で話していたバーナード達の言葉で、私は……。


「なあ、バーナード」


「何だ?」


「お前、カオスのスノエルって子、振ったんだろ?」


「ああ…あの女? あまりにもしつこかったからね……。『お前なんか好きじゃない。死ね、ブス』って言ったら、死

んじゃったんだよ」


「マジで!? お前、そんなこと言ったの!?」


「ああ、あの時のあの女の顔、傑作だったな~!」


………許さない。
私の友達を、スノエルを傷つけておいて、「傑作」だなんて。
人の命を何だと思ってるの?
コイツらは、悪魔共と何ら変わらない。
だから……だから………。
その日から私は、バーナードに復讐を誓った。
強くなる事だけを目指し、第二魔法学校から、魔法学校へと転校した……。
目的はただ一つ。
悪魔を倒して、世界を救う事でもなく、皆を守ることでもなく……。
バーナードに復讐する。
私の友達が受けた痛みを、思い知らせてやるんだ。


「バーナード、アンタの所為で……スノエルは……スノエルは、死んだんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


涙を流し、怒りのままに魔法を連発するアンジェ。
凄まじい攻撃の嵐……。
だが、バーナードは、何事も無かったかのように立っていた。


「愚かしい……。この程度の攻撃で、カオスの生徒を名乗るのか? フッ、魔法学校一の闇魔法使いも、この程度とは……笑わせる」


「………今、何つった?」


重く、低く、怒りの篭った声。
バーナードが気がつけば、彼の足元を火が包んでいる。
そして、その魔法を放ったのは……怒りで今にも殴りかかってきそうな、銀髪の少年。


「おや? 何ですか、キミは……。このクソアマの仲間か?」


「……黙れ」


「はい? 声が小さくて聴こえませんねぇ~……。もっと、ちゃんと言ってくれますか?」


からかうように言い、バーナードがラグナの方へ顔を傾けた。
しかし……それが、彼の失敗だったのだ。


「………ッ!!!」


ドガァァァァンッ!と、音を立てて壁に激突するバーナード。
不意を疲れたため、自慢の防御魔法も意味が無い。


「テメェは、俺を本気で怒らせた……。龍、ルウ、アンジェ……悪ィが、お前らの代わりに一発、殴らせてもらったぞ」


「……ヘッ、テメェが殴ってなかったら、俺が灰にしてたっつーの」


「私も、久々に本気だそうかと思ってたところだよ」


「……………」


その場に泣き崩れるアンジェ。
きっと、バーナードがスノエルに放った言葉が蘇ったのだろう。
殴りたい相手が居るのに、殴れなかった自分が悔しい。
もっと、強くなりたい。
様々な感情が入り混じり、彼女の中は、メチャクチャになっていた。


「……安心しろ。俺は……、俺達は、いつでもお前の味方だ」


ラグナが優しくアンジェを背負い、立ち上がった。
そして、立ち上がったバーナードと、その後ろで今の光景を悠々と眺めていた第二魔法学校の他の面々に向き直る。
目つきを尖らせ、殺意を込めた声で冷たく言い放つ。


「テメェら、よく聞け……。今のパンチは、俺からテメェらへの宣戦布告だ。マジックグランプリで、必ずボッコボコにしてやるよ。楽しみに待ってやがれ、クズが」


そう言って、ラグナ達は寮へと戻っていった。
昼休みが終わっても、第二魔法学校の生徒らはそこに立ち尽くしていた。
そして、サディークがりんごを一口かじり、笑顔で言った……。


「アイツら……処刑決定だな」


大会開催まであと三日……。
次回、サディークらの魔の手が、雪とルセアに迫る!

【第二話・悪魔撃破、そして、大会へ】

「イヤッホゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

魔法学校の昼休み。
廊下を駆けるバカが一人。
イフリートクラスの、音無龍だ。
何故、彼がこんなに忙しく走り回っているのかというと…もうすぐ、悪魔討伐の任務に行っていた生徒らが帰ってくるからだ。
まぁ、彼の目的はシヴァクラスのルウ・アフマリアだけだが…。


「そろそろかな?」


右腕に付けて腕時計を何度も見ながら、空を見上げる。
それと同時に、悪魔討伐に行っていた生徒が帰ってきた。


「ルウ、おかえり~! …ん? ラグナは?」


「えっと…私達の後を、悪魔がつけてきたみたいで…今、その悪魔と戦ってる」


「ま、そーいう事だから、私とルセアはまた引き返すよ。 ルウは、龍と仲良くやっといて。疲れもたまってるだろうし」


「でも…アンジェさん達だけじゃ、不安だよ」


「心配無いって! ラグナも居るんだし! だから、ルウはここで待ってて? 大丈夫、僕もアンジェも、すぐ戻ってくるから」


「…わかった」


少しつらそうにルウが呟くと同時に、アンジェ、ルセアの二人は箒に乗って来た道を引き返していった。
そして、ルウを慰めるように龍が頭を撫でる。


―――とある島―――

「だりゃぁぁぁぁぁっ!!!」


爆音と共に岩を突き破り、ラグナが飛び出した。
辺りを見回し、悪魔の気配を探る。
そのとき、彼の背後から悪魔が。


「死ねぇぇぇっ!!!」


「クッ……!」


悪魔の蹴りをもろに食らい、数十メートルほど吹っ飛ぶラグナ。
岩に頭をぶつけたのか、頭から血が流れている。
ポキポキと拳を鳴らし、一瞬で悪魔の前へ。


「だらぁぁぁぁぁっ!!!」


「フッ…愚かな人間よ。たった一人で、俺に勝てるとでも?」


「勝てるさ…一人じゃねーから」


「何だと?」


ドガァァァァン!という轟音と共に、天から黒い矢が降り注いだ。
暗黒魔法…アンジェの技だ。


「遅ェぞ、テメェら」


「はいはい…。ほら、さっさと片付けるよ」


「そーそー♪ お腹空いたから、早く帰りたいし」


「了解…。Dランクぐらい、とっとと終わらせねーとな」


そう呟くと同時に、三人は魔法を唱えだした。
大地が揺れ、三人の体からオーラが放たれる。


「魔法学校の生徒、ナメんじゃねーぞ!」


「行くよ…。森林の十字架-ウッド・クロス-!」


ルセアの足元からツタが生え、それが悪魔の両手両足を固定する。
ガイアクラスが習う魔法、束縛魔法の一種だ。
だが、ルセアはまだこの魔法を会得したばかりで、そんなに長く相手を束縛する事ができない…。
捕らえられた悪魔が暴れ、拘束が緩みだした瞬間―――攻撃力の高い炎、暗黒魔法が放たれた。


「闇の旋律-ダーク・ノイズ-!」


「炎拳ッ!」


アンジェとラグナの魔法が炸裂し、悪魔がバラバラと崩れ落ちる。
今のは、悪魔の中でも最も弱い種類、Dランクの悪魔…。
だが、生徒一人ではなかなか厳しい相手だ。
といっても、一人では厳しいだけであって、数名でリンチすれば全くの雑魚なのだが。


「さて、と…学校、戻る?」


「いや、その必要は無いでしょ。お迎え来たみたいだし」


「ってか、僕らの魔法で箒折れちゃってるからね、完璧に」


「「あ…ホントだ」」


ルセアが指差す先には、ボキボキに折れた箒が。
それを見て、全く同時にアンジェとラグナが呟いた。
そして、夕日をバックにやってくる三人の生徒。


「うっす! 討伐お疲れさん!」


「相変わらず強いね~、三人共」


「兄上、お疲れ様です」


ラグナのクラスメイトの、音無龍。
その龍の彼女の、ルウ・アフマリア。
そして、ラグナを義兄、アンジェを義姉と慕い、ルセアの彼女である月詠雪。
彼らは、三人の帰りが遅いことを心配し、わざわざ魔法学校から駆けつけてきてくれたのだ。


「ほらよ、三人分の箒」


「お、サンキュ! バカなわりに、良い仕事すんじゃねーか」


そう言って、馬鹿(龍)から強引に箒を奪い取るラグナ。
ルセアは、雪とLOVELOVEな雰囲気で話している。
そんな彼らの中に、未だになじめない少女…アンジェ。
彼女は最近転校してきたばかりで、以前は第二魔法学校に居たらしい。
第二魔法学校といえば、ザーク・G・サディークやサー・ベリアル等の実力者が居る事で有名だ。
アンジェの強さも、第二魔法学校で修行したからなのだろう…。
暇そうにアンジェが欠伸をしていると、龍がなにやらプリントを取り出した。


「龍君…それ、何?」


「これか? これはな…。近々、魔法学校で開かれる大会のプリントだよ。何か、第二魔法学校の生徒も加え

て、魔法の大会みたいなのをやるんだとさ」


「第二魔法学校……。アンジェって、第二魔法学校から転校してきたんだよな?」


「う、うん……。皆、強かったよ……、私以上に……」


「へぇ~……んじゃ、そのサドって言ったっけ?? そいつら、Aランク悪魔とか倒せんのかな?」


「倒せると思います。相当な実力と聞いてますから、それと、サドじゃなくてサディークです、兄上」


「そうそう、ベリーとサドね」


「…違います、兄上」


「で……、龍君、何で私達にこれを?」


「ああ、バンちゃんから頼まれたんだよ。『どーせ、お前ら悪魔としか戦ってねーんだから、こういう形式でも戦っ

てみねーか?』って」


「ふーん……、じゃあ、でてやろーじゃんか、その大会に」


「ラグナが出るなら、私も……」


「んじゃ、僕も」


ラグナに続き、アンジェとルセアが言った。
まあ、ルセアが参加する理由は「雪も参加するから」という事だろう…。


「んじゃ、頑張るか!」


とにかく、魔法学校で大会が開催される事になった。
そして次回、第二魔法学校の生徒も登場!
お楽しみにぃ!

※はじめに、この小説は、原作のスレとは違うところが多々あります。
キャラの喋り方や性格が違ったり、ストーリーも違ったり…;;
その点をご了承の上、読んで下さい





プロローグ

遠い、遠い未来のことだ。
噂で聞いていた、この人間界の裏側に存在する世界、
『魔界』。そこの住人たちの良く深き者達、『悪魔』が
人間界を侵略してきたのだ。人間達は、激しく抵抗したのだが、
地球の約三分の一を支配された。

そんな絶望の中、ある一人の大魔導師が、立ち上がったのだ。
そのたった一人の魔法使いのおかげで、
悪魔達を追い払ったのだ。
そして、今地球は、平和に保たれている。

ある魔導師は、語る。

「長き歳月を経た時、再び悪夢は、蘇る。
 その時のためにも、今ここに『魔法学校』というものを
 建てることにする。
 そこで、我が力を受け継ぎ、再び悪夢を見ないよう、
 魔術を学んでもらおう」


そして、ある大魔導師を校長とし、
『魔法学校』が建てられたのだ。

これは、その魔法学校の生徒と、教師達の物語である―――

【第一話・幕開け】

「チッ…! クソが…悪魔多すぎだっつーの」

血の海の中に佇む、銀髪の少年とアメジスト色のツインテールの少女。
そして、二人の周囲には大量の悪魔の死体。

「ホントだよねー…、疲れたよ、今回は」

「つーか、ルセアとルウは何処行ったァァァァァァァ!!!」

銀髪の少年が、仲間と思われる人物の名を呼ぶ。
あたりを見回すが、全く見つからない…迷子だろうか?
いや、ルセアがついてる限りそれは無いはずだが…このバカには、それは考えられなかった。

「落ち着きなよ、ラグナ…。その辺探したら居ると思うし、さ」

ラグナと呼ばれた銀髪の少年はポリポリと頭を掻きながら、悪魔の死体を蹴り飛ばした。
ひゅ~っ、と音を立てて飛んで行き、しばらくして「きゃぁっ!」という声が聞こえた。
小さな女の子の声だ。

「ルウ、何してんだ?」

「何してんだ? じゃないでしょ!!! 私がどれだけ必死になってルセアを探してたと思ってるの!?
 ほら、ラグナもアンジェも、ちゃんと探して! ルセア、すぐ迷子になるんだから!」

((いや、それルウじゃね?))

と、心の中で呟き、、二人もルセアを探し始めた。
全く、どこに行ったのやら…。
因みに、何故こんな子供達が悪魔と戦っているかというと、彼らが魔法学校の生徒だからだ。
魔法学校では、時折授業で魔法を使っての戦闘訓練を行い、その授業での成績上位者が悪魔と戦うための任務に就く事になっている。
まあ、自ら進んで悪魔と戦おうと思う生徒など、極稀だが…。

「あれ? ラグナ達、何してるの?」

悪魔の死体の山を掻き分けて自分を探しているとは知らず、ルセアがラグナ達の背後からのんきに話しかけた。
そんな彼を見た瞬間、三人がブチギレた。

「「何やってんのって…お前を探してたんだよ!!!!!!」」

「へ? 僕を?」

「そうだよ! まったく…どこ行ってたの!?」

ラグナとアンジェが同時に突っ込み、後からルウが心配そうに聞く。
ルセアはニッコリと笑い、ポケットから小さなビンを取り出した。

「…それ、何?」

アンジェが興味深そうに覗き込みながら聞く。
ビンの中には、なにやら怪しい物体が。

「これ? これはねー…」

と、ルセアが言いかけたところで、ラグナのケータイがけたたましく鳴り響いた。

「ん? 電話か…はい、もしもーし?」

「はい、もしもーし? じゃ、ねーだろ! お前、ルウは無事なんだろーな!?」

電話の相手は、ラグナのクラスメイトであり、ルウの彼氏の音無龍(オトナシリュウ)だ。
因みに、五つのクラスはそれぞれの能力に長けた魔法使いが集まっている。

1組 火を司る者達-イフリート-

炎属性の強力な魔法に加え武術を学ぶ。
戦闘の腕は、トップクラス。
だが、バカが多いのが弱点。
制服の右胸に火の動章

担任は、バン。通称:バンちゃん

2組 氷を司る者達-シヴァ-

氷属性の鉄壁魔法と、軽い攻撃魔法に加え剣術を学ぶ。
その鉄壁の防御と、剣術テクニックで悪魔に対抗。
頭の回転が早く、頭脳派が多い。
制服の右胸に、氷の動章。

担任は、レイ。
生徒達より少し年上の綺麗なお姉さん。
皆からは、主に呼び捨て。男子生徒に人気。

3組 大地を司る者達-ガイア-

草属性の束縛魔法と、回復魔法に加え狙撃を学ぶ。
束縛魔法と回復魔法の補助で仲間を救う。
知能は、平均並。
制服の右胸に草木の動章。

担任は、ソウ。
狙撃の腕は百発百中で、実力もかなりのもの。
保険医でもあり、休み時間等は魔法学校敷地内の森林に居る。

4組 闇を司る者達-カオス-

闇属性魔法の超強力な魔法をだけを学ぶ。
戦闘の腕は、トップクラス。
だが、体力値の低い者達が多い。
制服の右胸に闇の動章。

担任は、ダークネス。
クールでカッコいいお兄さん。
闇属性魔法が非常に強力で、ウィン♀にかなり好かれているが、ダークネス本人はウィン♀の異常なまでのアプローチを少し嫌っている。

5組 風を司る者達-アトラス-
風属性の攻撃魔法を学ぶ。
さらに、自然のものを利用して
武器を生成する錬金術をも習う。
人によって、武器の形や種類が異なるのが特徴。
制服の右胸に、疾風の動章。

担任は、ウィン(♂、♀)
双子の兄妹であり、♂は普段は無口だが、実力はかなりのもの。
♀は、兄とは正反対で良く喋り、外見も結構可愛い。
二人とも年は、生徒達とそんなに変わらないので、生徒達とは仲が良い。
ただ…♀は生徒弄りを趣味としており、その面では怖い一面も。
ついでに、ダークネスにベタ惚れ。

以上が、魔法学校のクラスとその担任達だ。

「で…あぁ、ルウか。バリバリ元気にしてるぞ? 電話、代わろうか?」

「マジでか!? んじゃ、頼むわ!」

「おい、ルウ。お前の旦那から電話」

「ちょ、旦那じゃないから! 彼氏だから!」

と、いいつつも若干頬を赤らめているルウ。
そして、ラグナ達から少し離れたところで会話していた。

「ラブラブだねぇ…あの二人」

「だな」

「ラグナは…好きな人とか、居ないの?」

「別に? 俺は、戦いの妨げになるような事はしねー主義なんで」

「へぇ…」

「さて、と…そろそろ帰るか。ほらよ、ルセアのほうき」

そう言って、自分の足元に落ちていた箒を、ルセアに投げ渡した。
ルウの方を見ると、まだ電話中だ…。

「ったく、帰ってからいくらでも話せんだろーが…」

ポリポリと頭を掻きながらルウに近づき、ケータイを取り上げた。
ルウの華奢な体を担ぎ、箒に飛び乗る。

「ほら、帰るぞ。っつーわけで、龍! 今からテメェの彼女連れて帰ってやっから、大人しく学校(そこ)で待ってろ! もう電話してくんなよ!」

「へいへーい…」

だるそうな声が聞こえ、電話が切られた。
そして、箒を操れないルウを担いだまま、一気に魔法学校へと飛んでいく。

「ねぇ、ルセア」

「ん?」

「ルセアのビンの中に入ってるソレ、何に使うの? ちゃんと先生に説明しないと、怒られるよ?
 悪魔の目玉なんて…」

「ま、内緒って事で。先生には言うけど…今は、皆には内緒~」

そして、彼らは魔法学校へと帰っていった…。
彼らの後を、悪魔がつけてるとも知らず…。