夢と輝きに満ちた21世紀の到来を誰もが信じられた、懐かしき70年代の日々。
2001年、汚い金と燃えないゴミに溢れた現実に背を向けて、過去への永遠の回帰を目論んだイエスタデイ・ワンス・モアの野望は、カスカベ在住の野原一家によって阻止された。しかし、いずこともなく去っていった首領・ケンとチャコはその後も人知れず活動を続け、70年代プレイバックブームは様々なメディアによって、徐々に形作られていく。

そして2005年、35年の時を待って再び訪れた、万博の年。
新宿駅の南。玩具箱のような外観が、隣のこれまた積木細工のようなドコモビルと併せて映えている、新宿タカシマヤ。東京の中心地に、オトナ帝国は今一度その姿を現した──。

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と、言うわけで行ってきました。「タイムスリップ昭和展-EXPO'70とその時代」。
GW期間中と聞いていたので、昨日で終わったものと思っていましたが、もう一日残っていました。
お昼前に入りましたが、最終日とはいえ平日。混雑もなく、ゆっくり回ることができました。
焦って土日に駆け込んでいたら、見づらかったかもしれません。よかったです。

万博から十数年を経て生まれた世代なので、万博知識は、「映像の世紀」第11集「JAPAN」のラストカット(太陽の塔の真下、横に手をつないだガードマンの後ろを大勢の人がゆっくり歩いている映像)と、「オトナ帝国」くらい。
会場では万博の模様を伝えたニュース映像が豊富に展示されていましたが、「EXPO'70」(この呼び方ひとつとっても、どこか格好いいな。「愛・地球博」はユルい感じがします)というイベントの壮大さに、今更ながら驚かされました。
初日に27万人! 「愛・地球博」は、10万人越えですら未だ数日というのに……。

それから、三波春夫の「世界の国からこんにちは」に象徴される、能天気なまでに明るい「世界はひとつ」ムード。争いもなく世界中の人々が平和に暮らしているような、幸せな未来の展望は、現実の21世紀を生きる人間にとっては、強烈なメッセージに映ります。
展示されていた「小学~年生」の万博特集によると、30年後の未来には、海底都市も建設されてるはずなのに!
「これが、本当にあの21世紀なのか……」(by ケン)

各パビリオンについても当時の映像と共に解説されており、こんな感じだったんだと感心しきり。
松下館の目玉、5000年後の6970年に開封されるというタイムカプセル。
5000年後……人間はまだいそうな気はしますが、どうなっているものやら想像もつかない。
そう言えば、「ゼノサーガ エピソードⅠ」というゲームでは数千年後の未来が舞台でした。冒頭の「PRESENT DAY」では写実的だった人物のCGモデルが、舞台が未来に移ると、瞳が顔の半分を占める、いわゆる「アニメ絵」に。数千年後の人類は眼球が肥大し、顎が針のように尖鋭化するようです。
我がオールタイムベスト1映画「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997年)の世界も西暦5~6000年だった気がしましたが、こちらはあんまり変わってなかったような。

未来の住宅モデルを提示したサンヨー館。
あの有名なウルトラ・ソニック・バスが! 動いている映像を初めて見ました。しかし、これ、中に入っている人は操作できないようで。
フラワーキッチンも一見未来チックで楽しそうなんですが、冷蔵・冷凍・レンジ・自動食器洗い機などが内臓され、利用時にせり上がってくるターンテーブルは、見た目にもすぐ壊れそう。まあ、巷に流通している商品も含めて、未来デザインは得てして不便なものです。

ULTRASONICBUS     FLOWERKITCHEN

暗幕で囲われたシアタールームで、会期中に製作されたらしいドキュメンタリが3本+αでローテーションしており、全部観たら、1時間強時間を潰せました。
1本終わるたびに、今秋公開の映画「ALWAYS 三丁目の夕日」の予告&記者会見が挟まるのには閉口しましたが。

面白かったのは、大混雑の場内で座り込んでいる家族連れのお母さんのコメント。
「人類の進歩と調和、って言ってるけど、これじゃあ人類の辛抱と我慢よねえ」
プロデューサー岡本太郎が提唱した一大テーマが……。

万博とは直接関係ありませんでしたが、当時の時事風俗を捉えた映像集、「昭和の時代」(昭和30年代版?)。
石和に温泉が湧き(結構、新しかったんですね)、大挙して押し寄せた人で急ごしらえの浴場は文字通り、芋の洗い場に。もちろん混浴。老若男女が素っ裸でゲラゲラ笑ってる、今では信じられない映像が凄い。
他にも、銀座の100円食べ放題に集まった若い女性たち。恥も外聞もなく食いまくる様子を伝えるナレーションは、独特の時代がかった抑揚で、「まるで腹の空いた鶏のようです」
容赦ないです。

展示会場出口に物販と一緒に設けられた軽食コーナーでは、昔の給食を再現した料理が味わえるようでした。
食べてくればよかったけれど……。
物販でも、当時の小学二年生付録の紙工作「光る太陽の塔」復刻版が欲しかったのですが、断念。
金のないのは首のないのと同じです。

我がオールタイムベスト2の映画・「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲(2001年)」に、栄光あれ。